仲岡氏8月28日掲載エッセイを読んで。TERF論争というより「ツイッターでの騒動」について、では?

まずは「落ち着いていますよ」と申し上げます。最後の文章への回答です。

(仲岡エッセイより引用)

 『落ち着いてください。
 そして、こういった極端な事象を元に、MTFトランスへの恐怖を募らせるのをやめてください。』

 私は落ち着いていますし、仲岡氏もお書きの通り、この話は昨日今日浮上したものではありません。2年前からずっと続いています。それと、この言葉に既視感があります。

「落ち着いて、恐怖に支配されないで」ということで、まるで相手が恐怖から理性を失っている状態のように見えます。マンスプレイニングという手法です。もうこのようなやり方はやめにしませんか?女性たちは冷静に訴えています。

【極端な事例を元に】

極端な事例とはどの事例でしょうか。

(仲岡エッセイより引用)

 『いないとは言いません。いやむしろ、確実にいるでしょう。極端な主張をおこなう個人というものは、当該主張の是非はともかく、どのような属性の集団の中にも必ずいるからです。
 しかし重要なポイントは、いるかいないかではなく、実際問題として、それがどれだけの社会的影響力を持っているか、なのです。』

 極端な発言をしていたのは、尾崎日菜子氏、少年ブレンダ氏などの方々です。尾崎日菜子氏はアジア女性センターに寄稿するほどの方です。社会的影響力をお持ちだと思います。少年ブレンダ氏も界隈で有名な方ですね。

仲岡氏は、

【極端な事例はある】と認めつつも、【いるかいないかが問題ではなく】【どれだけの社会的影響力を持っているか】

 と突然問題点をずらしてしまいました。これはどういう事でしょうか。

公衆浴場を使えるかどうか? 答え:男性器があったら女性風呂は入れないのが現行法

(仲岡エッセイより引用)

 『さて、その上で、MTFが女性用公衆浴場を使えるかどうかは、私が把握している限り、公衆浴場組合では戸籍変更の有無にかかわらず、男性器の有無、すなわち性別適合手術をしているかどうかを基準としているようです。不特定多数が他人に裸体を晒す場の管理者としては、事の性質上やむを得ない判断であり、また合理的な見解と思われます。』

 仰るとおりです。私も調べた上でいくつかの公衆浴場に聞いてみました。身体の性器の方の風呂へ入ってもらうとの回答で大変安心しました。

(仲岡エッセイより引用)

 『つまり、みなさんが懸念するまでもなく、現行法の解釈でも、既に違法なものとして運用されているのです。実務上、自ずから決着が付いており、そもそも論争の実益が薄い事柄なのです。』

 こちらも仰る通りです。しかし論争の実益が薄いか濃いかで論争が続いているのではありません。

 ツイッターの世界で繰り広げられる論争は現実とは全く違うし、論争の実益も薄い。だから関与したくなかった、と仲岡氏は続けています。

(仲岡エッセイより引用)

 『しかし、今、状況があまりにも錯綜している中で、今回はしばしば論争の種になるMTFトランスの公衆浴場利用の問題について、実務的観点から解説を加えたいと思います。』

 なるほど、理解しました。

 この記事は「公衆浴場にMTFがむりやり入ろうとすることはない。だから落ち着いてください。極端な事例を元に恐怖を募らせるのをやめてください」と伝えるために書かれたものですね。


申し訳ないですが、仲岡氏は石上エッセイを読まれましたか?指摘されている問題点はそこではありません。


(石上エッセイより引用)※引用元の署名の呼び掛けはこちらから↓

『WANは、2019年2月に「トランス女性に対する差別と排除とに反対するフェミニストおよびジェンダー/セクシュアリティ研究者の声明」の署名を募集・発表したプラットフォームです。この署名を読んでみると、女性に割り当てられた公的空間にトランス女性を参入することを求めていることがわかります。』
『(引用)
女性ジェンダーに割り当てられた公的空間にトランス女性が参入することへの懸念や反発がインターネットを中心に目につくようになってきました。とりわけ、このような懸念や反発が「フェミニスト」を自認する女性たちから提出され、しかも鎮静化するどころかトランスジェンダーに対してはっきりと差別的な見解がインターネット上で次第に多く流通するようになってきている現状を、私たちは深く憂慮しています。 (以上、引用)』

