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【世界の料理】いろんな国のドライマンゴー食べ比べ

もうすぐ梅雨の季節がやってくるが、中国時代この時期はマンゴーが飛び交う季節だったように覚えている。
街のあちこちに山のように果物を積み上げた露店が並んだり、スーパーなんかでも同じく山のように盛り上げては1斤3.9元というようなとんでもない値段で売っていたものだ。
そういう時期にヘルメット一杯買い込んできては、同じくスーパーで買ってきたお得用漂白剤みたいな容器に入ったヨーグルトをドバドバとかけて食っていたもんだ、いやあ懐かしい。

果物というものは取れる土地で取れる時期になるともうイヤというほど取れるもので、大昔だが福建省の山奥でパイナップルが1個数元というような値段で無人販売されているのを見たことがある。
ところでパイナップルの畑というのを見たことがない方が大半だと思うのでちょっと描写してみよう。
植物としてのパイナップルはものすごく鋭いトゲだらけの葉っぱが下部から直接放射状に広がるような構造になっていて、その中央にパイナップルの実が成るようになっている。
その葉っぱの凶悪さといったら物凄いもので、まるでジャンプ系マンガの悪役が嬉しそうに振り回している剣みたいなビジュアルをしており、これが全方位全角度に向かってハリネズミのように何十枚も生えているというようなものだ。
これをかき分けた中に実があるので、パイナップルの収穫は命がけ、もしパイナップル畑で転んだら命に関わるであろう。
そんな凶暴な見かけのパイナップルだが山全体に植わっているのを遠くから見ると、なんだか大仏の頭のようなかわいらしいイメージに変化するのがとてもおもしろかった。

そんなパイナップルの山が行けども行けども続くような風景はまるで大仏が何十人も並んでいるように見えたのだが、そんな場所で一個数十円くらいでパイナップルが無人販売されていて大変驚いた。
驚いたのは値段の方ではなく、損得に極めてセンシティブなあの中国人が無人販売をやっているということにだ。
元々パイナップルというのはものすごく安いんだろうと思った。

同じようなことはいくらでも例があるのであって、中国の広西あたりだとマンゴーが街路樹になっているとも聞くし、昔旅行で行ったモロッコのマラケシュではオレンジが街路樹で、生搾りオレンジジュース、確かフランス語でジュス・ド・オランジェとかいったかな、目の前でオレンジ4個くらいを絞ってくれるめちゃくちゃうまいジュースだったが、缶コーヒーを飲むくらいの気軽さで飲める値段だったのを覚えている。
公園の森もオレンジで、もはや採ろうという人もいないのか大量の落果が地面に転がっていて、もったいないというよりも元々果実を実らせる樹木とは本来こういうもんだということに気付かされてハッとなったものだ。

そんな果物だが、採れる期間が決まっていて食える状態を保てる時間が短いのが残念なところだ。
落語の千両みかんではないが、元来旬でない時の果物はまず手に入らないか恐ろしく高かったもので、ためにこれをなんとか保存しようとして乾燥させるということがおそらく同時発生的に世界中で行われるようになったに違いない。
ドライフルーツというやつはなるほど世界中にあって、子供の頃苦手だった干し葡萄もそうだし日本の干し柿だってそうだ。
ところが残念なことに果物というやつは一旦干して水分を抜いてしまうと物性が大きく変わり、糖度が極端に高いなんだかニチャニチャした甘ったるいものになってしまうのが苦手だった。
それで子供の頃に、あのおいしいみずみずしいブドウの味を返してくれとばかりにコップ一杯分の干し葡萄に水を入れて戻そうと試みたことがあったが、単に干し葡萄がふやけるだけで大変ガッカリしたことがあった。
これなんとかしなさいと言われて、コップいっぱい分のふやけた干し葡萄を泣きながら食ったのを覚えている。
このことから、一旦干してしまったものは二度と元には戻らないのだということが頭に刻み込まれ、その後西安に留学していた時に怪しい見せもの小屋でどっかで盗掘してきたらしきミイラを見たことがあるのだが、10元くらいの木戸賃を払って中に入り、広州の乾物屋街を煮詰めたような物凄い乾物臭がする中、パカンパカンに乾燥して手は小さく前へ直れのような健闘位、口はオタマトーンみたいに開いたミイラ特有の格好をしたミイラが無造作に転がっているのを見て、あんたは水で戻しても人間には戻らないのだよ、ふやけたミイラになるだけだよと思ったものだ。

