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【ネタバレなし】-JKハルは異世界で娼婦になった-【レビュー】

 この記事の読み手であるあなたにお願いがあります。

 私がこのレビューを書いた切っ掛けを知ってください。
 あなたには私の気持ちを知っていてほしいので。

 「レビュー書いてみるかぁ」とnoteをインストールしようと考えた時に既にインストールは終わっていた!!
 それくらい衝動的な行動だった!!

 それ程にこの作品は私にとって『衝撃的』だった、という事実。
 それをあなたに知ってほしいのです。

 実は本作品、以前からWeb広告で気になってたのだけれど(1話だけ試し読みしてた)、何だか読んだらちょっと辛くなりそうで、手を出していなかった。
 と言うか出せずにいた。

 しかし今回、時間にも余裕が生まれ、「……気になっていたアレ……ちょっと読んでみるか……」
 と軽い気持ちでコミカライズを読んでしまい、
 あまりの面白さにコミック2巻まで一気に読み終わってしまった。
 それどころか数時間後にはWeb原作まで徹夜で読破してしまっていて。
 オンラインで発売されている書籍版を全て注文してしまうまでに至ったのでした。

 どうしてそこまで読み嵌まってしまったのか。
 読み始める前は敬遠までしていたのに、最大瞬間風速過去最大と言えてしまう程、一気にのめり込んでしまった理由を自分で整理する意味も含め言語化してみよう。そしてネタバレなしの感想にしてみようと思ってnoteをインストールしてみたのです。

 ただ、レビューに関して予め断っておくこととして。
 これは自分用という側面が強いので、作品への誘導はあまり意識していません。
 しかしながら、「なんて面白いんだ!!」という貴重な体験を享受した身として、自分でこのレビューを読み返した時に(あるいはこのレビューを読んだあなたが)作品の魅力を感じれるほど文字に書き起こせていたなら。
 徹夜して読み、レビューまで書いた甲斐があるというものだと思うので、情報整理と実体験録はなるだけ克明にしていきたいと考えています。

 レビューに入る前に、もう1つだけあなたにお願いがあります。

 このレビューを最後まで読んでください。

 私にはあなたに伝えたい大事なことがあるので。


========================

 それではここから作品のレビューに入る。

平鳥コウ著『JKハルは異世界で娼婦になった』
コミック版 山田J太 漫画

コミック版(Kindle)
https://www.amazon.co.jp/dp/B085RMBH76/ref=cm_sw_r_apa_i_9bRNEbD4PJQYN

書籍版(Kindle)
https://www.amazon.co.jp/dp/B07ZRK8CMK/ref=cm_sw_r_apa_i_4cRNEbCBDKYEV

Web原作版(小説家になろう)
http://novel18.syosetu.com/n4381dp/


【以下、review本文】

①◼️作品概要
・『JKハルは異世界で娼婦になった』とはなんぞや?

②◼️本編メインエピソード
・にわかカープ編(野球の話ではない)
・スモーブ編
・缶蹴りんぐ編
・おじさん編
・終章

③◼️魅力
・現代語と表現力
・描写の間引きとモノローグ
・女性心理と当事者視点
・主人公のヒール性
・ダークファンタジー

④◼️まとめ

の順に書き起こしてみようと思う。

 情報を整理することが非常に重要だと、レビューを書いてみようと思った瞬間、股間を蹴り上げられたかのごとく脳に電気信号が送られ、脳裏には『駄文を削ぎ落とせ』との指令が下ったのだっ。



項目①
『JKハルは異世界で娼婦になった』とはなんぞや?

