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2019葛の繊維取り

2018年〜2020年、葛採り&洗いの様子を割と毎日リアルタイムでtwitterに上げていた。良い記録になると思っていたが、年月が経つと過去の投稿を辿ろうと思ってもうまく検索できないことがわかったので、まとめてこちらに転載した。今回は2019年。
2018年はこちら

6月

2019.6.9
葛の伸び具合の偵察
今年は雪解けが早く 先日の真夏のような猛暑も影響しているのか 既に充分な長さ
毎年 札幌祭りを目安に採り始めているが 今年は1週間ほど早く採り始める事が出来そうだ
来週は天候も安定している

2019.6.10
葛採りのための草採り
室(ムロ)を作るのに必要なススキは札幌はまだ小さいので これは葦?
川の土手のイネ科植物を刈り運ぶ
これを自転車で運ぶんだから おかしな様子に色んな人に声かけられる
まだ少し足りないから明日も
いよいよ明日から 葛採り2019シーズンイン


2019.6.11
雨水タンク設置
本当は敷地内に川が流れてるとか 湧き水とか そういう環境が欲しいが 今は得られないので 雨水を利用する
洗車や畑・庭の水やりにも便利


2019.6.12
葛採り1回目 61本
ここの蔓は緑で毛深く 少し硬い
約20年前から葛採らせてもらってる お世話になっている場所 思い入れも深い

繊維も硬いが 強く概ね良いのが取れる
葉の形は四角形


写真左は今の家に越す前に住んでた場所
今の所も好きだけど ここも好きだった
手稲山の反対側の山裾

2019.6.15 霧雨
葛採り2回目 63本
雨続きの時の葛は弱い繊維になりやすい(経験上)けど
一昨日までずっと晴れていたから 多分良いのではないか という予想


切れ込みのあるなしくらいの認識はあったが 群生ごとにこんなにも微妙な違いがあるとは知らなかった
これは葛の顔なのだな

因みに
本州の葛の葉とは様子が全く違うと思います
環境に適応しながら既に違う植物になっているかもしれない

2019.6.19 葛採り3回目 64本くらい
晴れ


2019.6.14
昨日は雨のため 本日 葦取り
ローテーションで発酵させるため草の室を三つ作る 今日は二つ目のための草

イネ科植物についている枯草菌(納豆菌)に働いてもらい 繊維を取る 経験上はススキが最も良いのだがまだ小さくて採れない

なるべく菌が沢山ついていそうなのを選んだ


2019.6.18
葛洗い1回目
晴れた 良かった

ススキの室と 葦の室とでは 発酵した時の匂いが違う
最近はススキばかり使っているが
以前は葦を多く使っていた
その時の 懐かしい匂いがした
付いている微生物が違うのだ
ということに 今更気付く


2019.6.20
葛洗い2回目
この時ここは晴れていたが
向こうには真っ黒な雲 雨の予報はなかったが 冷たい風が吹いてきたので急いで撤収 しかし 帰宅まで間に合わなかった 途中 雷と いきなり大粒の大雨 瞬時に 自転車葛採り史上初くらいのずぶ濡れ
惰性で持っていた山用レインウェア大活躍


葛採り4回目 69本
つい採り過ぎた 採るより洗うのが大変なのに
2019.6.21 曇り

クズを取ると自動的に夜ご飯の素材が一つ増える
おひたしやお味噌汁にも良いが食べ慣れないと 毛の舌触りが気になる
天ぷらやお好み焼きだと 毛は気にならない 良く噛むと甘くて美味しい 栄養満点


2019.6.23 雨のち晴れ
葛採り5回目 63本くらい

前回までとは違う場所での採取
ここの葛は成長が恐ろしく速く蔓に毛がない よく見ると根元は毛深いので 毛を犠牲にして蔓を伸ばす事にエネルギーを費やしているのかもしれない
または
進化していて もはや葛ではないのかもしれない


