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健康・医療心理学Ⅱ第1課題①S評価レポート

『精神保健の一次予防、二次予防、三次予防についてまとめなさい。』


精神保健とは、心の健康を保持増進することを目的とした学問や活動であり、精神障害の予防や治療だけでなく、QOL(Quality of Life)の向上やウェルビーイング、エンパワメントをもたらす可能性を持ち、人々の発達段階や生活環境に応じて様々な分野において実施される。

精神保健の1次予防、2次予防、3次予防とは、キャプラン(1964)が、もともと公衆衛生の分野で行われていた予防の概念を精神医療に取り入れた予防モデルがもとになっている。それぞれ危機的状況の発生予防、重症化予防、再発予防を目的としており、2次予防は1次予防を含み、3次予防は他の2つの予防を包含している(安田,2017)。

1次予防

1次予防には、積極的な心の健康の保持増進と環境による健康障害の防止という2つの側面がある。この取り組みは一般市民全体を対象とし、有害な労働環境や生活環境における精神疾患の発症を防止することや、地域住民が孤独を感じないようコミュニケーションをとれる場の開拓、心の健康に関する講演会や広報活動を通じた啓発活動、地域や事業所内外における相談窓口の設置などが行われる。

労働環境においては、4つのケア(厚生労働省,2012)のうち、セルフケアとラインケアが継続的かつ計画的に行われる環境を構築することが重要とされる。セルフケアとは労働者が自身のメンタルヘルスケアをすることであり、ラインケアとは直属の上司など管理監督者が部下のメンタルヘルスケアをすることである。これらを促進するためには、研修や講習会を通じて心の健康についての正しい知識の提供やストレスに気付く方法、ストレスの対処法、良好な人間関係を構築する方法などについて共有し、必要な時に自ら援助を求められるように窓口を設置し周知徹底することが重要である。

2次予防

二次予防では、すでに精神的な不調が出現している人やコミュニティを対象とした重症化や蔓延を予防するために、精神不調者を早期発見し適切な対応を行うことを目指す。具体的には、乳幼児の一カ月検診や健康診断といった定期的な検診や職場におけるストレスチェック、上司や産業医による面談などが実施される。精神的不調の疑いがある場合やストレスチェックにて高ストレスと判定された場合には、心理士や医師など外部の専門家につなげ、心理査定によって原因や状態について把握し、対処法などアドバイスしたり、必要に応じて薬物療法や心理療法などの治療を行う。

また、二次予防においても一次予防と重なる部分がある。心理査定による情報をもとに、労働環境や生活環境について改めて見直し改善することや、労働者と管理職へ向けた正しい知識の提供、そして円滑に専門機関へつなぐための相談窓口の設置と周知徹底などが必要とされる。そのため二次予防では、セルフケア、ラインケアのほかに事業場内産業保健スタッフなどによるケア、事業場外資源によるケアを組み合わせた4つのケアをもって取り組むことが必要となる。

3次予防

そして三次予防では、精神疾患による障害を最小限に抑え、制約がある中でも充実した生活ができるように支援すること、また、休職者の職場復帰支援ならびに再発防止を目的とする。具体的には、休職者への精神的なフォロー、主治医と連携し職場復帰支援プランの作成、職場復帰時における対応の研修、環境の整備などが挙げられる。なお、厚生労働省は、『心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き(2020)』において、事業者と産業医などが協力して支援にあたるための必要事項を示している。

以上のように、精神保健のための予防は、私たちが生まれると間もなく実施されている。疾患発症を予防することを最優先にするためには、個人の特性を早期に把握することが重要であり、それに基づいた合理的配慮がなされることが社会に求められている。

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