ボカロ界において最も簡単な創作活動
こんにちは、きぐなと申します。
2020年2月に「ボカクイ」というクイズ大会を開いた者です。
obscure.さんによる「ボカロリスナー presents Advent Calendar 2020」に参加いたしました。私が12月9日担当となったので、その一環としてこの記事を公開しました。どうぞ最後までお付き合いください。
(ハッシュタグ:#ボカロリスナーアドベントカレンダー2020)
この記事で、ボカロが大好きなボカロリスナーの皆様にお伝えしたいのは、「ボカロクイズを作ろう!」ということです。
え、何、いきなりクイズ?と思われた方もいらっしゃると思いますが、ボカロクイズの作問こそが、タイトルで示した「ボカロ界において最も簡単な創作活動」だと思っています。「は?」と思ってもとりあえず先に進んでください。
クイズを作るのがそんなに楽しいか
ちょっとだけ、一般的なクイズの話をします。
みなさん、クイズって……作ったことありますか?
テレビ番組などを見てクイズを解いたことは誰しもがあると思いますが、作ったことがあるという人は少ないかもしれません。ましてや、お遊びの範囲を超えた真剣な作問に取り組む人など、競技クイズ経験者でない限りほとんどいないと思います。
はて、クイズを解くのは楽しいにしても、クイズを作って出題するという行為の何が楽しいのでしょうか。
それはやはり「自分の作ったクイズに正解してもらえる」ことです。
クイズに正解するのも気持ちいいですが、クイズに正解されるのも気持ちいいものです。クイズに正解された瞬間というのは、ある意味、相手に自分の想いが伝わった瞬間です。しかも、早押しクイズで素早いポイントで押されれば感心するでしょう。これだけでも気持ちいいものです。
クイズを行うとき、たいてい作問者は解答者の目の前にいます。つまり、受け手が反応を示し、創作物が消費されていく様子を、制作者自らが間近で見られるのです。これってすごいことですよ。
(画像:クイズ大会「ボカクイ」のワンシーン。ステージ上にいるのが解答者、下にいるのがスタッフ)
ところでみなさん、ボカロが大好きですよね?
みなさんは「ボカロ愛」をどうやって表現しますか?
この人の作品のここが好き、この曲のこの歌詞が好き……といった具合に、みなさんそれぞれの愛があると思います。それを誰かに知ってもらうとしたら、普通はTwitterやnoteなどで文章を公開することになると思います。たまに動画や生放送などで語るすごい人もいますが。
その表現手法の一つとして「ボカロクイズ」というのはいかがでしょうか。ボカロクイズを作ると、いいことがあります!
いいこと①:たのしい
自分の好きなボカロ曲のクイズを作って、それに相手が正解してくれればきっと嬉しい気持ちになるでしょうし、逆に誰も正解してくれなかったら「聴いてよ~」と思わず布教したくなるでしょう。でも、自分だけが好きだと思っていたマイナー曲をクイズにしたら、予想以上の反応があって驚くことがあるかもしれません。もちろん作るのは好きな曲でなくても構いませんが、いろいろな反応が楽しめるはずです。
いいこと②:布教ができる
また、ボカロクイズは布教にも適しています。あなたがTwitterやnoteなどでいくら言葉巧みに好みの曲を紹介しても、なかなか聴いてもらえないかもしれません。しかし、クイズは相手の話を聴いて答えるゲームなので、その場にいる解答者はあなたの言うことを真剣に聴いてくれます。そう考えると、クイズって、布教に適した手段だと思いませんか?
いいこと③:理解が深まる
あなたはこの記事に興味を持つくらいですから、きっとボカロに対する知的好奇心が人一倍あるのでしょう。クイズを作るときは調べ物をすることになりますが、そこで意外な事実を発見することも少なくありません。「敗北の少年とかに出てくるキャラ、マキちゃんって名前なんだ!」とか「ヒバナってゲームのキャラの名前なんだ!」とか「wowakaって東大出身なんだ!」とか。そういうボカロトリビアを知るのは面白いことですし、それが作問のネタになることもしばしばです。
……少しは出題する側の楽しさをわかっていただけたでしょうか。
では、実際にボカロクイズを作ってみましょう。
どうやって作ればいいんだ
それでは、実際にボカロクイズを作ってみましょう。
一口にボカロクイズといっても、歌詞クイズやイントロクイズなどいろいろな種類がありますが、ここでは文章題の作り方をお教えします。
クイズの問題文は、複数のヒントで構成されています。それを順番に出していって、解答者はわかった時点で押すという仕組みです。
クイズ番組で「3ヒントクイズ」「5ヒントクイズ」みたいなのありますよね。5つのヒントが順番に表示される連想ゲームです。クイズの問題文も構造としてはそれと同じで、ただヒントが順番に並んでいるだけです。それが1つの文章になっているかどうかの違いです。
つまり、ヒントを並べればクイズがほぼ完成します。
手順としては、
①クイズにしたいものについて調べ、
②いくつかのヒントを作り、
③ヒントの順番を決めて、
④つなげて文章にする
これでクイズの問題文が出来上がります。
実際に作ってみよう
というわけで、作ってみましょう。
お気に入りの楽曲やボカロPを題材にすると作りやすいのではないかと思います。
ここでは私の大好きな『炉心融解』という曲をクイズにします。
①クイズにしたいものについて調べる
では炉心融解について調べてみましょう。
元動画や初音ミクWiki、ニコニコ大百科、ピクシブ百科事典あたりを見てみます。
曲の基本的なデータとか、特筆すべき記録とか、曲を象徴するほど特徴的な歌詞とか、ヒントになりそうなデータを集めましょう。
・歌っているのは鏡音リン
・作詞はkuma、作曲はiroha
・なぎみそが動画を手掛けた
・リンが着ている白と黒の衣装が特徴的(「リアクター」という名前のモジュールらしい)
・MVには少女と大人のリンが登場する
・2008/12/20に投稿されたが削除され、2009/08/30に再投稿された
・「Shout!」の部分の叫びがすごい
・歌い出しは「街明かり華やか エーテル麻酔の冷たさ」
・「核融合炉にさ 飛び込んでみたいと思う」というサビ
・ニコニコではボカロ曲の中で最もマイリスト数が多い
なるほど……いろいろ見つかりましたね。
②いくつかのヒントを作る
①で集めたものから、問題文に入れたいヒントを選びます。
あんまり詰め込みすぎると長くなりすぎてしまうので、2~3個くらいに絞ります。どれにしようかな……
・作詞はkuma、作曲はiroha
→これは基本情報だし、とりあえず入れておこう(意外と大事)
・「Shout!」の部分の叫びがすごい
→この曲といえばこれじゃね?