6.24 葛洗い3回目 晴れた
一昨年 川の流れや表面の水圧を利用することを覚えてから 洗い作業の時間が大幅に短縮され全て自分の力でやろうとしていた浅はかさを顧みた

葛苧は暫く川に晒した後 水面の表面近くでふり洗いすると 余分なものが綺麗に取れる
葛苧にまとわりつく儚い泡が綺麗


綿菓子のような白いフワフワ出て暫くした頃が室(ムロ)出しのベストタイミング
出た直後または出て時間が経過してしまうと具合が悪いし天気や湿度温度にも左右される その様子は数時間で変わるので なかなかベストなタイミングにはならないが今日は良かった!素晴らしい繊維になりました


背丈ほどもある草むらで葛蔓を探す 結構大変だった
普段の1.5〜2倍の時間かかる
ご自分でされる場合は マムシやスズメバチ ダニなどに充分お気をつけください

2019.6.25 葛採り6回目 63本くらい
写真奥は海 意外と近い
微かに厚田〜南暑寒のあたりの山並みも


2019.6.26 葛洗い4回目 快晴
素晴らしい繊維が取れた

昨年は今時期雨続きで苦労したから
今年は天国のよう


6.27 葛洗い5回目

もしかして進化しているかもしれない 毛のない葛蔓は脆くなりやすいので 早めにムロ出し でもやはり少し早かった とても洗いにくいし 所々 取れない表皮組織が繊維に残る

後である程度は落とすことも出来るが 変色してしまう事もあり 帯地の糸としては使えない

葦のムロが発酵臭でなく腐敗臭に近くなったので手入れをする その感覚は 糠床の手入れと似ている
原因は水
湿度は必要だが多過ぎる湿気は要らない 良いものには相反するように思える性質を併せ持つものが多いが 草のムロも同様 湿度を保ちつつ通気性が良いのが良い


同じ植物とは思えない葉の形状の違い
今日は作業場である自宅の周りをウロウロしながら あちこちで
葛採り7回目 60本
細いのが多いので繊維の量は少ないだろうが質が良くロスは少ないのではと予想している

良いクズの生えている空き地を見つけた 地主さんを探して連絡を取ってみようか


2019.6.30 早朝
葛洗い6回目
朝の川は寒く冷たく手も足もシモヤケ でも 清々しい
今日の繊維は良い繊維だが少し硬め これは発酵具合というより 蔓のそもそもの性質によるものだと思う

7月

2019.7.2
昨日葛採り8回目60本
本日葛採り9回目70本
ムロ入れ時 毎回必ず新しい青草を入れる 草が枯れる時に出す熱を利用して発酵させるため と習った それ以外にも色々理由はあるのだろう 実際その方が諸々の具合が良い
昼食は ムロの脇に生えている山ワサビの葉と葛の若芽のお好み焼きにした


2019.7.3
雨が降っているので近くの川で
葛洗い7回目

細く浅く流れが速いので 葛苧を晒しておく事ができない 我流の「蓑虫法」にて洗う
短い蔓が多かったので良かったが 長い蔓を沢山採った時はこの川だと辛いので あと1ヶ月 晴れますように


2019.7.4
葛採り10回目 60本
やっと折り返し
の後
町内会の公園植物保全事業に参加

オオウバユリが開花
今月15日頃が見頃だそう


葛のムロの様子を確認 まだもう少し発酵が必要で 明日も天気は良さそうなので洗いは明日にする 3つのムロは全て埋まっているので 今日は採りも洗いもナシ 少し身体を休められる

庭のラズベリーが豊作で収穫に時間がかかった 朝日に照らされて輝く 宝石みたい


2019.7.6
葛洗い8回目
日差し強く 草の上で真っ白になった

洗いの時に陽に当たらないと葛苧は白くならないが
止む無く 曇りや雨の中洗った場合は 後日 水に通し緑の草の上で天日干ししている 全く同じとはいかないが かなり漂白される
しかし人間は どんどん黒くなる


