デモ

事前に前置きしますが私は政治的意図を持ってこのデモに参加していません。

Leica M3 Summitr 5cm F2

東日本大震災が起こって福島第一原子力発電所が今のような状態になってから、都内では盛んに反原発デモが繰り返されていた。

写真を撮る者として記録という意味でその場に行きたいと思った。当時19か20歳くらい。政治的意図はなかった。正直右寄りだし。

好きな写真作家にバービー山口さんと北井一夫さんがいる。どちらにも60年代の学生運動を撮った作品がある。特に覚えているのはハービーさんなら夜に学生がウネウネと行進する様子を長時間露光で撮った写真。北井さんなら日大の中で撮られた洗面所の写真。秀逸なプリントで印象に残っている。ヘルメットが映り込んでいたような?それは別の写真だったかな?

とにかく憧れの作家があの60年代の学生運動を撮っていてその写真何故か惹かれていた私は機会を伺っていた。その目の前に原発デモがあった。同期にいたライカ使いのスナップが滅茶苦茶に上手い彼を誘ってデモに行くことにした。

当日は日比谷公園を出発して東電本社前を通って国会議事堂へ向かうというコースだった。

日比谷公園に行くとご老体多しという感じだった。かつての学生運動のような若者の大群なんて事はなく、立ってるノボリは労組やら共産党支部やら……
あー……そうよね、と残念な気持ちになった。後は除染服の仮装をしてドラム缶を叩く謎のへんなのやらなんやら…
と思ってウロウロしていると出発前に若者を見つけた。おばあちゃんと二人で来たようだった。それが冒頭の一枚

出発時間になるとぞろぞろと先頭の方から太鼓を叩きながら進み始めた。
行進が始まってからは前に出たり後ろに行ったりしてあたふたしながら撮影をした。

国会議事堂につく頃には辺りは暗くなっていて警察の警備線前で押しくら饅頭となっていた。ラッシュの電車のような形相だった。

Leica M3 Summitr 5cm F2

もみくちゃで動けなくなった私はひたすら押してくるデモ隊を撮った。皆口々大声で反原発を叫んでいた。

Leica M3 Summitr 5cm F2

最前の警察官にカメラを向けたら顔を逸らされた。


Leica M3 Summitr 5cm F2

夜闇に浮かぶ国会議事堂。そこには誰も居ないというのに何をしてるのだろうと思った。

このあとなんとか「前線」を離脱したら街頭で共産党の志位委員長がアジを打っていた。群衆ができていて志位委員長の写真はとても撮れなかった。

そこで誘った彼と合流してその場を離れた。

国会議事堂前駅から地下鉄に乗った。なにやってんだという冷めた感覚と人々の熱気にやられたような感覚が同時にやってきて不思議な気持ちのまま帰路についた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?