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中国 反外国制裁法と外国の法律と措置の不当な域外適用の阻止弁法

全国人民代表大会(全人代)常務委員会は6月10日付、外国による中国制裁に対抗するための「反外国制裁法(中华人民共和国反外国制裁法)」を可決し、即日施行しました。知財関係からは少し遠くの話のように思えますが‥そうでもない。

同法は全16条からなり、目的は第3条の規定で以下の通り:
「中華人民共和国は覇権主義と強権政治に反対し、いかなる国家ものいかなる口実、いかなる方式で中国の内政に干渉することに反対する。 外国の国家は国際法と国際関係の基本規範に違反し、各種の口実、或いは自国の法律に基づき我が国を抑制、弾圧し、我が国の公民、組織に対して差別的制限措置を採り、我が国の内政に干渉する場合、我が国は相応の対抗措置を取る権利がある。」
諸刃の剣と思えるが、第4条に関係部門が「対抗リスト」を作成し、第5条で対象者、第6条で入国禁止や国外退去、中国内の資産差し押さえなど基本的な対抗措置を規定していいます。

参照サイト:仮訳
http://www.npc.gov.cn/npc/c30834/202106/d4a714d5813c4ad2ac54a5f0f78a5270.shtml
http://www.npc.gov.cn/npc/c30834/202106/ea3e5a684a814ce387da94d505731c04.shtml

この法律に対応する規定があるので、注意する必要があります。今年の1月9日に施行された「外国の法律と措置の不当な域外適用の阻止弁法(商務部令2021年第1号 阻断外国法律与措施不当域外适用办法)」です。
 この弁法は、不当な域外適用を受けた中国企業を保護するための施策で、外資企業との正常な取引で、外国の不当な禁止や制限に応じないために損失を受けた場合、商務部への通報や裁判で救済を受けることを支援する内容になっています。商務部管轄下のいくつかの部門と連携し専門業務チームを設け、このチームが商務部に通報された内容に対して禁止令(当該措置を承認しない、執行しない、遵守しない)を出すことができようになっています。救済措置として、当事者の民訴訴訟の支援、禁止令のために発生した損害に対する行政支援、そして、中国政府が必要な対抗措置をとることができると規定されています。全体的な俯瞰は以下のような感じです。

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弁法のポイントは以下の通り:
目的:報告や通報による情報収集と政府による救済対策
対象:国際法および国際関係の基本規範の治外法権を除き、商務部関係部門が以下を判断
(1)国際法および国際関係の基本規範に違反
(2)中国の国家主権、安全保障、開発利益への影響の可能性
(3)中国国民、法人またはその他の組織の正当な権利および利益に及ぼす可能性のある影響
(4)考慮すべきその他の要因
対応:
(1)政府が業務対応チームを設置(商務部主管)、業務には指導やサービス提供を含む
(2)業務対応チームは禁止令(当該措置を承認しない、執行しない、遵守しない)を出すことができる禁止令の免除申立可能、30日以内に決定
(3)救済:措置を実施した当事者、外国法による判決、裁定措置を実施した当事者に対する民訴訴訟
(4)禁止令による損害に対する行政支援
(5)中国政府が必要な対抗措置をとる。
罰則:中国市民、法人またはその他の組織が規則に従って関連する状況を真実に報告しなかった場合、或いは、禁止事項を遵守しなかった場合、警告・命令、改善がない場合は罰金。

何を以て不当というのか、差別的というのかは中国の体制や政治的判断に基づくので、パリ条約やWTO関連条約や規定に照らして妥当ということはないように思われるが、最近の標準必須特許のConversantとHuaweiの訴訟で、対象国での判決の執行を申立てることを停止させる禁訴令の事件が中国だけでなく、イギリスやインドなどで起こっていますが、最終的には政治問題にするというのはいかがなものでしょうかね。世界平和を希望します。

参照サイト:http://www.mofcom.gov.cn/article/b/fwzl/202101/20210103029710.shtml

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