2019.7.8
葛採り11回目
自宅からごく近所 崖をよじ登りながらの採取 55本くらい
ここは私が沢山採りすぎたからか 毎年草刈りが入る時期が致命的なのか 数年間 ヒョロ細いのしか生えてこなくて採れなかったが 今年は割と太かった
もう花が咲いていて驚いた 標高が高いからかな といっても60mくらいなものだが


2019.7.9
大晴天
葛洗い10回目 洗いは楽だったが繊維は弱いかもしれない

ほぼ毎回会う マガモの親子が 今日は私を取り囲むように すぐ側をスイスイ移動していった 私は危険ではないと判断してくれたようで 嬉しい
子は七羽 親と同じくらい大きくなった
ビックリさせないように静かに作業


2019.7.11
葛採りの後のおやつ

葛採り12回目 60本
ここの蔓は緑で硬め 私好みの繊維が取れる
葛はじめ 藤 ドクダミ ヨモギ ハコベ などなど 人間に有用な植物は押し並べて複数の利用価値があり 繁殖力旺盛で容易には絶えない事を不思議に思う ただ単に 繁殖力が強いから人間が利用するようになっただけなのだろうか?


2019.7.13
マガモ撮影成功

葛洗い11回目の今日は 昨日の雨で川は濁る 来てしまったからここで洗ったが
晒してもあまり綺麗にならないどころか 少しずつ汚れてしまう


2019.7.14
葛採り13回目
蔓は採取後すぐに煮る 蔓を乾かしてはいけないので 大量に採取して作業は後々、などと、保管して置くことはできない

煮沸時間は私は両面7〜8分ずつぐらいだが地域や人によって違う
水は蔓の高さの半分くらいで 半分蒸し煮 水と燃料の節約を優先している



2019.7.15
葛洗い12回目 札幌は気温が上がらない あと一日待つか迷ったが 洗ってみた やはり少し早かったか ムロ入れからムロ出しまで 中4日か中3日か 境目が難しい
草のムロの中には色々な生き物がいて このクモも良くいる 今日は卵を抱えて右往左往 川に入れてしまう前に発見できて良かった


2019.7.16
先日葛を採った場所に ひとまとめ 置き去りにされ 干からびた蔓があった
2年に一度くらい やってしまう
採って 草むらに置いた事を忘れてしまうのだ
葛に申し訳なかった ごめん


2019.7.17
水口細工
葛の芯を使った細工物を制作販売する石川工房さんとのやりとりの経緯と素材の採取の重要さについて
ブログに書きました


2019.7.17
葛採り14回目 やる気が出なくて55本くらい
この時期はいつも 中だるみというか 前半突っ走った疲れが少し出る 七月上旬までが 良い葛蔓が採れやすいので 頑張ってしまうのだ
ここからは 花芽が出たり根が出たりで 蔓の選定に時間がかかるようになる

クロスバイクをこんな風に使っている


2019.7.18
札幌は雨が殆ど降らないが気温も上がらない そのせいか または 今年からムロの作り方を少し変えたからか、発酵のスピードが少しゆっくりで 今日は外仕事はお休み
葛ではなく 犬を洗うことにする


2019.7.19
葛洗い13回目
洗っていると小魚が群れて寄って来るようになった 葛カスを食べに来ると話には聞いていたが 実際に見たのは初めてだ 10年以上も 気づいていなかっただけだろうか?まさに発酵食だ
新しく子ガモも生まれていて 周りで賑やかにしていた
豊かだ
この後雨 びしょ濡れで帰宅


2019.7.20
糠漬けや蒅づくり堆肥づくり等発酵させるものは大抵 天地を返す 何故今まで気付かなかったのだろう 草のムロ 今年は毎度天地を返し 適度に空気を入れる 大変具合が良い 毎年 この時期に一度ムロがダメになってしまうのだが 今年は全くその気配がない

