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戦略的思考トレーニング(筋骨格系)病歴聴取を中心に


症例 ;頚部痛
情報
30歳、外肺葉型男性(コンピューターエンジニア)が右頚部痛を訴えて来院した。この痛みは2週間前、特に思い当たることなく徐々に悪化している気がしている。右頚部から右肩甲骨付近に鈍い痛みを感じる。ときどき不意の動作で右腕に鋭い痛みを感じることもある。
5年前交通事故。この時にも頚部痛と頭痛があり、大学病院で検査を受けたが、MRIやレントゲンでは異常所見は見られなかったので、鎮痛剤が処方され、それを服用し1か月ほどでその症状はほとんどなくなった。しかしそれ以来首と肩が凝りやすく、すっきりとした気分になることはほとんどなかった。鍼やマッサージなどの治療を受けたことは何度かあるが治療後は楽になるが、またすぐもとの状態に戻る。それ以外特筆すべき既往歴、家族歴はない。

診断について
【仮説診断】と【確定診断】がある。
仮説診断は可能性の高い病名を少なくとも20は想起できるようにトレーニングする。
仮説診断の段階では、病歴聴取など患者の話す主観的な情報が主で、確定診断に至るには客観的なさまざまなテストを経る。

病歴聴取には聞き手になり、患者に自由に話させるオープンエンドクエスチョンとピンポイントで重要な質問をするクローズドエンドクエスチョンがある。
オープンからクローズが基本
病歴聴取で外せない項目は「OPQRST」で覚える。
Onset・・・発症
Provocate/Palliative・・・軽減/増悪因子
Quality・・・痛みの質
Rdiation・・・痛みの拡がり
Site・・・症状の場所
Timing・・・いつ痛む?持続時間は?朝?晩?


患者の訴える痛みの場所
「ここ」;通常指一本で示せる痛みは浅層の組織
「このあたり」;やや深い(筋、靭帯)
「このあたりから~」;神経支配領域

いつから?
徐々に・・・これは変性パターンの可能性
急に・・・これは外傷や循環障害

どのような痛み?
限局性で鋭い痛み・・・浅層での障害の特徴
鋭く刺すような痛み・・・神経障害の特徴、Aδ線維
ちくちく刺すような・・・神経組織 Aα線維
鈍く疼くような・・・深層の器官、筋・靭帯・内臓などの特徴
激痛、耐え難い、深く刺しこむ、弱まらない・・・慎重な判断必要、他科へ紹介

痛みの増悪・軽減要因
動くと痛い、休むと楽・・・特定の動きで痛み、休むと楽なのは筋骨格系の問題の可能性
朝は?・・・痛みあり=関節炎の特徴 こわばる=退行変性の特徴
夜は?・・・夜間痛=ガン性疼痛、五十肩などの特徴

過去に同じような経験があれば
どのように改善したのか?
どんな治療をしたのか?
今回と同じようなのか?
→ 診断や治療の参考となる

付随した他の症状
関節を動かすと音がする?・・・変性?変形?部分断裂?
膝崩れ・・・靭帯損傷?半月板損傷?
力が入らない・・・筋断裂?抹消神経障害?
めまい・吐き気・・・中枢神経疾患?循環器の問題は?

RED FLAG SIGN→専門の他科へ紹介すべき症状
〈悪性腫瘍〉を疑うべきサイン
持続性の夜間痛、身体のあらゆる部位に起こる疼痛、予期しない体重減少(7kg within 2weeks)、食欲減退、心当たりのない腫れものあるいは新生物、理由のない疲労

〈循環器系疾患〉を疑うべきサイン
動悸・息切れ、めまい、胸部痛・胸が重苦しい、身体のあらゆる場所に感じる拍動痛、下肢あるいは上肢の持続した強い疼痛、足の変色あるいは疼痛(著しく白い)、浮腫(外傷歴なし)

〈消化器・泌尿器・生殖器〉を疑うべきサイン
頻繁なあるいは強い腹痛、頻繁に起こる胸やけあるいは消化不良、頻繁に起こる吐き気あるいは嘔吐、膀胱機能の変化あるいは障害、通常でない生理不順

〈神経系〉を疑うべきサイン
聴覚変化、頻繁に起こるあるいは強い頭痛(40歳以上で外傷歴なし可能性アップ)、嚥下障害あるいは発声障害、視覚変化、平衡感覚あるいは協調運動障害、失神

〈その他〉
発熱、妊娠特に初期、最近起こった情緒障害、関節の腫脹あるいは発赤(外傷歴なし)


可動域
自動で可動域検査 
痛みはあるか?
主動筋の損傷のせいで痛むのか、拮抗筋が伸張されて痛いのか?
可動域を計測し数字をもとに評価すること
軋轢音があれば関節面の状態はどうなのか?ひっかかりはないのか?筋の断裂などはないか?
他動での可動域検査
正常な可動域が維持されているか?可動域減少しているか?可動域が過剰か?
エンドフィールは?
痛みは?
関節包パターンか?非関節包パターンか?
関節包に問題があれば特定のポジションで痛みが誘発される
関節包パターン
例)
肩甲上腕関節・・・外旋・外転・内旋
股関節・・・屈曲・外転・内旋(しかし,ときには内旋がもっとも制限をきたす)

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