 これは作品の紹介文から敢えて引用させていただく。

『どこにでもいる普通の女子高生・小山ハルは、ある日交通事故に遭い――気づいたときには異世界に転移していた。チート能力も授けられず、男しか冒険者にはなれない状況で、ハルは生活のために酒場兼娼館『夜想の青猫亭』で働くことを決意する。だが男尊&女卑がはびこる異世界では理不尽なことも嫌なこともたくさんあって……。同じく現代から転移した同級生・千葉セイジ、娼館で働くルペやシクラソ、一途にハルに思いを寄せるスモーブとの出会いを経て、異世界に溶け込みはじめたハルを待ち受けていた過酷な運命とは……。』(Web版本編紹介文より)

 ……よくある異世界転移ものだ。序文に何の捻りもない。
 恐らく、大半の賢明なオタクである諸兄らはこの説明文だけでは本書が並ぶ本棚には手を伸ばさないだろう。自分ならそうする。
 しかし待ってほしい。
 本書の装丁を見てほしい。
 そこに写るは『JK』

 『 女 子 高 校 生 』だ。

 そう、主人公であるハルはJKである(東京の私立校在籍)。
 それも『ギャル』だ。

 もう一度言おう。『 ギ ャ ル 』である。
 
 これは読まない手はない。伸ばさない手はないのだ。
 
 そのギャルであるジョシコウコウセイのハルは、突如襲いかかる暴走トラックに轢かれ異世界転移を果たす。
 そして生計を立てる為、過去の経験を活かし春を売ることを決意するのだった。

 重いwwww
 のっけから文字だけ読むとめっちゃ重いwwww

 タイトルから察せない人はいないと思うが、本作品の主人公は現代東京に暮らす女子高生が異世界で生きるために自身の春を売る、という物語であり、自然、内容は性的になる(本作はR18指定)。
 さらに会話や描写もダイレクトな表現が多い。
 端的に言うと隠語を隠すことがない。
 この世界では、そういったモラルやデリカシーが著しく欠如している。
 本編では平気でチン○、マン○を連呼する。
 モノローグだけではない。セリフとしてキャラが(男女問わず)バンバン連呼するのだ。
 それは読み手を選ぶ理由の一つになるかもしれない。

 世界観や登場人物の言動に我々読者は顔をしかめ抵抗を示すことになるかもしれない。
 
 それは否定できない。
 しかし安心してほしい。主人公のハルはけっこうな『バカ』であり、重いと思われる設定は彼女の価値観によって案外容易に払拭され、下ネタが飛び交う会話は高校生が青春を謳歌する教室内のごとき群像劇に変わり、娯楽に転じる。

 そして逆に、俗に言う『抜きコンテンツ』を期待してる兄貴たちにはあらかじめ注意をしなくてはならないことを許してほしい。

 この本は決してエロスと悲劇で固められた官能小説ではなく、ましてやグロやリョナが溢れるような抜ける消費コンテンツでもない。
 『JKハルは異世界で娼婦になった』は、紛れもない異世界ファンタジー物語である。

 そしてもう1つ断っておくが、
 彼女は決して、頭の足りない阿呆ではない。
 
 項目②
本編メインエピソード
・にわかカープ編(野球の話ではない)
・スモーブ編
・缶蹴りんぐ編
・おじさん編
・終章

 今回は当然、ネタバレなら他所でお願い、さもなきゃ即強制退去。というスタンスなので、メインエピソードの項ではざっくりとしか触れるつもりはない。
 と言うかほとんどは、
 『娼館に来た客がハルとセ○クスする』
 という一文で説明は完結してしまう。実に簡潔である。

 しかし流してしまうと項としてあげた意味がないので少しずつ触れてはおこう。


・にわかカープ編(野球の要素は皆無)
 世界観の解説エピソード。
 『紅のエンドレスレイン』が登場する。

・スモーブ編
 2人の金持ちのボンボンの話。
 ハルの取り合いが勃発する。


・缶蹴りんぐ編
 コレガワカラナイ……。


・おじさん編
 おじさんが出てくる。


・終章
 本編でのお楽しみ。
(一言だけ添えるとしたらR18要素が強め)


 こんな所だろう。ネタバレなしの割りにとても的を射ていると我ながら思う。
 特に缶蹴りんぐの『コレガワカラナイ』は秀逸な表現だと思う。
 なぜこうなったかと言われれば、解らない。
 コレガワカラナイのである……。
 だが個人的にはお気に入りの回でもある。というのも事実だ。
 良い。


 

