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深夜のカーラジオほど刺さるメディアはないかもしれない。【2022年の七味五悦三会を振り返る②】

僕は数年前から年の瀬に「七味五悦三会」を振り返っているのだけれども、実は今年こうしてnoteに書こうと思って改めて調べるまで、ずっと「五悦七味七会」だと勘違いしていたのでした。
正しくは「七味五悦三会」。
いや「会」多いっつーの。完全に人に会いすぎである。
本当は「七五三」になっているわけですね、正しいものは覚えやすい。

というわけで今年も間違って五悦から振り返ってしまったので、五悦から書いていきます。よろしくお願いします。

五悦①:TOKYO FMで自分の歌がかかったこと

年の瀬に一番のプレゼントが待ってました、って感じだ。
自分の作った歌が、全国ネットのラジオでかかるなんて。
自分が深夜ラジオの番組に出るなんて。
ストリーミングやネット媒体、YouTubeなんかの方が拡散力があるとかもはや規模が大きいとかそういう話はわかるけれど、「ラジオで自分の歌がかかる」ってのは僕にとってそんな次元の話ではないのである。

僕にとってラジオは聞いたことのない素晴らしい音楽に出会う場所であり、とにかく「間違いのない」ものだけが流れる場所なのである。
確かな耳や目を持った人間が、世の中の有象無象の音楽や物事を、テレビやネットとは少し違う深さで選び、届ける。
その深さと鋭さは他の媒体の追随を許さない、そういうものなのである。
しかもラジオは「音声メディア」である。
恐ろしいことに音声しか流れないのである。
美しい見た目とか迫力ある動きとか、純粋な「音」以外の要素は限りなく審査基準から削ぎ落とされ、「いかに素晴らしい音か?」という観点で、鋭く厳しい審美眼を持ったラジオ制作者たち(髭を蓄えてベッコウの眼鏡に蝶ネクタイとかしてるんだ絶対。それかヴィンテージのアメカジ古着を着こなしてるに決まってる。)が数多の音楽を審査し、それをくぐり抜けたものだけが電波に乗るのである。(こっわ)
そういう意味で、音楽を作っている人間からするとラジオで自分の曲がかかるというのは恐ろしく大きな出来事なのである。
すごいことなのである。
僕もこれまでたくさんの歌声をラジオを通して聞いて出会ってきたし、「間違いない音楽」しかラジオの電波には乗らないものだと、今でもそう固く信じている。
僕にとってラジオとは、そういう存在なのである。

あと。ラジオってなんかすごく心の内を打ち明けられる存在な気もする。
もちろんラジオパーソナリティには会ったことはないけれど、なぜか教室の隣の席のやつよりも強い親近感を覚えていたり、部活の仲間よりも深いつながりを感じていたり、そういうことってないだろうか?
ラジオの電波はきっと心の絶妙な隙間に染み入ってくるんだろう。

あのFMラジオの独特のコンプレス感で、プチプチした雑音に乗って(そういえばradikoなどネット経由で聞いてる人にはこういう雑音みたいなものは入らないのだろうか?)、深夜一人ラジオに耳を傾ける誰かに自分の歌が届く。誰かの心の微妙な隙間に染み入っていく。
なんて嬉しいことだろう。
届いているといいな。
電波としてではなく、歌声として。

とにかく、思い出しても嬉しい出来事だった。

自分のラジオ体験を振り返ると、ただラジオだけをひたすら聞いていたってことは意外と少なかったのかもしれないと思った。
父親の運転する車の後ろの席で眠りに落ちて、ふと目を覚ますと聞こえた両親の会話。
窓の外に流れる幹線道路のライト。
隣でまだ寝ている弟。
それらをラジオから流れる音楽とともに記憶に刻み込む、とか。

深夜にぼーっと「魂のラジオ」を聴きながら、考えていたのは喧嘩した友達のこととか、気になっていたあの子のことだったり。

日曜日の朝に安住さんの声を聴きながら将来に思いを馳せていたり。

「音声だけ」という余白の多い媒体だからこそ、それだけじゃなく半分自分の生活も一緒に記憶されているんだと思う。
そういう記憶って情報量が案外多い。
ラジオそのものの内容とか面白かったギャグとか(まあ一部覚えているけれど)かかった曲とかそういう具体ではなくて、もっと抽象的な記憶として、もっと映像的な体験として自分の中に大切に堆積している感覚がある。
それは匂いとか、風景といったものに近い形で今でも大切にしまってある。

僕の声も、どこかの誰かの抽象的な記憶を構成する一要素として、記憶されるともなく記憶されていくのだろうか?
それは誰かの人生の一部になれたってことじゃないか?

自分の歌が、どこかの誰かの人生の堆積の上に薄い一枚の層をなして、何かの記憶と一緒に次の瞬間には大切に埋もれていくといいな。

そしていつかそこから、新しい芽が出てくるといい。

あー、うれし!


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