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2020葛の繊維取り

2018年〜2020年、葛採り&洗いの様子を割と毎日リアルタイムでtwitterに上げていた。良い記録になると思っていたが、年月が経つと過去の投稿を辿ろうと思ってもうまく検索できないことがわかった。そこでこちらに転載した。今回は2020年。

この後は、「葛布の帯online」というオンラインのプライベートグループを作り、参加者の方々と時間空間を超えて一緒に葛採りをしているので、そちらに様子をシェアしている。

2018、2019はこちら

6月

6.7
葛偵察
左 緑色の蔓 右 茶色の蔓
葛はまだ30〜40センチしか伸びていなかった 毎年だいたい12日前後に葛採り始めるが今年はまだのよう あと数日でどのくらい伸びるだろうか
他の地域はもう充分に伸びているようなので
日本の南北の長さを感じます

6.11
葛の室(ムロ・発酵床)のための葦刈りに行こうとしたけど真っ暗 大雨が来そうなので止めて自宅で雨水タンク設置 雨水は採ってきた葛を乾燥させないよう漬けたり煮た葛を冷ましたりするのに使う たまに畑の水やりや洗車にも 土台とズレてるけど大丈夫か…?水平にするの大変なのでやり直ししない

6.12
本日葦取り始め 明日のためのムロ作り
札幌はススキがまだ小さいので葛採り始めのこの時期は葦を刈らせてもらう  枯れた穂が雪に埋まっても立っている 雪溶けの雪の重みって相当なのだけど 何故その影響を受けないのか毎年不思議 今年もどうぞよろしくと手を合わせる

2020.6.13 葛採り1回目
あまり伸びていないかと思ったが良く探せば結構長いのあって65本 
葛採り、洗いは2001年から始め今年で丸20年 全ての制作工程の中で最も熟練していると思います 諸々の判断が早く作業も早い かかる時間は以前の4分の1ほどになりました 我ながら驚く

2020.6.15 葛採り2回目
ちょっと細めだけど64本 
ここの葛は蔓が硬いけど繊維も強くて張りがある
同じ葛でも場所によって葛自体も繊維の状態も個性がある

晴れてるが風強い 天気はこれから下り坂 急いで帰る

毎年書いているけど葛採りの日は食卓のおかずが一品増える 天ぷらが美味しく毛の舌触りも気にならなくなるらしいが 私は天ぷらはしないので
刻んで少しの小麦粉に混ぜてカリカリお好み焼き風にして食べるのが好き

6.17
室の中チェック 室の中は発酵の熱で暖かく白いワタが出ていて良いが少し水分が多い感じでベストではない 明日が雨なので出来れば今日洗いに行きたい所 良さそうにも見えるがこの3日間の気温を考えると多分まだ少し早く 明日がベストタイミングだと思う 
困ったな 
といっても今日も小雨

2020.6.17葛採り3回目
朝のうち天気も私もグズっていたが晴れた 雨が降っていたので自宅付近で採取試みるも25本くらいしか取れず 結局少し離れた所へ
ここの葛の葉はまん丸

2020.6.18 葛洗い1回目 終日雨予報だったので迷ったが曇り時折小雨で気温はそれほど低くなかったので雨降ったらすぐ戻れるよう近所の川へ 
急いでいたので川の写真はナシ
ここの川は幅が狭くて流れが速いため「蓑虫法」で繊維を取り 乾燥して保管、天気の良い日にもう一度川に晒す

2020.6.19 小雨&曇り 葛採り4回目
昨日河原で採った葛と合わせて60本
太さや長さが違うが60本で繊維60g前後×2、3回で八寸帯一本分
60本は1日でできる洗い作業の私の限界量 これを一夏に20回弱繰り返すが季節的にそれが限界回数
以前そのことについて文章書いた

久しぶりの晴れ
2020.6.20 葛洗い2回目
出発時は小雨だったが良かった でも寒い ゴム手してても手がかじかむ こうして草むらで天日干しすると太陽の力はすごくてみるみる白くなる でもいつまでもここでボーッともしていられないのでサッサと帰って自宅の雑草だらけの庭で改めて干します 