ところが、それは誤りであったことを後に知ることになる。
数年ほど前にうちの奥様が贔屓にしている東京の乾物商からドライマンゴーなるものが届いたのだが、これは水で戻すとかなりリアルなマンゴーになるではないか。
さらにヨーグルトに埋めておくことでさらにうまい食い物へと変貌する。
ヨーグルトの水分を抜いて硬くすることでクロテッドクリームのような物性になり、成分も凝集されてひどくうまい食い物になるのだが、これは水切りヨーグルトとして知られている。
通常はコーヒーフィルターのようなもので水を抜くのだが、ドライマンゴーを入れることでも同じことができるわけだ。
しかもマンゴーの風味がヨーグルトに移り、またドライマンゴーは生マンゴーの倍くらいの硬さまで戻るので、マンゴーもヨーグルトも全てが濃厚な、なんじゃこれはうまかばい!というような結構なおやつになるのだ。

そんなわけで、奥様が買ったドライマンゴーを時々盗み食いしていたのだが、自分でも買ってみようと思って先日中国から荷物を入れる時に一緒にちょっと買ってみた。
これがドンブラコと船で届けられるのを待つ間、偶然にもフィリッピンに旅行に行った方からお土産で奇遇にもご当地産のドライマンゴーをいただくということがあった。
それで昨日わが家には三種類の産地が異なるドライマンゴーが揃い、食べ比べるということをやってみた。

左からカンボジア産、フィリッピン産、タイ産


一つは家にあったカンボジア産、一つは頂き物のフィリッピン産、最後は中国から届いたばかりのタイ産だ。
それぞれ乾燥度合いが違うので物性も異なり、カンボジア産がしっかり乾燥されているのに対しフィリッピン産とタイ産は半生タイプだ。
またタイ産のものはでかいマンゴーを3枚に下ろしたそのままを干したらしく、1片の大きさがかなりでかい。
そのまま食べるなら半生の方が食べやすいが、肝心のヨーグルトにつけた時にどうなるかが焦点だ。
それぞれを無糖ヨーグルトに漬けて4時間ぐらい放置、戻し時間が短かったのかまだちょっと硬い部分が残っていたが、薄い部分はほぼマンゴーに戻っていて、これはうまい、どれもうまい。
比較するとこれはこれに対してどうだという見方になってしまうが、これを単独で食べるなら皆文句なくうまい。

一片がすごく大きいタイ産ドライマンゴー
それぞれをヨーグルトに漬けて戻してみる
ヨーグルトはしっかり濃く、マンゴーはしっかりしっとり


さて気になるお値段だが、今回中国から入れたタイ産のものは東京から買っているものの1/5くらい、奥様はフェアトレードができていないんじゃないかというが、原材料がめちゃくちゃに安価で供給される産地から中間マージンや流通コストを引いたら案外こんなもんじゃないかとも思う。
確かに中国は毛沢東時代国家による農産品一時買い上げ価格を不当に低く設定し、逆に農村に販売する工業製品の価格を釣り上げることによって発生する価格差を国家の主要な収入源、共産党と人民公社による農民への搾取と収奪といってもよろしい、まあそういうことをやってきた国ではあるが、現代中国はある意味世界で最も資本主義な国と言ってもいいので、多分そんなことはなかろう。
そんなわけでこのドライマンゴーはこれから個人輸入する定番に加えてみようと思う。

CF価格(うちに届くまでの値段)ですでにハチャメチャに安いのだが、よく考えたらこいつはタイ産だ。
タイってどんだけマンゴーが安いんだろう、きっと時期になるとマンゴーの雨が降ってマンゴーの河ができるに違いない。

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