圧倒的な右へ倣えの異様さ

1つの映画館で、40回以上。
初日だけ。つまり1日の上映回数が、である。

人気がどうのという以前に、気持ちが悪いとしか感じなかった。
売れるのであれば売れるだけ売るという理屈は圧倒的に正しい。
が、「捌けるから」と同じものを幾つものスクリーンで上映するというのは冒涜にも思えてしまった。

興行としては、カネにならなければ失敗だ。
ただ、こと文化芸術において絶対値ではないと信じたい。

おじさんの懐古主義的な心象かもしれない。
だとしても、いくらなんでも節操がなさすぎやしないだろうか。

少なくとも私の思う映画館は、そんな場所ではない。

平均的な映画館の客席数が300未満。
もちろん大小あるわけで概算に過ぎないが初日だけで22万人が観ている。

その数字が、少し気持ちが悪い。
あるいは私が知らないだけで、いっそ少ないくらいなのかもしれない。

でも、それでも少し気持ちが悪い気がするのだ。

たとえば身近で「買い占めた」という話を聞かなくとも品切れが続いたマスクやトイレットペーパー。何を見るのかしれず、それでも歩いているときでさえ手にしているスマートフォン。誰が始めたのか、形骸化しているもの。

そんな得体の知れない圧倒的な右へ倣えに気がつくと、ささくれだつ。