項目③
魅力
・現代語と表現力
・描写の間引きとモノローグ
・女性心理と当事者視点
・主人公のヒール性
・ダークファンタジー

 重要なのはここからだ。
 あまり長く書いてしまうとそれこそ駄文の生成になってしまうので、なるだけ簡潔に本作『JKハルは異世界で娼婦になった』の魅力に触れていこう。そうしよう。
 
 
 
 
魅力1・現代語と表現力

 一言で言うと、『読みやすさ』だ。
 その一端を担うのが、ハルの話し言葉である馴染み深い現代的言葉遣いと、読み解きやすいセリフと地の文である。

 ハルは17歳のJKである。バリバリの現代っ子だ。そしてギャル。

 彼女のセリフや一人称で語られる地の文は、私たち現代人に最も身近なリアルな言葉だ。そして意外と春のギャル語は崩れていない。
 さらに年下のセンパイや娼館を訪れる客にはちゃんと敬語を使っている(ノリは軽いが)
 なので警戒対象である難読なギャル文字などは1度も出ない。
 読み手に優しいところが嬉しい。

 そして馴染みの言葉を用いて綴られる情景描写はシンプルであり、情緒的だ。
 著者の文章取捨選択のセンス、表現力の高さを感じる。

 本作には、現代ライトノベルに精通していないと理解できない武器の名前や魔法も出てこない。
 特種なルビも振られていない。(一部例外の赤ヘルメットはいる)
 頭を捻りながら、意味を想像しないがらキャラクターの動向をまぶたの裏で追いかける必要はない。

 彼女と客が情事を深める狭い部屋にはベッドがあり、ハルと客が居るだけだ。

 彼女の語る言葉とモノローグがその部屋の全てである。
 良い。

 
 
 
 魅力2・描写の間引きとモノローグ

 2つ目の魅力は、驚くほど簡素に削られた装飾的描写と、ハルの体験した『事実』のみで語られるモノローグである。
 本来であれば、部屋の飾りやランプの灯り、窓を叩く風の音などの『シーンの描写』が情事の情緒を盛り上げる要素となるが、『JKハル』ではかなり積極的に『人以外の描写』を削っている。
 モノローグはハルの紡ぐ心情や彼女の体感する快感や苦痛がそのほとんどを占める。

 だから、テンポが良く、『ハルの体験』に没入することができる。
 我々は、ハルの視点で客や彼女の同僚を見ることになる。
 そして、ハルの心の奥に在る真実を追体験することができる。 

 

 
魅力3・女性心理と当事者視点

 ハルの視点と心の機微は、実は繊細だったり、実はそうでもなかったりする。

 項目①の『JKハルは異世界で娼婦になった』とはなんぞや? でも触れたが、JKのハルは基本的にバカで、頭が軽い女子である。
 本編の彼女の言葉から察する限り、あまり学業が得意な生徒ではなかったのだろう。あまり難しいことは考えていない。
 だから彼女は自分の春を売る。

 ただ生きるために身体を売る。
 空気を読んで自分の身体を野卑な客の前に差し出したり。
 物のように放り投げられ身体を傷めたり。
 同僚と他愛もない会話で大笑いしたり。
 無垢な子供たちをもてあそんだり。
 友達の恋を祈ったり。
 素敵な客を誘ったり。
 ただひたすら乱れ熱情に身体も心も捧げたり。
 ただ生きるために身体を売る。

 娼婦のハルはいつだって全力だ。

 全力で少女であり、大人と同じ世界に身を置きながら、全てを割り切れない未成熟な女の子でもある。

 作中、ハルの視点で語られるモノローグはシンプルだ。
 彼女は自分にウソをつかないし、真実を騙らない。
 美しく成長していく身体とプロの娼婦として磨かれていく心。

 著者はハルという存在をとてもシンプルに、我々に解りやすく描いている。

 "異世界"、"娼館"、"少女"、という不穏なワードから連想されるような悲劇がこの世界では確かに起こっている。
 しかし、悲劇を悲劇で終わらせない力を彼女は内に秘めている。
 読み手である私たちは、いつの間にかハルの行動に期待しているだろう。
 バカではあるが、阿呆ではないのだ。
 
