女装した

3連休はすごい。

3連休があるとなんだってできてしまう。
いつもと違う道で帰ってみたり、ちょっと遠くまで散歩したり、柄にもなく活動的になる。

2019年7月の3連休2日目午前3時、いつものように夜更かししていたら急に思った。


今すぐ女装しないとヤバい!


こうしている瞬間にも自分の身体はおじさん化している。
どうせ女装しないといけない(?)ならおじさんになる前にしたい!
(女装家の先輩方、申し訳ありません。)

たまたま次の日空いている女装サロンがあったのですぐに予約した。
料金を見て若干の後悔もあったが、3連休で気が大きくなっているので達成感のほうが大きい。3連休は本当にすごい。

女装とか一回もしたことがないが、俺はやれるぜみたいな謎の自信があったので特に下調べもなくお店に行く。

お店があったのは普通のマンションの一室。
女装サロンに行ったことがある知り合いから、普通の美容院みたいな雰囲気と聞いていたけどかなり違う。

テレビとかで屈強な外国人が出てくるような場所だったのでちょっとビビった。(あとで知ったが、かなりガチなお店なので人目につかない場所にあるらしい)

店員は女装のお兄さんだ。
女王蜂のアヴちゃんに似ている。

「こんにちは~、早速ですけど、女の子の時のお名前はなんですか?」

何を隠そう、俺には女の子の時の名前はない。

「すみません、そういうの特になくて……」

「えっ、お客さん、女装初めてですか?」

どうやら俺のような女装の素人向けのお店ではなく、経験者がオシャレをするために来る本格的な女装サロンだったらしい。
(初めてでも問題はないそうなのでそのまま入店した)

「女の子の名前」がないならメイク後にイメージして命名してくれるとのことなので、ひとまず自分が着たい服を選ぶ。

この時点で俺は「女装サロンに来てますけどあくまで人生経験のためで、べ、別に女装が好きなわけじゃないんだからね」
というよくわからないメンタルで女装に挑むことを決めた(なんで?)

適当にサイズが合いそうなものを見繕ってくれたのだが、どうも甘々テイストな服が多く、好みじゃない。

しかし、人生経験のために女装サロンに来てるだけですけどみたいな雰囲気を醸し出しているので、自分の好みを言うのは憚られる。
ただ、安くないお金を払っているので後悔はしたくない……

「すみません、普通のワンピースとかあります?」

俺はワンピースが好きだ。
女装で着るなら絶対にワンピースだと決めている。

厳密にはワンピースではないが、上下セット柄のブラウスとロングスカートが目についたのでそれにした。

メイクをしてからでは着替えられないので、先に着替える。

「服の着方とかわからなかったら呼んでくださいね」

シャツとズボンと変わらんから大丈夫でしょとか思ったんだが、鋭く気付く、


ブラジャーの付け方がわからん


何を隠そう、俺は生まれてこの方ブラジャーを付けたことがない。

いや、でもモテてる男はブラジャーの構造に精通してるのかな……
こいつブラジャーの構造も知らないのかよとか思われるのも嫌だな……と思ったのでがんばって付けた。
(間違ってたので直してもらいました)

次はいよいよメイクだ。
メイクについての説明を受けている間もあえて男っぽく座ったりして俺は謎の抵抗をしていた。

メイクをしてくれるのは普通のお姉さん。

「女装似合いそうなのに初めてなんですね。なんでやろうと思ったんですか?」

「今は経験の時代なので……」

お姉さん曰く、母親や女兄弟に似ることが多いらしい。
妹はギャルだから妹には似たくないなあ……と思った。

メイクが終わり、選んだウィッグを付けて、やや緊張して鏡を見る。

一言で言うとギャルじゃない妹。
やっぱり血は争えないらしい。

メイクが終わった後は撮影タイムがある。
小道具なんかを使いながらポーズを取って、アヴちゃんに撮影してもらう。

この時点ではまだ「人生経験ですけど感」を醸し出していたので、ちょっと女の子になりきれていなかったのだが、この抵抗何の意味も無いなと気付いたので途中からちゃんとやった。

ちゃんとやってるとだんだん女装をしている現実にも慣れてくる。
後半は「こうやった方がそれっぽいかな」と思いながらポーズを取ったりした。
アヴちゃんは逐一褒めてくれるので撮られてるほうも気分がいい。

「名前なんですけど、モモカちゃんはどうですか?」

不思議なことに、名前を付けられると、モモカちゃんとしての意思が湧いてくる。

メイド服も着てみようかな……

今ならメイクの費用がない分、料金も安くなるのでお得だ。
これはやるしかない。3連休だから。

こうしてメイド服も着せてもらって100枚以上写真を撮り、俺の初女装は終わった。
(ちゃっかりウィッグも変えてもらった)

妹を見るとモモカちゃんを思い出すようになった以外は良い体験だったと思う。

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