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デ・ニーロというよすが

アル・カポネであった。

いま検索すると、ほぼ間違いなくお笑い芸人さんが出てきてしまうであろう「アンタッチャブル」が、はじめて私の観たロバート・デ・ニーロである。

映画の公開当時まだ12歳であった私が選ぶには、少し渋すぎる。

おそらく数年後、「ゴールデン洋画劇場」で放送されたときの記憶だろう。
吹き替えは、小林清志氏であったらしい。
ルパン三世の、次元大介である。

尊厳にあふれ、ユーモアがあり、憎らしくふてぶてしい。

「違う、チームが勝たなきゃ」と演説をぶって、手にしたバットでミスした部下を殴り殺す。
近代ギャングのボスがブラウン管の中にいた。

映画の中で、私は主人公のエリオットを支える老警官に惹かれた。
ショーン・コネリー演じる、ジム・マローンである。

ストーリーそのまま、私の中でデニーロは大悪役として確立された。

テレビで観た悪党は翌年、パーキンソン病を患って私の前に現れる。

「レナードの朝」である。

近代ギャングのボスであった面影は微塵もなく、生きる喜びを謳い、恋をして再び病に沈む。

私の中で、レナード・ロウとアル・カポネは実在であった。

何を当たり前の事を、とお思いだろう。
どちらも実在した人物である。

が、時代が違い、国が違う。

本来であれば、物語の中のひとである。
ただ私の中には圧倒的な説得力をもって、いるのである。

稀代の名優が、説得力の「よすが」である。

その名優がフランク・シーランを演じたという。
ジミー・ホッファはあの、階段から落ちてくるベビーカーを足でとめつつ大悪党を追い詰める最後の希望をつないだアル・パチーノだ。

アイリッシュマン。
できれば、映画館で観たいくらいである。