クズ子という女

第三者目線でクズ子について書くという実験です

ある日のすきま時間にSNSをチェックしていたら、誰かがシェアした『貧困女子』という記事が目に留まった。
記事の内容としてはいわゆる下流生活をおくる成人女性達の現実についてで、読み終えた私はクズ子という女性のことを思い出した。

彼女は家庭環境や出逢った男性達に良くも悪くも影響を受け、浮いたり沈んだりと格差社会を泳ぐように生きてきた。
私はクズ子という女の生きざまが良いとも悪いとも思わないが、この理不尽な世の中で苦しんでいる女性や生きづらさ感じている人々に何か伝わればと思い綴ることにした。

クズ子は物心ついた時にはすでに母子家庭であり幼少期は祖父母と暮らしていた。
祖父は工場勤務で公営団地に住み、あまり良い表現ではないが【低所得】のカテゴリーだったらしい。
穏やかで優しい祖父と口うるさいがリベラルな感覚を持ち合わせていた祖母と暮らした日々は人生においての宝物だと、クズ子は少し寂しげな目で度々語っていた。

クズ子は小学校低学年の頃、母親が再婚したため祖父母の家を出て新たな土地での生活が始まった。
しかし新生活は幸せとは言い切れず、酒癖の悪い義父の暴力や度重なる夫婦喧嘩に心を痛めていた。
小学生時代は現実逃避するが如く、勉強や読書に没頭していたため比較的成績は良く高学年になってからはクラスでも常に上位５番以内だったらしい。
月日が過ぎ小学校卒業を控えた頃、義父が亡くなり母親との二人暮らしが始まった。
義父の保険金が入り初めて金銭的に余裕のある暮らしになり、クズ子は自分の未来がひらけた気がしたと言っていた。
ただそんな生活も長くは続かず、クズ子が中学生の時に母親が再婚した。

クズ子は母親の幸せのため新たな義父と仲良くしようと努力したらしい。
しかし中学生になりどんどん精神年齢が上がり、価値観を受け入れてもらえない不満から中二病を患い、義父との間に埋められない溝ができたという。
母親の再婚はクズ子にとってかなりマイナスに作用して、中学入学以降成績はどんどん落ちていった。
遊ぶ仲間も変わり、酒、タバコ、男も知り中学生にして中絶も経験した。

母親は今回の再婚はクズ子の祖父母の反対を押し切って惚れ抜いた末のこともあってか、クズ子の迷走を責めるばかりで自分の決断や再婚相手について疑うことはなかったらしい。
祖父母を敬愛していたクズ子、再婚を責めらたくない母親はクズ子の堕ちていくさまを祖父母にはけっして知られないようにしていた。

クズ子は母親に愛されていないと感じていた。
そしてその心の隙間を埋めるように援助交際をしていたそうだ。
当時はテレクラや伝言ダイヤルというサービスがあり、現在よりはアナログだが大人の男性と出逢う機会はいくらでもあった。
やがて一部の友人達もクズ子に続き危ない橋を渡っていたようだ。ここでは書かないが援助交際をしていた友人達は一度や二度、危ない目にあっていたらしい。
しかしクズ子は悪運（？）が強いのか、一度だけヒヤリとしたがほとんどの男性は優しかったと言っていた。

当時の心境についてクズ子は
「援助交際は私のライフワークというか精神安定剤だった。男性の下心に満ちた偽りの優しさでも私の心は束の間満たされた。こうでもしなければきっと自殺未遂かもしくは薬物に手を出していたかも知れない」
と暗い過去なのに懐かしむような穏やかな笑みを浮かべていた。

祖父母に心配をかけたくない一心でクズ子はなんとか高校に進学した。
高校に進学後は友人や彼氏もできて、学生生活は楽しかったらしい。しかし義父との溝は埋まらず両親に追い出される形でクズ子は祖父母との生活を再び始めた。幸い、祖父母宅はなんとか通学できる場所にあり高校は無事卒業できた。

もう少し学生時代について語ると……

クズ子は振り返るほどの美人ではないが、独特な空気感を持つ女だ。
学生時代の見た目はヤンキーやギャル系といった派手な感じではなく、少し個性的なセンスだった。
中学生以降のクズ子はいつも誰かと付き合っていた。自分からアプローチするわけではなく受け身で付き合い始めることがお決まりだったせいか、やっかんだ者がクズ子をビッチ呼ばわりしていた。でもクズ子はそんなことは気にせず彼氏が変わると嬉しそうに周囲に話していた。

両親から拒絶された傷を癒すために援助交際をしていたクズ子は彼氏が出来てもやめようとはしなかった。
たぶん10代の青年では色々拗らせたクズ子のすべてを受け止め愛することは無理難題であったからだろう。
クズ子にとって彼氏であり父であり家族である、そんな役割を出来る若い男などいないからだ。

そうして援助交際にもなんとなく飽きてきた頃、クズ子の前に新たな男性Yが現れた。
高校生最後の冬を迎える頃、クズ子は援助交際相手との待ち合わせでとある駅のロータリーにいた。
そのときにナンパしてきたのがYだ。

この男性Yとのエピソードはまた次の機会に……