葛採り15回目 採りづらく苦労した


2019.7.22
葛洗い14回目 強風 晴天

洗っていると「葛洗ってる人ですか」と声をかけられた 2年くらい前に写真撮らせてもらった 次会ったら渡そうと思っていた との事
わざわざ自宅に戻って持ってきてくれた 写真の日付は2017.7.19
何と嬉しい
豊かな気持ち

葛の花の香りが漂う季節となった


2019.7.23
梅が届いたので今日は梅仕事
タイミングよく 雨 葛採りは出来ない

梅干しを作るようになってから 市販のものは買わなくなった
うちのが一番美味しいので
6キロを2人でチビチビ食べて 一年持たせる
自動的に梅酢やゆかりも出来、紅生姜や梅塩 ハネた梅は梅醤にも

なんと素晴らしい食文化


2019.7.24
葛採り16回目 61本
花芽をつけていない、根が生えていない蔓を見つけるのが本当に大変になってきた まだ7月だが 今年は植物達の冬支度が早い気がする ススキも穂をつけてきたし
感覚的にも もう 秋 という気分
断続的に雨が降る中 晴れている隙を狙って作業


7.25
葛洗い15回目
今日は川の水が澄んでとても綺麗
写真は最後の仕上げ洗いだが
繊維を触っていても とても気持ちが良い
この気持ち良さを 布にした時にも残したい 布にも伝えたいのです


7.26
葛採り17回目 53本
小雨降っていたのだが 嫌な気持ちはしなかったので出てみた
大雨になったらすぐ戻れるように 近場で採取

玄関先に植えたニゲラが咲いた
幸せな気分
開花時は白く 徐々に青くなる


7.28
葛採り18回目 50本
新しく伸びたような良い蔓が無く 60本採れなく 諦めた
今年はいつもより冬支度が早いようだ
今日採った場所は もうこれ以上は採れないと思うので 多分今日で終わり 心からのお礼と感謝を 葛の群生に

庭にはルリボシカミキリ 今年はよく見かける


7.29
葛洗い16回目
葛は群生ごとに蔓や葉の形状が違うがそれに伴い繊維の様子も結構違う
この蔓の繊維は柔らかいが弱くなってしまうことが多いので 今年は採取を避けていたが 煮沸時間を短くしてみたら 割と強い繊維が取れた
方法を固定せず 都度 新たな気持ちで取り組む必要を改めて実感


7.30
葛採り19回目
葛の花満開 甘い香り漂う
しかし良い蔓を探すのにはかなり苦戦 広範囲回ってやっと45本 新しい蔓は大変細く 採取には不適
今年は葛達の冬支度が本当に早い
20回を目標にしたが 今日で採取は終わりにする
心からありがとう
来年もまたどうぞ宜しく
と 手を合わせた

8月

8.1
昨日は葛洗い17回目 雲が厚く雷も聞こえていたから大急ぎで洗い戻ったが 雨は降らなかったから良かった
洗いもあと2回で葛採り2019も終わる

ブログを書きました
『夏は秋』

今日は町内会の公園保全事業に参加
公園内に日本スズランの群生地があるので 専門家の指導のもと 草刈りなどを行う
放っておくと 何もしなくてもあっという間に森林になるのは日本の植生の特徴だそうだ
植物繊維の布の種類が多いのもそうした理由からだろう

しかし暑かった


8.2
葛洗い18回目
6月末から作業を始めたわけだが その間 雨が降ったのは3、4日程度じゃないだろうか? 今年は葛の冬支度が早いと思っていたが 他の植物も軒並み例年より1ヶ月くらい早いそうだ
庭のアロニアは 紅葉というより 枯れてしまったみたいだ 大丈夫だろうか

アカエゾゼミ大合唱


8.3
葛洗い19回目 晴れ 暑い 風強い
本日をもって 葛採り2019シーズン 全ての作業を終了します
今年も無事に終えることができました 一年分の 充分な量の繊維を
心からありがとう
葛 土 太陽 ススキ 葦 微生物 川 …
沢山の全てのものに感謝!

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