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『彼女と彼女の猫』感想


前々から気になっていた作品の感想です。以前の本の感想と同様に、大学の講義で出した原稿に少し加筆修正をしたものとなります。

今回私が見た作品は、『彼女と彼女の猫』という作品です。
『君の名は。』や『秒速5センチメートル』などで知られる新海誠監督の自主制作アニメのひとつで、現在は彼のYouTubeチャンネルで無料で視聴することができます。たった五分の作品でさくっと見れるので、忙しい方にもオススメです。

おおまかな内容としては、「猫」である主人公が、一人暮らしの女性である「彼女」に拾われ、そこでの生活を淡々と語る、というものでストーリーらしいストーリーはありません。特に何か大きな事件が起こるわけでもないし、「猫」自身も特段アクションを起こすわけでもなく、徹頭徹尾彼女の生活に対しては不介入を貫いています。そもそも猫一匹で何をしろって話なんですが。
どこにでもあるような日常をただ「猫」目線で見るだけという作品。ワクワクしたかと言われたら、正直全くしなかったです。が、「猫」のポエミーな語り(CVはなんと新海監督本人)と、こだわった作中の背景や環境音が独特の世界観を醸し出していて、いつの間にか私はその世界観に惹かれていました。
恥ずかしながら私は新海監督の作品を一つも通しで見たことが無い人間なのでもし間違ってたら申し訳ないですが、雨の使い方はまさに「新海誠イズム」がにじみ出ていました。どっかで見たことある気がしたもん。真面目に聞いてると「イタタタタタ」となるポエミーな語りも、若き日の新海監督のウブな声と相まって不思議なテイストに仕上がっていて、なんとなく彼らしいなあと思ってしまいました。白黒なのも、時間が無かったのか元々そういう狙いだったのか知りませんが味が出ていて個人的には好きでした。フルカラーだったらまた評価も違ってたのかな。

ちなみにこの作品、「たぶん彼女は、この世界のことを好きなんだと思う」というよく分からないセリフで終わりますが、これは「こういう不完全だけど普通な世界も愛していこうぜ」という当時の新海監督なりのメッセージなのかなと私は感じ取りました。この作品の制作年は1999年で、「90年代でこのクオリティ!」という感想もありますが、99年といえば“かの”「ノストラダムスの大予言」の年。この年の前後は所謂終末ブームが至る所で広がっていました(私は生まれてませんでしたがそうだったらしいです)。そんな世界の中、新海監督はあえて普通の日常を描いて改めてこの世界本来の美しさ、素晴らしさを認識させたかったのかなと思いました。知らんけど。(ちなみに終末ブームの影響をもろに受けたであろう、終末思想のゴリゴリに入ったエロゲ―『終ノ空』は同年1999年8月に発売されました)



以上、『彼女と彼女の猫』の感想でした。1日1noteを習慣にし始めましたが、日に日にネタ切れを感じて段々と文章が雑になってきている気がする。感受性を豊かにして生きていきます。

最後までご覧いただきありがとうございました。


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