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きみえの読書 #10

「マチネの終わりに」 平野啓一郎
#読書感想文
#きみえの読書

・私は小さい頃から夢がなかった。
将来何になりたいか聞かれるととても困った。
私の今までの生き方は 目の前のことをし続けた結果。
夢を見据えてそれに自分を近づけるという生き方ではなく、私は運命に導かれるようにして生きている。

ここ最近時間軸について考えることが多い。
この本でもそこがまず自分のアンテナに引っかかる。

本の引用。
「一体、何が今日"昨日でも明日でもなく"お前をこの場所まで連れてきた?何がお前をここに存在させている?」

わたしは今ここに生きている。
それは自分で選んできた結果。

わたしは子どもの頃、未来の自分からのメッセージを受け取っていたようだ。
今辛くても絶対抜け出せる、大丈夫!という根拠のない自信があって、だからここまで生きてこれた。
幸せに生きている今の自分が 小さい時の自分に「大丈夫だよ、わたしが今感じている幸せはこんな感じだよ」と、メッセージを送ったからだと思う。
それを小さい時の自分はちゃんと受け取っていた。
あったかくて胸に広がる安心感をしっかり感じていた。

意識は時空を超える。

・また、映画でも印象的だった未来が過去を変えるという話。
この本に出てくる男女は 瞬時に恋に落ち、しかし結ばれることなく それぞれの人生を歩む。
愛しているが故に離れることを選ぶ。
(主人公洋子もそうであるが、両親までもそのような経緯を経ている。)

なぜそれを選んだのかを答えあわせのように後から知り、涙を流す。
(その過去に対するマイナスのイメージは心の持ち方で変わる。)
両親の別れた理由の真相を知り、自分を捨てたひどい父親だと思っていたが、それは愛しているが故の決断だったことを知る。
その瞬間に 過去は書き換えられ そこに愛が宿る。
過去は変わる。
こうも言える。
過去は変えられる。

・ラブストーリーとしては、少々切ない。
しかしとても美しい。
また、余韻がすごい。
(これは割愛)

・本では 主人公 蒔野の復帰リサイタルの最終地が郡山であったことや、
磐梯熱海温泉での印象的なやり取りがあり、地元だから嬉しかった。

この本、そして映画はただのラブストーリーとしてだけで感じるのはもったいない!
たくさんたくさん刺さるところがある深いお話でした。

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