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COCOAの接触時間が長い理由と、COCOAログチェッカー件数の意味

1. 2022年8月、COCOAについてお伝えしたいこと

2022年8月、COCOA 2.0.1に関して、お伝えしたいことが3つあります。

(1.1) COCOAが通知する接触時間

 COCOAで接触が通知された際に通知される接触時間(○○分間の接触)は、2m以上の距離で、(複数の)陽性登録者さんとすれ違った時間が含まれます。1m以内と想定される距離内の時間だけではありません。

 2m以上のすれ違いは「感染のリスクが低い」とする多くの人たちの考えを参照するならば、COCOAが通知する接触時間には、感染リスクの低い接触の時間が含まれています。

 「陽性者さんとのすれ違いがあった」ことは事実です。長時間の接触時間の通知に過剰に驚かず、接触した日からの経過日数に応じて、ご自身が今後発症するリスクと、他者に感染させてしまうリスクを評価してください。
 COCOA 2.0.1が表示する接触時間が長い方が、感染するリスクが高いということではありません。

(1.2) COCOAログチェッカー2.0 (β)の推奨

 COCOAで接触が通知されても、されなくても、COCOAログチェッカー2.0(β)の使用を推奨します。
 私は、COCOAログチェッカー以外のログ解析ツールやサイトの利用は推奨しません。
 COCOAログチェッカーは、河原圭佑さんが開発・運営するサイトで、厚生労働省のWebサイトでも紹介されています。

  COCOAの「情報を保存」から記録したexposure_data.jsonというファイルの内容を、COCOAログチェッカーで確認すると、1m以内で15分以上というCOCOAの接触の条件を満たさない「広範な接触」の情報を得ることができます。

 得られる情報は、その接触のあった日付と、件数です。

 日付は、午前9時スタートで、午前8時の接触であれば、表示される日付の前の日です。これは、COCOAの元となる仕組みが世界で共通の時間で接触の判定をするためで、日本は時差によって9時スタートになります。時刻を知らせず、日単位にすることは、GoogleとAppleがこの仕組みを提供した当初からの要件です。

 自分が感染するリスクと、他者に感染させるリスクは、接触日の過ごし方と、接触日からの経過日数で判断していけるので、接触日を知ることは自分やご自身の大切な人にとって重要です。
 感染リスクの高い接触日の過ごし方としては、例えば、会食の有無、滞在場所の換気の程度、陽性者さんが集まりやすい場所にいたかか、などでしょうか。

(1.3) COCOAログチェッカーの件数の意味

 そして、COCOAログチェッカー2.0(β)は、接触日ごとの件数が表示されます。

 件数は、すれ違った陽性登録者さん1名につき、数十秒から約30分の接触で1件です。距離は関係しません。短距離から数m、10m以上の遠距離もありえます。

 1名と20分接触すると、1件です。
 1名と50分接触すると、2件です。
 2名と20分ずつ接触すると、2件です。
 1名と24時間接触すると、1日は1440分なので、1440÷30=48件です。

 1日に24件であれば、30分以内の接触を24名かもしれませんし、1名と12時間弱の接触かも知れませんし、3時間ずつ4名かもしれません。
 その日、3時間程度の公演に参加していれば、4名だった可能性があります。

 同居の1名が陽性登録すると、1日に48件が最大で、その日に49件あれば、同居の方以外との接触も記録されたことになります。

 連泊で数日、1日に12時間並列で何か開催されるようなイベントに参加して、1日に180件ですと、6時間(12件分)似た行動をしたした人がいて、陽性登録者さんが15名の計算になります。3時間行動に共にしたなら30名。
 テントやホテルの近隣で、12時間程度近くにいると、8名程度で180件を超えます。
 屋外で電波が遮断されないと、より遠距離に電波が届き、件数が増加する可能性があります。

 COCOA 2.0.1になる前の「一致したキーの数」のキーは、おそらくは、すれ違った登録陽性者さんの数でした。
 しかし、COCOA 2.0.1以後にCOCOAログチェッカーでわかる件数は、人数なのか、時間なのかが、分からないようになっています。
 陽性登録者さんのプライバシーを保護することで、この接触通知の仕組みの利用者を増やそうという考えによります。犯人捜しのためのシステムではなく、ご自身の感染リスクや感染させるリスクを評価していただくためのものです。

2. COCOAが通知する接触時間が長い理由

 COCOA 2.0.1 が通知する接触時間には、2mを超えるようなすれ違いの接触時間も加算されており、1m以内の接触時間だけではありません。

 これは、日本のCOCOAの開発主体がそう決めて、パラメーターを設定したため、そうなっております。
 厚生労働省のQ&A でも「1日分の接触として表示される時間は、概ね1メートル以内で接触したと判定された日に接触していたすべての陽性者との合計時間となります。」と説明されています。
 まず、1メートル以内で一定時間以上、接触があったという条件を満たすと、接触が通知されます。そして、表示する接触時間は、その「日に接触していたすべての陽性者」との合計となっています。「すべての」には、1メートル以上の距離で接触した陽性登録者さんとの接触時間も含みます。