6.20
上流のトンネル工事が一昨年終わって綺麗な川が戻ってきました 小魚も寄ってきます 葛の表皮を食べるのだそうです 魚にとって発酵食になるのかな? エゾハルゼミの鳴き声も

6.21
昨日葛洗いの後 葛採り5回目48本+本日13本くらい 計61本くらい 
葛蔓を水に沈め一晩保管し 翌日採ったものと合わせて煮沸、ムロ入れをする事を試みている 古い資料で、このようにすれば数日なら葛蔓を保管できると書いてあるが試した事がなかった これが上手くいけば採取が少し楽になる


6.22
葛洗い3回目 寒い!
あちこちで採った葛なので繊維の質も 硬い、柔らかい、裂けやすい、大変良い、など マチマチ 発酵条件は同じなので、
同じ区内でも場所によって繊維の質が違うということが改めて分かる

6.23
葛採り6回目 暑い!
今日は背丈ほども草の生茂った所で採取 蔓丸めたの見えますか こんな草むらでも 草に絡みつく蔓と 脇目もふらず地面を真っ直ぐ伸びる蔓とがある 太陽を浴び花を咲かす役と陣地を広げる役とで役割分担しているんじゃないかと思う 因みに繊維に適すのは真っ直ぐ伸びた方

6.24
葛洗い4回目 曇
一番蔓のこの時期は採りやすく繊維の質も良いので頑張って出来るだけ採り洗う でも10日間連続でチトお疲れ気味 しばらく川原でボーッとしてしまった 

今年は何故か通りがかりの皆さんがここにはカワセミがいると口々に教えてくれる でも私見たことがない 一度見てみたい

6.25
葛洗い5回目
明日から雨が続くようなので室入れから中3日で出し 洗いに行った 少し早いかと思ったがとても良い..のは煮沸前に一晩水漬け保管した蔓 採った当日煮沸室入れした蔓は やはり発酵足りずあと一日必要だった 煮沸前の水漬けは発酵を促すのかもしれない新発見 少し雨に当たった

6.27
葛採り7回目
自宅付近で15本 少し離れた所で55本くらい 全部で70本は調子に乗って少し採り過ぎた 洗いが大変だ
ここは私有地だけど地主さまに了解を得て採らせて頂いている 他の草丈がそう高くならず採りやすく とても有り難く感謝しています


6.28
昨晩雨が降ったが雨量はそう多くはなかったのでいつもの川へ行ったが見事に濁っていた ここはすぐ濁るので上流に何かあるのかなと地形図を見たら源流が思っていた場所と違ってビックリ 
こうなると繊維は晒せば晒すほど汚れてしまうので 表皮洗い、芯抜きだけして早々に撤退 葛洗い6回目

6.30
葛採り8回目 自宅の周りあちこちで採取 70本ほど ここ数年、良い状態の蔓を採る事に加え与えられた蔓を採りそれを丁寧に生かすというような方向にも気持ちがシフトしている 後で根こそぎ刈られてしまうような所のは細くても生きているうちに採ってあげて綺麗な布にしてあげるね みたいな

うちの周りの葛は繊維の質が良く 細くてもしっかりとした繊維が取れることが多い 太いのに比べ繊維の量は半分以下なので効率は悪いが 質重視で採取している
今日の採取場所のひとつには こんなお花畑も。見えないけど結構あって 嬉しくなって70本も採ってしまったというわけ

7月

2020.7.1 葛洗い7回目
明日は雨というので予定より1日早く室出し 一部発酵が不十分な所があったが概ね良し 蝦夷梅雨?雨ばかりで室(ムロ)の状態があまり良くない 草の室の手入れは糠床の手入れに似ていて良い状態を維持するのはなかなかコツが要る
写真撮り忘れたので近頃の天気の写真を

7.2
町内会の公園保全事業に参加 雨だから中止かと思って本気のレインウェア着て行かなかったら小一時間作業 水が浸み入ってちょっと濡れた 
自生の日本スズランと、オオウバユリの保全 公園といってもほぼ原生林 写真は先日撮ったものだがこんな感じ 札幌も少し端へ行くと自然が残る


