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走れメロスと富嶽百景

 走れメロスを読んだ。
 以下本文メモ。

「人の心を疑うのは、最も恥ずべき悪徳だ。」
「信実とは、決して空虚な妄想ではなかった。」

 ここに全て詰まっているなと思った。

 子どもの頃は、無邪気に何でも信じて、友達もたくさん居たように思う。

 ある時期を境に、それが私の場合は身内との死別だったのだけれど、他人も世界も私の悲しみなんて知らずにいることを実感した時に、信用することを諦めてしまった。

 けれど、大人になってからも、時折誰かに優しくして貰うことがあり、「人って意外と優しい時もあるのだな」と自分の悲観的な思考を反省することも何度か経験した。

 人の心を疑うのは悪徳であり、信実は空虚な妄想ではない。人間失格を執筆した太宰から、そんな明るい未来を信じたくなる言葉が出るなんて、何だか凄いことのように思う。

 同じ短編集の中にあった富嶽百景も読んだ。
 こういう文がある。

「私には、誇るべき何もない。学問もない。才能もない。肉体よごれて、心もまずしい。けれども、苦悩だけは、その青年たちに、先生、と言われて、だまってそれを受けていいくらいの、苦悩は、経て来た。たったそれだけ。藁一すじの自負である。けれども、私は、この自負だけは、はっきり持っていたいと思っている。」

 苦悩を経て来たという藁一すじの自負をはっきり持っていたい。あぁ、これだ。こういうのが大好きなんだ、と何だか妙に安心した。

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