中国特許法第4次改正内容(6)

これまでの解説に含まれない規定をまとめてご紹介します。

(1)非特許対象に追加(第25条)
 原子核変換方法を用いて得られた物質にその方法自体も追加されました。

(2)信義誠実の原則の明記(第20条)
 中国では、冒認特許出願のみならず、政府の補助金を狙った悪質な特許出願が大量に個別の特許事務所や個人の発明者から2017年頃から発見、指摘されるようになりました。こうした不正な特許出願を含め、特許の濫用行為による他人の合法的権益の毀損、或いは不正競争防止法の対象となる競争の排除や制限を特許法に追加しました。

(3)優先権証明書提出の期限の緩和(第30条)
 発明特許と実用新案特許は出願日から16か月と延長されました。中国では中国語訳の提出は要求されていません。意匠特許は3か月と変わりません。しかし、現在は意匠を含め、WIPOのデジタルアクセスサービス(DAS)を利用できるため不安はなくなったと思います。

(4)特許期間調整制度の導入(第42条第2項)
 アメリカからの圧力を受けて発明特許について、審査の遅延にかかる期間を保護期間に追加する調整規定が追加されました。発明特許出願日から起算し満4年経過かつ実体審査請求日起算満3年経過後に特許権が付与された場合、特許権者の申立に応じて、不合理な遅延期間を特許期間に加える補償を与えるものです。なお、出願人に起因する場合は対象となりません。

以上、いろいろと私見を含めて解説しましたが、今後、特許法実施細則、特許審査ガイドライン(審査指南)が改正されると、更に具体的な内容が分かりますので、それぞれの改正を待って、今後の中国での出願や権利行使の戦略を見直すことになります。

以上、ご参考まで。この項目は終わります。


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