7.3
葛採り9回目 連日の雨のお陰かしなやかな蔓が一気に伸び豊作 経験上、雨続きの最中に採った繊維は概ね脆い でも 雨続きの後の晴れに採った繊維は強く弾力がある ススキ採りも含め自宅から半径300m以内で完結 こういうのは気持ちが良い うちの周りの葛は元々質が良いので多分最高 70本

7.4
葛採り10回目 先日から新しい場所で採取 地主様に連絡を取ってお願いをしたら快くお返事いただけて感謝
今まで見たこともないくらい極太!
各方面、沢山の方々のご協力を得て制作できています 本当に有難いことです

7.5
天気が良いので川原も賑わうかと思い早朝から葛洗い8回目
いつもより多く70本強 長さもあったので時間がかかった 発酵が上手くいっていない箇所数カ所 蔓がやや硬くなりかけていたかもしれないし、ススキの厚みにムラがあったかもしれない
川の水は冷たく裸足で入ると数分で感覚がなくなる

7.6
本日は葛採り11回目 62本程
昨日の葛洗いの様子を撮ってもらった
謎のダンスつき
方法は完全に私流 鵜呑みにせず 手法を知りたい方は是非とも産地で学んでくださいね

7.8
昨日から手稲は大雨なんだけど 発酵のタイミング的にも明日以降の他のムロの発酵スケジュール的にも葛を今日絶対にムロから出して洗わないとならないので
どうにか良い方法はないかと昨日からずっと考えています

7.8-2
葛洗い9回目 なんと雨水を利用し自宅でやってみた
写真見苦しくすみません 川で晒すのには敵わないが 自分の命も葛の繊維も犠牲にする訳にはいかない 最後の仕上げ洗いだけ近所の川へ行った

意外と良いのではないかな

川に晒していないし太陽も浴びていないので今は白くないが あとは時間が解決してくれる 保管している間に 徐々に漂白されていき 光沢も増していきます 気のせい?でも感覚的には事実です

洗いが不十分な場合は天気の良い日に再び川に持って行き晒そうと思います

何事も「こうあらねば」から抜け出して チャレンジしてみるものだと思いました

7.9
濁っても川 やはり自宅でやるのとはスッキリ感が違う 繊維の質はまだ分からない 今後要検証
雨が上がったので川に来た 
葛洗い10回目 

真っ白いカビが発酵の状態が良い証 でも写真はイマイチ 多分雨続きだから もう少しホワホワとしたカビが極上
このカビが出ずドロドロになってしまった場合は残念ながら枯草菌ではなく何か他の菌が優勢になってしまった可能性大 枯草菌には海面活性作用があるらしい だから繊維が綺麗になるのだと思う

昨日の自宅での「葛のため洗い」についてブログにまとめました
「雨の日の葛洗い」

7.10
今日はススキの写真
草についている枯草菌 特に納豆菌らしい?の力を借りる ヨモギなど他の草にも菌はついているそうだが イネ科でないとドロドロに溶けてしまってムロの中の状態を良好に保てないので 混ぜないように注意する

葛採り12回目 66本 ススキは毎回新しいのを追加する 

7.11
いつもの川のちょっと下流に来ました
先日の雨でまだ少し濁っている
川の中で少しでも太陽が当たると繊維はみるみる白くなりふっくらとしてくるので 少しでも太陽に当ててやりたい
葛洗い11回目

7.13
葛採り13回目
少し前から二番蔓の時期になってきている 春に最初に出てくる一番蔓はもう硬く 仮に繊維を取ったとしても光沢がなく茶色くパリパリと硬い 二番蔓は少し細いのも多いがこの時期のは質も良い ただ 花芽や根も出てくるので 採る蔓を選ぶようになり 採取に少し時間がかかる

写真の虫は葛に必ずいる虫 とても小さいが羽根の模様に特徴があり 移動の仕方も独特で愉快 名前は知らない

7.15
今日は葛洗い12回目 今年初めて採取し始めたところの蔓、繊維
まだお互いにお互いのことを分かっていない感じで 出来栄えがマチマチ

今年はゲンノショウコの花が咲くのが昨年より2週間も遅い 染料のための採取を開花まで待っていたけど 何だか枯れてきたので慌てて採取 これ一個しか咲いていない 蕾はつけているようだ 