 
 
 

魅力4・主人公のヒール性

 そんな不穏な世界で、ハルはしたたかに生きる。今日死なないために娼婦として誇り高く身体を売っている。

 この世界は我々の暮らす世界とは異なり、今でも男が全てにおいて優遇され、女が全てにおいて冷遇されている。
 娼婦の世界は特に顕著である。
 借金返済のために売られた少女もいれば、娼館で生まれ娼婦であることが自身の存在証明であると確信する少女もいる。
 時には客に恋をして運命に翻弄される少女だっているだろう。

 肩で風を切り、我が物顔で天下の往来を闊歩する男尊&女卑に、ハルは頭を下げながらも、下げた頭は舌を出して、チャーミングな仕草で後ろに回した手は中指を立てている。

 娼婦が物のように扱われるこの世界は時に残酷で取り返しのつかない現象を起こすが、ハルは何もできない良い子ちゃんではない。

 研いだ爪はいつか振るわれる。
 ハルはその瞬間を、獲物を狙う鷹のように見詰めている。

 

 
 
魅力5・ダークファンタジー

 『JKハルは異世界で娼婦になった』はエロス全開ではあるものの、読み手を劣情へ誘うだけの官能小説でないことは先に触れた通りである。
 紛れもない『異世界転移もの』だ。

 本作品の特徴の一つに、チート能力無双ではない、ということを改めて書き足しておく。
 (ネタバレではない。作品紹介文にも書かれている)

 ハルは事故による死で転移した際、チート能力や特種なスキルを付与されることなく異世界へと転移する。
 転移の直前、この世界の『神』と出会っておきながら、だ。

 ハルは冒険に出ない。
 モンスターも狩らない。
 冒険者ギルドに行かない。
 ハルは世界のために戦わない。
 ハルは自分のために、もしくは誰かのために春を売る。
 
 まるでファンタジーの要素を感じないかもしれない。ましてやダークな要素なんて。
 しかし、ハルを取り巻く世界は違う。
 魔王が存在し、人間が、そして勇者が魔物と日夜鍔迫り合いを繰り広げる。そんな世界だ。
 そんな世界でハルは生きる。

 冒険には出ないが、確かにハルはファンタジー小説の主人公なのである。
 それもとびきりダークな。
 

 
 
 
項目④
まとめ

 結局多くの駄文を生み出してしまった気がする。

 ネタバレなしで、ハル以外の登場人物にもほとんど触れていないため、ハルのこと以外はピントがずれボヤけた写真のように不鮮明なままだと思う。

 でもそれでも良い。

 私が伝えたかったのは、娼婦ハルの魅力なのだ。

 ハルがどれだけバカで。
 ハルがどれだけ強かで。
 ハルがどれだけ悪役で。
 ハルがどれだけ可愛いか。

 ただそれだけを伝えたかったレビューだったのだから。

========================

 ここまで読んでくださったあなたに最大の感謝を。
 そして最後に1つお願いを。
 もちろんそれは、

 『JKハルは異世界で娼婦になった』を読んでほしい。
 この作品を読んだことのないあなたに読んでほしいので。
 読んだことのあるあなたにももう一度読んでほしいので。
 

 もしこのレビューでわずかでも彼女に興味を持ってくれたのなら、

 漫画でも良い、

コミック版(Kindle) 山田J太 漫画
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 書籍でも良い、

書籍版(Kindle) 平鳥コウ 原作
https://www.amazon.co.jp/dp/B07ZRK8CMK/ref=cm_sw_r_apa_i_4cRNEbCBDKYEV
 
 
 もちろん最初に書かれたWeb原作も最高だ。

Web原作版(小説家になろう) 平鳥コウ 原作
http://novel18.syosetu.com/n4381dp/
 
 
 番外編SSなんて美味しいデザートもある。

平鳥コウ 原作
https://ncode.syosetu.com/n5954el/

 
 
 JKハルが、どのようして娼婦ハルになったのか。
 ぜひ知ってほしいと思う。

 『JKハルは異世界で娼婦になった』は良いぞ。

 

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