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Be Bop A Lula/Gene Vincentビーバップアルーラ/ジーンヴィンセント ギターソロタブ譜 動画 解説

今回は50年代のロックンロールスタンダード曲、ジーンヴィンセントによるビーバップアルーラのソロを解説。

曲のキーはEメジャーでソロはEのマイナーペンタトニックを基本にメジャーサードや9th,13thといった音を追加した「気の利いたペンタトニック」の見本のようなソロである。

Eマイナーペンタトニック、と便宜上書いたが曲は長調なので本来「Eブルーノートペンタトニックスケール」のような呼び方の方が的確かもしれない。この辺はロックを理論的見地から紐解く鍵になる話なので又別の機会に詳しく解説するとして、このブルーノートスケールに9thと13thを付加した時点でこのスケールはドリアンスケール、と考える事もできる。

ドリアンの音使いは「行き過ぎたオシャレ感やテンション感」は低めで、ロックやブルースとも親和性が高いため、ありがちな雰囲気に少し変化をつけつつもインテリジェントになり過ぎない雰囲気に適した響きがあり「ペンタ一発を脱した違いがわかる大人のロックギタリスト」へのはじめの一歩、として押さえておきたいところだ。

又このソロは更にそのドリアンの音階にメジャー3度を追加しており、ここに更に♭5のブルーノートを加えれば50年代のロックのソロで頻繁に使われるメジャー/マイナーペンタ+♭5、という完璧なロックンロールスケールの出来上がりである。かの有名なジョニーBグッドのイントロも同様の音使いで成り立っている事も付け加えておこう。

良く理論書等で目にするブルースやロックのソロへのアプローチで、「メジャーとマイナーペンタトニックの混合」は実際にはこういう使われ方をしており、所謂基本のボックスポジションをルート音1.5音差の指板ポジションで横移動して弾いてもまるで調が変わってしまったようなチグハグな印象にしかならず実際はあまり約に立たない。このソロのようにマイナーペンタトニックのボックスポジション内にメジャーペンタの音(即ち9thと13th)を見つける、といったアプローチで使ってこそ違和感無く使う事が出来る。

まとめると、まずお決まりのマイナーペンタトニックのボックスポジションがあり、そこにメジャーペンタを混ぜると9thと13thが加わりイコールドリアンスケール+メジャー3度となる。そこに残ったもう一つのブルーノート♭5thを付加する(この曲では♭5thは使われていない)とロックやブルースの融通無碍なミックススケールになる。

又リズム面では、3連符「タタタ」を意識した上で3連を2対1に分けるイメージ、2個目のタを1つ目にまとめる感覚で「タアタ」とスウィング感を出す事が重要。均等の3分割をしないで何となくの「感覚」でタアタとやるとアの部分が曖昧で不揃いになり全体的にモタり気味の冗漫な感じの似非シャッフル/スウィングの演奏になりがちなので注意が必要。

又出だしの部分はフレーズが1弦12フレットをペダルにした2音ごとのフレーズなので上記の3連との兼ね合いでアクセントが惑わされがちだが、一度ゆっくりと3連で分けたフレーズで覚えた上で徐々に慣らしてから2音かたまりのフレーズの感じを出す、というプロセスを辿ると良い感じに仕上がるだろう。

基本的なスリーコードブルース12小節パターン一回しの中にも上記のように様々な「プレイヤーとしてタメになるツボ」が詰まっている全てのロックギタリストにとって非常にタメになるロックの名ソロの一つと言って良いだろう。

この曲やギターだけに限った話ではないが、多くのスタンダード曲や名曲のプレイにはそれを演奏した人間(多くの場合は歴史のどこかの時点でその音源を世界に発信する機会を掴んだ一流のプレイヤー)が目論んだ何かしらのプレイのツボやそのフレーズを刻んだ理由が存在している確率が高く、それらを見破り音源を通して共有して受け取った側が血肉にして発展させ受け継いでいく事こそコピーの醍醐味なのである。










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