着物が教えてくれた家族の話⑦

大人になってからの出会いは本当に面白い。いろんな職種の方々とひょんなことがきっかけで、お友達になったり。

つい最近、10歳くらい年下のお友達ができました。そしてふとした会話から、彼女の前職の話になり、驚きました!!

そんな彼女から教えてもらった素敵な着物のエピソードです☆

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纏うことは生きること

私は、小学生の時から纏うことのパワーを感じていて、嫌なことがあった翌日は必ずお気に入りの服を着て、気持ちを整えていました!”纏うことは生きること”と考えていたので、洋服を作る人になりたかったのですが、
高校生になり、ミシンを踏んで...自分にはそんな才能がないと感じ、専門学校へ行くことを諦め、卒業後は働くことを決めていました。

そんな中、高校の職場体験で、江戸小紋の工房へ行くことに。
そこで出会ったのが若い見習いの職人さん。
そのお姉さんは、髪の一部を綺麗な珊瑚色に染めていて、とてもカッコよかったのです!笑
元々民族衣装に興味があり、日本の民族衣装である着物をつくる仕事も良いなぁ…とその時感じ和裁士になることを決断。

和裁所に見学に行き、感動したのは、使う道具の少なさ、”シンプルさ”でした!
私たち関東の和裁士は、男座りと言って、利き手と逆の足が、くけ台と文鎮の役割を果たします。
極端に言えば、身体と針と糸さえあれば仕事ができる、というのが私にとってはとても魅力的でした。
どんなに便利な時代がきても、こんな強いことはない、と思っています。
(実際には、針、糸、指革、ハサミ、さし、こてが最低限要りますが😂)

私が働いていたところは、デパートの下請けがメインの和裁所だったので
「デパートの仕立て」を追求してやってきました。
デパートのお客様のリクエストは、販売員さんの気持ちも含まれ、ダイレクトなお客様の声が届きにくい場所で仕事をしいました。本来であれば、お客様から直接、拘りや思い入れが聞ければ良いのですが。。そうではない第三者の思入れが含まれることがあり、それは、”纏うもの”ではなく、まるで”展示する作品”のような要望が多く、
そこに対する疑問は、常にありました。。

でも!!私も着付けを初めてから、だいぶ和裁に対する見方が変わりました。

自分が着て初めて分かることがたくさん!

着付けの先生で、所作が美しい=着物に皺ができないから、クリーニングにも出さないし、寝押しだけでメンテナンス終了!
という先生がいて、さすがだなって感動してました!!

着物において、着付けが担う部分ってすごく大きいですよね!
どんなに素晴らしい着物も、着付け次第で台無しですもん...☺

仕立ての時は、お客様の名前と寸法しか知らないのですが、そのお客様が自分の仕事を上から見ている!と思ってやってます!笑
私たちは、自分で時間をつめることでしかお金を稼げないので、必死なあまり、つい、着る人がいることを忘れてしまいがちです…
でも、その方が顧客になり、リピートのお仕事が入ったりすると、「あぁ、この方はこういうお着物が好きなんだなー。」とか、「痩せたのね。」「太ったのね。」etc...と勝手に想像しています。笑

また、時代のせいもありますが、こどもものや伊達衿は既製品を使用することが多く、それを私たちが肩上げをしたり、仕立てた着物に縫い付けたりするのですが、値札をみてびっくり!
素材は本当に素晴らしいものですが、縫製はあまりに粗末と感じるものが多く...なんというか、残念ですよね…

このお着物は、私が和裁所に勤めていたときに自分のために仕立てた唯一の着物です。お友達の結婚式参列をきっかけに袖を通し、子供が生まれても着られるように、大切に着続けます♡

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和裁で食べていけたらよかったのだけど...

と、彼女が言葉を残し、大きく息を吸い込んだ姿が忘れられません。

彼女の商売道具であったこれらも、製造業者が次々と廃業しているそうです。質の良い、いいものがやむを得ない理由で消えてゆくのは本当に悲しいなぁ。

今の時代、着物を誂える人も昔と比べれば減ってしまっただろうし、取引先や顧客によって仕事の量もかなり影響を受けるはず。彼女のような若い職人さんが育っていながら、その子たちの雇用が安定せず職を失ってしまうなんて、なんて悲しいのだろう。。少なからずコロナの影響もあったと思いますがね。。

着物の製作工程は、お蚕様を育てるとことから始まり、何人もの職人の手が加わり出来上がります。着物の最後の工程を担う、和裁士という仕事は、着物の文化にはなくてはならない職業。技術を身に着けるのに何年もかかりますし、努力も忍耐もそれなりに必要。(のはず!)高齢化が進んでいる職業の一つだからこそ、一人でも、能力のある若い子たちの存在は貴重なものになると思うのです。

そんなことを思いながら悶々と過ごしていたこの数か月、
着物の仕事がまた回ってくるようになった
と彼女が教えてくれました。彼女が着物のお仕事を受けるということは、一緒に食事に行く時間が減る、ということなのですが...それでも!彼女が着物を縫う場面を想像したら、ウキウキして、ひとりにやけてしまったのでした。

そして彼女は
お姉さんが妊娠中使用していた腹帯を、甥っ子くんの産着として縫った話も教えてくれました。
母の思いと叔母の思いを纏う赤ちゃん。
最高に幸せだろうなぁ。
こんなに素敵な思いを纏う子は、将来どんなイケメン君になるでしょうかね〜。是非、そのストーリーを、子供たちにもれなく伝えて欲しいものです♪

Kちゃん、貴重な裏方の話や、着物への思いを素敵な言葉で綴ってくれてどうもありがとう。


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