・ニコニコではボカロ曲の中で最もマイリスト数が多い
→知らなかったし、みんなもあんまり知らなさそう!
今回はとりあえず、この3つで。全然違うのを選んでも大丈夫です。
③ヒントの順番を決める
3ヒントクイズとかでもそうなのですが、ほとんどの問題文は難しい順にヒントを出していきます。早押しクイズですから、難しいものを先に言ったほうが良いのです。
なので、難しいと思う順番に3つのヒントを並び替えていきます。
・ニコニコではボカロ曲の中で最もマイリスト数が多い
(記録とか気にしてる人じゃなければ知らなさそう?)
・作詞はkuma、作曲はiroha
(作詞者と作曲者の名前、実はそんなに知られていなさそう?)
・「Shout!」の部分の叫びがすごい
(この曲知ってる人なら全員知ってそう?)
ということで、私はこの順番じゃないかと思いました。
④つなげて文章にする
「ニコニコではボカロ曲の中で最もマイリスト数が多い」「作詞はkuma、作曲はiroha」「「Shout!」の部分の叫びがすごい」という3つの情報に絞ったところで、ちゃんと文章として成立させてみましょう。修正を加えたところを太字にしました。
完成!!
十分それっぽい問題文ができましたね。これでボカロクイズが作れました。
あなた好みの問題文をたくさん作ってみましょう。
どこで問題出すんだよ
最近だいぶ普及してきましたが、「みんなで早押しクイズ」(みんはや)というアプリがあります。その中の「フリーマッチ」という機能を使えば、早押しクイズを公開できます。作問者がルームを公開し、そこに集まった人たちで対戦するという形式で、一応そこがオンラインクイズの主要拠点みたいになっています。
(アプリダウンロードはこちら→ Google Play App Store)
(アプリの画面です。画像は2018年10月のもの)
ボカロも人気ジャンルの一つで、歌詞クイズを中心として頻繁にボカロクイズの部屋が作られています。
特に「ボカロみんはや民」と呼ばれる人たちが集まる界隈では、毎日誰かしらボカロみんはや企画を立ててクイズを出し合っています。かく言う私もその一員なのですが、ボカロ好きたちでワイワイ盛り上がってる界隈です。
ということはつまり、あなたの作ったボカロクイズを解いてくれる人がいるということです。私もクイズがあったら飛んでいきます。
そのままフリーマッチで公開しても構いませんが、もしボカロみんはや民向けに公開したかったら、「ボカロみんはや予定bot(ボみ予定bot)」にリプライを飛ばすと目につきやすくなります。
もしボカロクイズをいくつか作られたら、ぜひみんはやで公開してみてください。
ボカロクイズを作ることは創作活動なのか
この記事のタイトルで私は、ボカロクイズの作問を「ボカロ界において最も簡単な創作活動」としましたが、わりと本気でそのように思っています。
ボカロにおける創作というとボカロ曲を作ることはもちろん、絵や動画を作る、歌う、踊る、演奏するといった行為が考えられますが、どれもある程度の努力を要するものですし、評価される程度の技術を身に着けることは決して簡単ではありません。
しかし、ボカロクイズを作る場合、特に専門的な知識は必要ありません。強いて言えば、日本語ができればOKです。こんなにお手軽な創作ってなかなか無いんじゃないかと思います。
さらに、同じ答えの問題だとしても、言葉の言い回しや情報の切り取り方など、作問者の感性次第で全く違う問題文になるのが面白いところです。
「いや、そもそもボカロクイズを作っただけで創作活動と言うのがおかしい」という意見もあると思います。たしかに、ボカロに限らずクイズというのは、単なる情報の列挙に過ぎないのかもしれません。それでも、あなたの「ボカロ愛」をクイズにまとめ上げたなら、それは立派な自己表現であり、創作と呼ぶに値する行為ではないでしょうか。
ボカロクイズは解くだけじゃなく作るのも楽しいので、ぜひ作る側にも回ってみてください!
おわりに
ここまでご覧くださったあなたにボカロクイズの楽しさが少しでも伝わったなら、ボカロとクイズの両方を愛する人間として光栄に思います。
ところで、ボカロクイズが盛りだくさんの同人誌があるんですが、その話をしていいですか。私が編集した「ボカクイ 公式記録集」のことです。
「ボカクイ」は、2020年2月に開催された、おそらく日本最大規模のボカロクイズ大会です。私とぽんず(@garasu_n)の2人で作問しました。記録集には、そこで使われた問題(+おまけ)が500問くらい収録されています。
記録集はboothにて販売しております。
この機会にぜひお買い求めください。
宣 伝 し て す み ま せ ん
でも……ぜひ買って読んでいただきたいので……
何卒……!
おしまい
…?
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