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世界の農業2 三大穀物

今回は、我々の命の糧である主要な穀物が世界のどこで作られ、どのように取引されているかを見ていきたいと思います。

三大穀物の生産量と輸出割合

世界の三大穀物である、小麦、米、トウモロコシの生産量と輸出量を見ていきましょう。

小麦

まずは小麦からです。
中国、インドで世界の3分の1の生産量を占めています。

2019年

一方で輸出はどうでしょうか。このデータは、こちらからもらいました。

生産量の割に、中国とインドは輸出量ではそれほど目立っていません。
両国は抱える人口が多いため、ほとんどが国内消費に回っており、輸出は盛んではないようです。
一方で、アメリカ、カナダ、オーストラリアの存在が際立っています。これは企業的農業として大規模に耕作されているためです。そしてロシアも小麦の大輸出国です。農業大国のブラジルですが、南部の一部しか小麦に適した土地がないため、生産量が少ないのも覚えておくとよいでしょう。このため小麦のほとんどをとなりのアルゼンチンから輸入しています。

小麦の産地と言えばステップ気候、土壌は半乾燥の黒土です。ロシア・ウクライナに広がるチェルノーゼム、アメリカ・カナダのプレーリー土、アルゼンチンのパンパ土が有名です。
中途半端に雨が降り、暑すぎず寒すぎない気候なので草原の草が中途半端に腐っているため肥沃な土地になります。雨が多すぎると養分が流れ出してしまいますし、少なすぎると草が生えなくて砂漠になってしまいます。また気温が高すぎると微生物による分解が速すぎて無機質になってしまいますし低すぎると分解が進みません。この3ヵ所は降水量も気温もともに中途半端ないい場所なのです。
小麦は栄養分がたっぷり必要な甘えん坊なので、肥沃な土地があることは必須条件となります。

https://www.kaku-ichi.co.jp/media/tips/column/chernozemより引用

企業的農業として、アメリカのセンターピボット方式の灌漑農業も地理Bでは押さえておきたい用語です。

Google mapでこの辺を拡大してみると・・・

Google map

なにやら不思議な丸があります。ミステリーサークルでしょうか。

Google map

もっと拡大すると・・・

Google map

Google mapで簡単に探せるほどの巨大な農場です。ロッキー山脈の雪解け水から来る地下水をくみ上げ、長さが400メートルほどの巨大なアームに付けられたスプリンクラーを用いて円形に水をまきます。このあたりは年間降水量が500㎜ぐらいですが、この方式によって大規模な農場が成り立っています。

しかしこの方式では年間降水量の3倍近くもの地下水を使ってしまうため、近年、水位の低下が顕著となっています。さらに、乾燥地帯に大量の水を撒くと、毛細管現象で塩類が地表面に濃縮される塩害が発生することなどもあり、センターピボット方式は廃止する動きが見られてきています。

日本人の主食である米の生産量はどうでしょうか。
ここでも中国、インドの生産量が際立っています。世界の生産量の約3分の2弱を占めています。その他では東南アジアが約3分の1ですね。米と言えばタイのイメージがあったのですが、生産量で行くとベトナムの次で世界6位でした。

輸出量のトップはインドです。国内人口をまかなっても有り余る生産量なのですね。輸出量でいくと、タイやベトナムも上位に浮上します。小麦は広大な土地で企業的農業、いわゆる粗放的農業をしていましたが、米の場合は労働集約型農業です。人手をかけて作っています。

アメリカの米作は例外で、やはり機械を使った大規模農業です。飛行機で種もみをまき、大型コンバインで収穫します。米は国内消費ではなく輸出用に耕作されています。

米は高温湿潤な気候で作られるためヨーロッパやアフリカなどではほとんど作られていません。そして、米作地域は仏教地域と重なります。お坊さんが托鉢でお米をもらうイメージです。

とうもろこし

とうもろこしは、食用以外にも、飼料、バイオエタノール原料などの用途としても多く使われています。
アメリカが生産量1位です。先ほどのセンターピボットなどで大規模に作られている様子が目に浮かびます。

輸出量もアメリカが1位です。ブラジルやアルゼンチン、ウクライナも高いですね。

牛は本来は牧草を食べる動物ですが、アメリカなどで行われている企業的牧畜では、とうもろこしを飼料として与えています。これはとうもろこしが安いということと、とうもろこしで育てた方が短期間で太らせることができるからです。畜産の話は、また別の回で取り上げます。

ブラジルのとうもろこし生産は年々増えています。ブラジルでも牛の飼料にとうもろこしを使うことが増えてきているため牧草地をとうもろこし畑に転作する動きが多く見られます。

また、近年はさとうきびとともに、とうもろこしはバイオエタノールの原料としての利用が伸びています。
米国とブラジルの2国で世界全体のバイオエタノールの生産量の75%を占めるほどです。

まとめ

三大穀物の栽培限界は寒い方から、小麦>とうもろこし>米 です。生産量の多い国もこの分布にしたがっています。

農業形態を大きく分けると、小麦ととうもろこしは粗放的農業で行われ、輸出を目的としています。商品作物ですね。一方で米は集約的農業で行われ、自給的に消費されています(例外はアメリカ)。米作地域が多い東・東南アジアは人口も多いことも特徴です。

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