 この署名が発表されたとき私は大変驚きました。WANは「女性スペースにトランス女性を参入すると言わなければ差別」という考え方なのか、と。しかし今回「WANは頼まれて署名を呼びかける記事を出しただけ」ということを明言された方がいて安堵しました。意見の発表のプラットホームですから、そうなのですね。WANの意見かと勘違いしてしまいました。


 ところで引用の「女性ジェンダーに割り当てられた公的空間」とは、どこを指すのでしょう。今回仲岡氏が解説なさっておられるように、公衆浴場は「性器の有無によって、入る風呂が決められている」と法律で定められています。これは「女性ジェンダー」によるものではありません。女性の身体、男性の身体、という身体の形状による分け方ですね。(※これはミスジェンダリングだ、と読み間違えないで頂きたいです。あくまでも仲岡氏の解説を繰り返しているだけです。)

 この署名は「その空間」にトランス女性が参入することの心配や懸念が、と続きます。けれども肝心の「女性ジェンダーに割り当てられた空間」がどこなのかわかりません。どこかわからないところへの参入が懸念されているのはおかしな話ではないでしょうか。


(WAN署名呼び掛けの記事より引用)

『私たちはその認識と自覚とに基づき、トランスジェンダー差別を許容することはできないと、ここに声明を発表し、広く賛同を募ります。』

 署名を呼びかけるレポートは上記のように結びます。差別的な発言がどういうものなのかは文中に説明がありません。「女性ジェンダーに割り当てられた公的な空間にトランス女性が参入することへの心配や懸念の声」を、差別と断定しています。

 心配や懸念の声で、差別的なものがあったのでしょうか。もしあったのならば、具体的に「このような言葉や、言い方は差別なのでやめて」と説明があるべきでは、と考えます。学者の方々、TRAが名を連ねる署名であり、普通に考えてそう伝えるのは不可能ではないはずです。

 「どうしてこれが差別なのか」「どの言葉が差別的なのか」と質問をすると「差別者!」「TERF!」「恥を知れ!」と決め付けられました。話し合いをしたいと申し出ても「その事自体が差別だ」と。このように話す姿勢を持とうとしなかったのは、TRA学者、TRAの人、アライの人たちでした。また理解が必要だとしながら「議論する必要はない」と仰るのは何故でしょうか。理解し合うには、説明や議論が必要ですよね。石上エッセイでこの点は特に具体的に書かれています。


極端な事をいったのは誰か。でもあったかなかったが問題なのではない、影響が大きいかどうか

 仲岡氏は「極端な事をいう人はどの属性にもいます」と解説しておられます。では、TERFといわれた女性たちの中にも極端なことをいう人がいたと仮定しましょう。その人の影響力はいかほどでしょう。

 ツイッターの片隅で呟いたことがどれほどの影響力を持つのか。大きいとはいえないと思います。TRA側が言ったのは極端なことをいう一部の人であり、影響力が大きくないとするのなら、女性たちの中で極端なことをいうのも一部の人であり、影響力は一般人である事を考慮するとさらに大きくない筈ではないでしょうか。

 それなのに上記のように署名を集め、緊急の呼びかけと大きな波紋を呼びました。

 なぜなのかわかりません。なので、具体的な例示をお願いしたいのです。影響力の大きい極端な言葉、それはどんな言葉なのでしょうか。

仲岡エッセイより引用

 『しかし、少なくとも今の日本では、上記のようなそこまで尖った主張が、何らかの社会的影響力を持ち得るには到底至っていませんし、またMTFトランス及びその支援者の間でも一般的な見解とは思えません。もちろん、公衆浴場で広い風呂に入りたいという気持ちを持つことはその人の自由ですが、未オペの状態でそれを実践すれば、当人自身にとってもトラブルが生じるリスクが高いことは、大抵の当事者は分かっているからです。』

 はい、こちらはgidの方またトランスジェンダーの方にお聞きして、もうすでに未オペでは入らないというのが暗黙の了解であると伝え聞いています。しかしながら冒頭の通り「男性器をつけたままでも公衆浴場へ入っているのだ」という主張が繰り返しなされたため「それは怖い」「私は性被害サバイバーです。やめてほしい」という声があがりました。その怖がる様子を揶揄し「怖いなら家から出るな」などと強い言葉で責められてアカウントを削除したり、アカウントに鍵をかけて引き篭もったりツイッター上で大混乱があった事は、仲岡氏も認めている通り事実です。

