24.01.21 対話・グルーヴ・ソサエティ4

 今週の「オードリーのオールナイトニッポン」の、春日ゾーンが面白かった。葛飾のスーパーで開催されたのど自慢。そこで登場する、旦那さんのことを「殺してやりたい」という主婦。「そう思ってしまうくらい、愛しているんですよね?」と何度投げかけても変わらない態度。でも、その後に歌うのは「だんな様」という、旦那のことを大事に思う歌。いったいどっちなんだ?という春日の問いに対して、「そんな気持ちは共存するんだよ。どっちかにしようとするな」と若林。でも、「それじゃ現場はウケないんだよ、理解のあるやつなんて面白くないんだよ」と春日。
 この20分ほどのやり取りの中に、改めてオードリーというコンビのキャラクターが凝縮されているのだなと思った。すなわち、「テレビ」である春日と、そうではない若林。エンタメを作るために、ある程度の割り切りができるか否か。この対比があるから、ラジオ芸が成り立っているのだな〜と面白い気持ちになった。
 しかし春日の立場に立つと、若林の言っていることなんて野暮以外の何ものでもなく、場合によっちゃしっかり営業妨害ですらあるように聞こえる気がするのだが、よく一緒にコンビをやっているよなと感心してしまう。そして、「理解のあるやつなんて面白くないんだよ」と返された若林はただ「ふふっ」と笑っていたわけだが、彼のエッセイ本やらnoteやらを読んでいると、この「ふふっ」の中にいろいろな含蓄を深読みしてしまう。

 しかし、お笑い芸人界隈は何となく揺れている。自分は「気持ち悪い」以外の感情が特に浮かばず終了になるかなと思っていたが、あの「黒毛」「べんごし」「こうほうの女」というメモはちょっと「気持ち悪い」とは少し違った何とも言えない感情を抱いてしまった。それらに対する「学がない」「教養がない」という辛辣なコメントを見ているとさらに複雑な気持ちになってしまった。ルサンチマンとルサンチマンが屈折してぶつかり合っているように見えるのが結構辛い。
 それから、西川のりおが語っていた芸人界隈のリアリズムもなかなかに苦しい。弱肉強食、バーリトゥード、リヴァイアサン的な世界が展開されているなと前々から感じている。芸人を取り巻く世界は、彼ら自身が語る言葉がどこまで本当かはさておいて、極度に新自由主義の雰囲気を纏っているような気がする。それはなぜかと言えば、彼らの稼業が水商売であるからに他ならないわけだけども、彼らがそのことを受け入れようとする様子はあまり見られない。だから今回の騒動でも、よく分からない反論にすらなっていないような愚痴やら文句を平然と公共の電波に乗せて喋ってしまうし、それに対する不満を態度に出してしまう。
 一方、自分たちにはさも「権利」があるかのように語るが、その権利を担保してくれる人が実はどこにも居ない。本来であればその権利を担保してくれるはずのプロダクションが、なんなら一番搾取をしているのだからたまったものではない。彼らはそんな構造についてはあまり自覚的ではなさそうで、例えばプロダクションと戦って権利を勝ち取ろうという意識を彼らはあまり見せてくれない。それどころか、なぜか分からないが顧客側にその怒りを向けてくる。怒りを向けたら自分が買われなくなるだけだということに気づいていないのか、敢えて目を逸らしているのか。ここがいつも不思議だなと思って見ている。
 穿った見方をすれば、グレーゾーンに滞留して、ひたすらにいいとこどりをし続けようとしているように見えなくもない。そんなことが許されてきたくらいには実体のない商売をしているのが彼らであって、権利を求めるならばそういったことも許されなくなってくるかもしれないよ、ということを果たしてどれくらい分かっているのだろうか。大人はズルいよなあ。


 羊文学の新しいアルバムをやっと聴けた。良かった。ちょっと前に渋谷に行ったら大きな広告が貼られていて、ここまで来たんだなと謎の親目線になってみたりもした。

 TAMTAMも新しいEPが出ていて、興奮した。何せそこまでリリースが多い人たちではないので…。worksong!の流れを踏襲した感じでとてもよかった。恵比寿でこんどライブをやるらしいので行ってみようと思うが、チケット買う方式ではないことに戸惑いを覚えるなどする。

 あとはYouTubeで北欧を散歩している動画を見たり、ずっと敬遠してきた泉房穂の動画を見たりした。ベガルタのキャンプ動画を見たり、スト6初心者すぎる大会を見たり、RSRの期間限定動画を見たりもする。初心者すぎる大会はめちゃくちゃ面白かった。
 SWEET LOVE SHOWERも見た。嫁が見ていたソロ活女子のすすめも面白そうなので今度見る。

 それから音楽を久しぶりによく聴いた1週間だった気がする。ヒグチアイがずっといいなあ。今年は色々なLIVEに行きたいなあと毎年言っているが、もうちょっと頑張りたいぞ。TAMTAMは見に行くとして、あとヒグチアイとSCOOBIE DOも絶対見に行きたい。あとは思いついたらそのとき書く。

 そういえば、浅草や歌舞伎町にも行った1週間だったのだけど、4年前にニア・トーキョーに来た時のあらゆる感動に比べてみると、もはや書き留めるほどのインパクトもさほど感じられなくなってしまった。秋葉原の総武線ホームがやたら広いようなことにもすっかり慣れてしまい、「どの号車が空いてそうか」みたいなことを考えながら列に並ぶ余裕さえ出てくるようになった。これが4年暮らした結果なのだろうか。
 強いて言えば、歌舞伎町に降り立った瞬間にゲイのそこそこ強めなキスシーンを見て、若干身構えてしまった自分が居て、これはゲイであることに身構えたのか、公衆の面前でキスをしていることに身構えたのか分からなくなってしまって、そういう文化で生きてきている自分なんだなということだけをとりあえず再確認させられて終わった。ということはあった。

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