「王者の涙」2019年西関東予選第二代表決定戦 東芝vsJX-ENEOS
2019年5月29日 都市対抗野球西関東予選 代表決定リーグ戦 東芝vs JX-ENEOS 横浜スタジアム
第1回では日本一の歓喜の瞬間をお届けしましたが野球は笑う人がいれば泣く人が必ず出てきます。あまり大事な試合で負けたチームにカメラを向けることは憚られるので撮らないようにしているのですがどうしても印象に残った光景だったので撮影したのが今回の写真です。
都市対抗野球西関東予選の代表決定リーグ戦は社会人野球の面白さが存分に出ている予選だと思います。ドームへの2つの切符を掴むために強豪東芝・三菱・ENEOSの3チームがガチンコ勝負が繰り広げられます。(もちろん他のチームにも代表決定リーグに進める権利があります。今回は例年の状況と話の流れからこのように表記させていただきます)拮抗するあまり社会人野球らしく両チーム点が取れず延長で決着になることもあり選手も見ている側も胃が痛くなる予選です。
当時そんな予選でしばらく涙を見ていたのが都市対抗野球最多優勝回数を誇る JX–ENEOSでした。一時期は東芝とJX-ENEOSの2強でしたが三菱が成長してきて代表権を獲得するようになり、東芝との戦いにも敗れ2016年から本戦出場を逃していました。3年振りのドームへの切符を手にするために迎えた2019年の予選は前日に1勝しているMHPSとの試合。序盤に3点リードを奪った JX-ENEOSがイケイケムードで試合が進めるも粘るMHPSに1点差まで迫られてしまう。そして向かえた9回2死ランナー1塁の場面で代打で出てきたのは江越海地。あと1アウトでJX–ENEOSの悲願の勝利という場面で「ホームランが出れば逆転だけど小柄な江越だし今回はJX-ENEOSが勝ったな」と思っていた刹那、快音とともに打球はライトスタンドへ吸い込まれて行きました。その逆転ツーランが決勝点となり目の前に迫った1勝は消え第一代表の座はMHPSが掴んだのでした。
翌日は東芝戦、勝てばドーム負ければ終わりの大事な1戦で東芝は岡野(現中日) JXーENEOSは大場(現日ハム)の両先発の投げ合いでした。 JX–ENEOSが序盤に先制するも試合後半に東芝打線が爆発、打線も初回以降エース岡野を打ち崩すことができず前年の予選と同じく点差をつけられ7−2で負けてしまいました。
試合が終了しマウンドに東芝の選手が集まり喜ぶ傍で出塁していた田中将也がサードベース付近で膝をついて涙を流していました。代表権を数年逃しドームに向けて死に物狂いで練習してきて挑むも目前で勝利が逃し前年と同じような負け方をしてしまった悔しさ、周囲からの重圧や期待など様々な思いを背負っていたのでしょう。丸まった背中から様々な思いが伝わってきてこの時ばかりは東芝そっちのけでシャッターを切りました。東芝ファンの自分でさえその姿を見て東芝勝利の喜びよりも「来年は絶対代表権取ってくれよ!」と思う気持ちの方が強かった記憶があります。大の大人が涙を流すくらい思いのこもった都市対抗予選ですが西関東は他地区よりも選手達の気持ちがこもっている予選だと思います。
しかし負けてばかりはいられません。翌年の2020年の予選では選手達の今までの思いが爆発したような試合が続きました。2年連続大差で負けていた東芝相手に完封勝ち、勝利目前で負けた三菱パワー(MHPS)相手には延長12回に勝ち越し見事第一代表の座を獲得しました。その予選も生で見れていればよかったもののコロナの影響で無観客開催となり中継で見ていましたがずっと悔し涙を流す JX-ENEOSの選手を見てきたので心の底からおめでとうと思った記憶があります。
ENEOSは今年も代表権を獲得、昨年は応援は中止の措置がとられていましたが今大会は応援団もドームに戻ってくるそうです。観客席の人数は制限されるもののオレンジ一色の応援席から「ENEOS ENEOS チャンピオン」の声が聞こえ、その歌詞の通り12回目の都市対抗優勝を掴みとれることを祈っています。
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