7.16
葛採り14回目 天気予報は晴れ曇りだったのに大雨に当たってしまった 油断して雨対策してなかったからびしょ濡れ 
しかし珍しい葛の葉をみつけた
五つ葉
ふつう葛は三つ葉
びっくり

7.18
葛洗い13回目 少し発酵し過ぎたか 洗いは楽だが繊維が弱い

以前は一本ずつバカ丁寧に洗ってひどく時間のかかる葛洗いだったが
川の流れと水面の水圧、葛同士の摩擦、そして時間を利用することを覚えてから作業時間が半分になった
なんでも一人でやろうとする、出来ると思うのは奢りなのだろうなぁ

7.19
葛採り15回目 61本
殆どの蔓が小さな花芽をつけている 今日から夏の土用 季節の変わり目、秋への準備 
そろそろ葛採りも終わりに近づいている
今年は何だかあっという間だ 
葛採りを一年中続けたくはないけど
毎年この時期 名残惜しい

7.20
うちの庭に生えているゲンノショウコは柄が赤いのばかり 土の関係でしょうか? 昨年、グレーを染めようと使ってみたら赤みを帯びた色に染まって驚いたが これを見たら納得

7.20
葛洗い14回目 明日の予定だったが雨予報のため今日 でも発酵のタイミングはちょうど良く良かった
発酵の具合が良いと洗う作業時間も短く済み その後の糸づくり、織りもスムーズに進みロスも少なく扱いやすく綺麗な布が織れる 
いよいよ札幌も暑くなった 夏のセミが鳴いた カワセミもいた

7.23
葛洗い15回目 曇りのち霧雨
昨晩から断続的に雨が降っていたので濁っているかと思ったら綺麗 近頃の高温多湿で発酵の進みが早いので室出しのタイミングにも気を使う 今日のは多分ベスト 天日干し出来ないのがチト残念

7.24
葛採り16回目 午後からの出発になったため採った蔓は水浸けして明日煮沸→室入れ
数日採取していない間にあっという間秋模様で採取が一気に難しくなった ススキも穂 植物の秋支度が年々早まっている気がするが気のせいだろうか 40本 写真のような群生でも採れる葛はほとんど無い

7.27
ススキの穂は紅白ある 赤いのはマジックで塗ったみたいに赤い
葛採りと同じだけススキ採りも重要

葛採り17回目
自宅付近と少し離れた所と今日採れる所は採りきって丁度62本
いつも不思議とだいたい60〜70本前後でもうここでは採れるの無いな となるので不思議 今日もそう
葛から蔓を与えられ葛布を織ることを許可されているような気分
今シーズンの葛採りは多分これで終わり あと洗い2回

節のところ 今にも根が出てきそう このくらいまでが許容範囲だが繊維は少し硬いと思う 根が出てしまっているのはそもそも繊維が穴だらけになっているし 光沢もなくなるのでアウト

7.29
葛洗い16回目 いよいよ終盤
今日は川の水がとても綺麗で匂いも良く気持ちがよい 着いた時にはサギが羽を休めていて マガモの親子は食事中 大きなトンボが飛び回る 何かの楽園かと思った 川の水はやっと素手で作業しても冷たくなくなった やはり素手の方が葛から得られる情報量が多い

7.31
葛洗い17回目 発酵の具合は良かったが繊維は少しお疲れ気味 
今日も川は穏やか 太陽を浴び青く輝くカワセミ初めて見た いつものマガモの親子は川原で食事 ヤマメの稚魚が大勢でウロウロ 豊かだ この豊かさが葛布を通して伝わるといいな

これで2020葛の繊維取り終了
心から全てに感謝!

2020葛採り&葛洗い 終了にあたって
振り返りの文章をブログに書きました

私もちょっとお疲れ気味で結構な頭痛
ずっと気が張っていたのだろう 久しぶりに少しリラックスしたいと思う

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