クワシイ(Pさん)

 伊福部崇と鷲崎健という、アニメ業界で活躍している二名が、もう二十年近く前になるんだろうけれどもユニットを組んで、「ポアロ」という活動をやっている。
 ポアロが何をしているのか。一言には言いづらい。歌を制作し、五年前までくらい、毎週ラジオを二時間、インターネットで配信していた。
 このラジオに、僕はいたく影響されて、自分らでもやろうかと思ったんだけれども、メチャクチャ面白い。「ヘミッシロボ ボケミハチマチ」、「舘ひろしの「泣かないで」の歌詞をより悲しくする」などといったコーナーは、まだどこかで見られると思うので、検索してみて下さい。
 そのラジオは、いわばユニットの宣伝みたいな立ち位置でやっているのだが、ほとんどラジオが主体になっていた。しかし、ラジオ内で曲が何度も流れるので、曲も気に入るようになった。
 その曲の一つで、「クワシイ」というのがある。
 ポアロの曲は、いわば、オタク関連ソング、ドラえもんやエヴァ、マリオのシチュエーションをほのめかした二次創作的な歌があり、それからコミケからの帰りの風景や、鬱々とした引きこもり生活の描写の入った、オタクあるあるのような内容の歌があり、「クワシイ」は後者に入る。
 これは、「それ俺の方が詳しいぜ」皆が騒ぎ始める前から知っていたぜ、でも何にも言わずに傍観してるだけさ俺は、みたいな、知識量を誇るようなオタクにありがちなことを言っている、まあたわいもないといえばたわいもない曲なんだけれども、自分が知識を増やそうとやっきになっているときなんかに、「自慢するためだけの知識は不毛だ」とか、ひけらかすことに対する自戒みたいな気分になるときに、この歌がつい過る。
 しかし、知識をつけるということが、おのずから他人の視線を意識することも含んでいるということは、なかなか根深かったりもするので、そう戯画化だけしているわけにもいかず、複雑である。

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