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統合報告の未来に向けて、2024年から2026年に取り組むこと

この「IFRS財団と統合報告」の続きです。

経済産業省が2つの懇談会を開催している。

■持続的な企業価値向上に関する懇談会
https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/improving_corporate_value/index.html
(座長 伊藤 邦雄 一橋大学 CFO 教育研究センター長)

■企業情報開示のあり方に関する懇談会
https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/corporate_information/index.html (座長 北川 哲雄 青山学院大学 名誉教授 ・ 東京都立大学 特任教授)

IFRS財団は2年間<IR>フレームワークに変化がない見込みで、懇談会事務局資料で問題提起されている企業報告の一体化も短期で実現する主題ではないから、それぞれの長期ビジョンを参酌しつつ、当面、2024年から2026年ぐらいまでに、統合報告に関して取り組めることを整理した。

第1 統合報告の価値を高める5つの取り組み

■取り組み1 未来を2つに区分し、開示の解像度を高める


 短期から中期は、キャッシュフロー生成能力を開示する。
 中期から長期は、企業価値を中長期に高める価値創造ストーリーを開示する。

 短期から中期は、未来のPLを予測する期間で、キャッシュフロー生成能力について、6資本の定量的な結合性を中核とした説明で開示する。
 中期から長期は、未来のBSを予測する期間で、中長期の価値創造ストーリーを実現する価値創造能力を6資本の定性的な結合性を中核とした説明で開示する。

■取り組み2 短期・中期は、財務マテリアリティを深める

 統合報告書の中で、短期・中期の財務情報との結びつきを説明する際に、マネジメントコメンタリー等を積極的に活用し、新たなIFRS18に対応させていく

 経営者による説明(Management Commentary)
 経営成績及び キャッシュ・フローの状況の分析(MD&A)
 財務基準ごとの財務マテリアリティ、特に、IFRS18

■取り組み3 中期・長期は、長期アクティブ投資家が企業価値を評価できるように統合思考での重厚な情報を開示する

 中期・長期は、長期アクティブ投資家、アナリスト、NPOと対話できる情報開示を目指す。
 長期的な価値創造能力、未来の企業価値とその要素(6資本の結合性)、インパクト・マテリアリティを含めたサステナビリティを統合性良く開示する。

 長期的な目標やビジョン、その未来に向けた価値創造ストーリーや裏付けとなる価値創造能力(6資本の結合性)を、社会・環境へのインパクトも視野に、統合思考で報告する(価値創造マテリアリティ)。
 この価値創造マテリアリティのもとで、用語を整理する。

 具体的には、6資本の用語や概念を、財務会計の概念フレームワークと定義と整合させていく。

■取り組み4:統合思考の浸透度を測るKPIを設定し、組織文化の変革を促す。

 部門間の結合性: KPI 1 部門を超えた価値創造への貢献、開示やIRへの他部門からの協力
 6資本間の結合性: KPI 2 不確実性の減少(見積から乖離しない)、読み手の納得度
 企業文化: KPI 3 顧客対応など業務のスピード、部門協力の財務成果

■取り組み5:<IR>フレームワーク、IFRS S1とS2の適用事例から見えてくるギャップを特定し、統合報告の未来像を描く。

 <IR>フレームワーク等をComply or Explainの対象とし、意図的に準拠しない項目についてExplainしていく。
 日本国内の取り組みとして、準拠しない場合に説明して欲しい項目を整理してもよい。

第2 具体的に企業は何をすれば良いのか

a 長期的な目標と長期的なビジョンを定める。このとき、インパクトマテリアリティも視野に入れて検討する。経営デザインシートで描けると良い。

b 短期・中期の財務マテリアリティとして、主にキャッシュフローを生み出す能力に関して6資本の結合性を中核として説明する。このとき、経営者による説明の指針を活用し、経営デザインシートによる分析結果を用いる。

c 中期・長期の企業価値向上に向けて、統合思考が自社グループへ浸透する進捗と、経営デザインシートで描いた価値創造ストーリーが実現する進捗の両方を示す3つ程度のKPIsを定め、時系列で確認する。IFRS18のMPMsとしても良い。

d 統合報告の制作と発行を、自社グループ内に統合思考を浸透させるプロセスの重要な一部と位置づける。<IR>フレームワーク、IFRS S1、S2等の指針通りにしない部分については、自社のマテリアリティや長期ビジョンに沿って説明できるようにしていき、説明できない場合マテリアリティを見直す。

e 投資家、特に、長期アクティブな運用をする投資家との直接的、または仮想的な対話を継続する。IR部門、IR部門に協力する他部門、社外取締役、CFO、CEOなどが統合的に対話していく。


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