 普通に受け止めると、または、法律の条文の解釈をするような読み方であれば、1m以内で15分以上の接触の際に通知するのですから、表示される接触時間は、概ね1m以内と評価できる確率が高い時間を合計すると解釈します。しかし、COCOA 2.0.1では、2m以上の距離があった確率が高い接触時間も合算して表示されています。

 ある接触日について、通知された日や、次の日などに、接触時間が増加することがあります。これは、陽性登録した別の人と、同じ接触日に接触していたことが、次々と判明している状態です。
 接触日が同じでも、陽性登録者さんが発症し、検査をして陽性登録するのは違う日になることも多く、毎日のように接触時間が増加する可能性があります。バグではありません。ただ、増加していく時間分は、遠距離での接触であった可能性が高いです。

(2.1) exposure_data.json の解析結果

 COCOA 2.xへの開発では、GitHubで対話してくださった方々や、要件を定めていった方々、テストコードをつくりテストしてくださった方々など多くのエンジニアや感染症の専門家が関与してくださったと想定しており、当初の不安定な部分がなくなり、強靱で検証可能な開発がなされており、感謝しております。

 また、rocaz さんのproveCOCOATEK を使いながら、私が運営している接触日シート別冊でアンケートを実施したところ、多くの方からコメントをいただき、大変に有用な知見があつまり、また励まされ、感謝しております。

 そして今回、COCOAで通知がでた方へ、exposure_data.json を送っていただけないかお声かけしたところ、想定外に多くの方からデータを送ってくださり、ありがとうございました。ご協力に深く感謝申し上げます。

 その分析結果の要約です。

(出典)鈴木健治 COCOA 2.0.1で通知された接触時間の電波強度区分(距離区分)の比率

このデータ、この一般公開に前後して、GitHubにもご報告をしていきます。
接触時間[分]は、COCOAに表示された接触時間で、exposure_data.jsonのSecondsSinceLastScanの数値を分単位で合計する数字と一致することを確認しました。
exposure_data.jsonには、この接触時間を特定して、TypicalAttenuationDbという電波の強さに関するデータが記録されています。単純に距離を特定できるものではありませんが、70dB以上(2m以上の確率が高く、かつ、距離を測定するには不安定で精度が低い)なのかどうかで区分して、COCOA 2.0.1で実際に表示された接触時間の比率を計算しました。

 17件中、15件はこの70dB以上の接触時間が50%以上でした。100分の接触であれば50分が2mを超えた距離の可能性が高い接触時間です。

 17件中、8件は、70dB以上の接触時間が90%以上でした。100分の接触であれば90分が2mを超えた距離の可能性が高い接触時間です。

 1m以内で15分以上の接触という条件を、満たしている確率が高いのかどうか疑問になりますが、備考にある「0.01の要素で接触判定」というのは、詳細のご説明はしませんが、このCOCOAの通知条件を満たさずに通知している確率も高そうだと、私は個人的に考えております。

 あいまいな部分のどこかで線引きをしなければならない仕組みなのですが、それにしても、という感想です。お伝えしたいのは、繰り返しですが、接触時間は長めに表示されるので、あまり気にせず、接触日の感染リスクと、接触日からの経過日数でリスク判定をして欲しい、ということです。

(2.2) COCOAと、COCOAログチェッカーの併用

 COCOA2.0.1は、接触時間を表示します。COCOAログチェッカー2.0(β)は、接触日ごとの件数を表示します。

 COCOAログチェッカーの件数は、接触した陽性登録者さんの人数である可能性があります。件数が10件であれば、1人から10人の可能性があります。

 COCOAで300分間の接触と表示されたら、COCOAログチェッカーの件数で割ってみます。すると、30分を10人の可能性があります。ここを出発点に、5人と60分、1人と200分ともう1人と100分など、接触日を振り返りながら、接触のパターンの可能性を想定できます。その想定から、ご自身が感染したリスクを評価することができます。

 繰り返しですが、犯人捜しのためでは無く、ご自身の感染リスクを評価する目的で、分析してください。

 ご自身が発症するならば、接触日から4日後ぐらいに50%、7日とか10日後に90% ぐらいの確率で発症するので、それらの日が経過して発症していなければ、その接触は忘れて良いかと思います。

 ご自身が他者に感染させてしまう可能性ですが、ご自身の発症の2日前や4日前にも感染させる可能性があるので、通知された際には、その時点で他者に感染させる可能性があります。ご自身が他者に感染させる可能性(確率)が接触日からどう変化するかは、ご自身の症状の有無等で異なります。

 陽性者さんの退院基準や、ご自宅療養者さんの療養解除(療養終了)の基準などを検索して、参考にできるかもしれません。退院基準の日数を経過していれば、発症していない方は、より一層自由に社会活動を営んでいただけます。

 PCR検査で陽性となるかどうかも、接触日当日や1日後などは感染していても陽性とならない可能性もあるようで、複雑です。

 入手できる情報を賢く利用し、生きのびてください。


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