砂漠(Pさん)

 催眠に掛かったように、睨まれたトカゲは動くことがなかった。骨格が、遠くから見ても既に保存されているかのようにはっきりと、陰影がついており、夕陽が激しく照りつけていた。それだけで、周りを砂漠にしてしまうようだった。見ていると、やはり、身動きが取れないようだった。余所にいる誰かが板の上で、サイコロを振り賭博を行っている気配があった。ピッキングをするような悪い奴ではない。あっという間に日が暮れた。紫の液体に浸かっていくかのようだった。時間を感じられないからこそ、特大の時計盤の上を、互いに、ゆっくりと回転しているようだった。星座もめまぐるしく巡る。風と砂によって、賭博者の真鍮で出来た骨が腐食する。物体が目減りし、輪郭が消え去り、最後に名前が消えた。季節が変わる度に、色が塗り替えられるようだった。トカゲは、ここまでしてやっとわかる速度で、動いていたのだ。しかも、ものすごい力で睨みつけられていたのはこちらだった。何も見ていないかのようだった。
 書かれたものが、じきに現象するのも、そういったスピードでのことだった。私達はまだ砂漠に埋まっている。

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