擬音、漏れ出る。
ベランダでタバコを吸おうとして
引き戸を開ける "ガラガラ"
友人に悪戯をするとき
近づく際の "コソコソ"
驚く出来事が起きたときの "ガビーン"
わたくしごとなのだが、
これらの擬音は時折
自分の口から漏れ出ることがある。
そこでふと疑問に思う。
なぜ口から漏れ出るのだろう。
大前提として特に意味はない。
しかし生きる意味を探すように、
行動に意味を見出すように。
人類は今まで色々なものに対して
意味づけをしたり探究したりしてきた。
知りたい。
なぜ擬音が口から漏れ出るのか。
その意味を。
このような考えに至り
この『漏れ出る擬音』の真相を確かめてみた。
シーン1:戸を開けるときの "ガラガラ"
前提:実際の音である "グルロロロロロ" が虚しく響き、情景としてなんだか暗い。
意味づけしてみた:"ガラガラ" と自らの声で発することにより、戸を開ける音がファンシーになる。さらにはタバコを吸いに行くという多少後ろめたい気持ちが緩和される。
シーン2:近づく際の "コソコソ"
前提:人に無音で近づくと、第三者から見て不気味である。
意味づけしてみた:直感的に第三者に対して、「僕はこれからイタズラをしますよ」という意思表示。さらにはバレないようにしているのだと伝えることも可能になる。
このようにしっかりと
意味を見出すことができた。
意味を見出すことはなんでも楽しい。
僕自身まだまだ勉強中ながらも、
デザイナーとして仕事をしているため、
意味を見出すシーンがそこそこにある。
しかし時にはそれに疲れ、
無意味なことを
めちゃくちゃやりたい衝動に駆られる。
無意味なことをやって疲れを発散する。
ともするともしかしたら、
『漏れ出る擬音』とは
疲れを発散するために湧き上がる
『無意味やりたい衝動』 の
一つなのかもしれない……
……………………ピキーン
ここで悪寒が走る。
もとより『漏れ出る擬音』には、
無意味であるがゆえの
『発散』としての意味が
あったのではないだろうか。
先ほどの意味づけにより
僕の『漏れ出る擬音』は
意味のあるものへと変貌した。
つまりは、無意味ではなくなった。
ここにきて意味が渋滞を起こしてしまう。
結論:無意味それ自体にも意味はあった。
なんだか素敵な結論に至った。
しかし先の意味づけにより、
僕の『漏れ出る擬音』が持つ
無意味という意味がなくなってしまった。
ガビーン
今まで無意識のうちに僕を支えてくれた
『漏れ出る擬音』は、与えた意味によって
そうではなくなってしまった。
とても、とても大切なものを
なくしてしまったような気がする。
このようにして
無意味なことの大切さを
図らずも知ってしまったが、
こんなことを書きながらも、
きっと明日には既に忘れているだろう。
そもそも無理やり付けた意味である。
無意味の意味だなんてただの言葉遊び。
漏れ出る擬音も無意識で出てしまう、
いわば鳴き声のようなものだから。
ということで、
あいも変わらず僕の口からは擬音が漏れ出る。
なぜかと聞かれても、意味はない。
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