 仲岡氏は「当然リスクはわかっている」だから「ない」と仰っています。けれど当時の大混乱を無かったことにしないでください、見て見ぬ振りをもう続けないでくださいと石上エッセイでは伝えています。現在33794ものview数にもなっているのはそう思う人が多いという証左ではないでしょうか。

(仲岡氏エッセイより)

 『そのような状況下において、上記のような例外的事例を過剰に重大視し、恐怖を煽ることは、特にその対象が社会的マイノリティである場合、当該マイノリティへの強烈な排除や抑圧の効果をもたらします。』

【上記のような例外事項を過剰に重大視し、恐怖を煽ること】

 過剰ですか?「男性器をつけたまま女性風呂に入る人はいないだろう」と論争が落ち着こうとしたときに「もう入っている」「知り合いの男性器がついたまま入る人はおばちゃんと裸のまま談笑までしている」と例外事項を突きつけてきたのは、TRAの方々でした。恐怖を煽ることは、むしろTRAの方がしていました。その言葉に反応しての女性たちの声なのです。

驚かされなければ、悲鳴をあげることはありません。それと同じ事です。


(石上エッセイより引用)

『実際に、戸籍を変更して暮らしている「トランス女性」はもちろん、これまで女性として生きてこられたトランスジェンダーには、もちろん、女性トイレをはじめとした女性専用スペースを使って構わない、ただ、ペニスを付けた男性が女性風呂に入ることは、耐え難いのです、とネットで表明しただけで、「ペニスフォビア」だと罵られ、「ガールディック」「女根」「大きなクリトリス」「ただの小さな肉塊」を受け入れられないのは「トランス排除」だと断じられてきました。』

 ここが、具体的に多くの女性たちがどのように言われたかの指摘です。もっと他にも過激な言葉はありました。「恥を知れ」も人気の言葉で今も使用なさっている方もいるようです。

(石上エッセイより引用)

『トランス女性(MtFトランスジェンダー)が問題なのではない、それに便乗する性加害者が問題なのだと言えば、犯罪被害を軽視したり妄想扱いしてくるような発言もありました。「性犯罪被害者がペニスが怖いなら、専門医にみてもらってやりくりしろ」などと、性犯罪被害者にも多くの非難が寄せられました。』

 性加害者が問題なのです、と以前も今も繰り返しお伝えしています。今現在で女性風呂に侵入し、下着を盗んでいく犯罪、女性風呂の中に入り込み「私は女性です」と言い張る犯罪が報道されています。女子トイレでは暴行や盗撮など犯罪がどんどん増えているのではないかと思うほど連日報道されています。

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仲岡氏は心配ありませんと書かれていますが、現にこうして被害があるのです。その上で将来的に心配な動きがあり、冷静に女性たちは声をあげています。


 今現在、沢山の被害があります。日本社会は女性と子どもの被害に真剣に向き合ってこなかった。その結果、状況はどんどん悪化しています。フィクションで覗き行為が青春の良き思い出のように語られ、男性の夢だとでもいうような表現、またラッキースケベでドラえもんのしずかちゃんの入浴を覗く行為は「もう、のび太さんのえっち!」ととても軽いアクシデントのように描かれて現実への悪影響があちらこちらに現れていると言えます。

 今現在「男性器がついていたら男湯へ。女性の風呂への侵入は逮捕される」のでも犯罪が多発しているのに、法律を変えようとする動きがあります。


今、特例法の手術要件の撤廃を求める流れになっています。手術要件がなくなると、男性器を手術で取らないまま、女性としてセルフIDで認める世界になります。

 仲岡氏が解説したように、現在は男性器をつけたままの人は女湯に入れません。しかし、この手術要件が撤廃されたらどうでしょう?男性器をつけたままで女性と認められ、女湯に入る事が可能です。はは、まさか、と思いますか?しかし現在、ワールドワイドに展開しているのは実はこの「セルフID(本人の申告のみ・手術なし)で性別を変更する」というものなのです。

(上記記事より引用)

『また、「手術要件」については、例えば女性として生まれた人が、性別適合手術を受けずに戸籍上の性別を男性に変更し、男性として子を出産した場合、社会的な「混乱」が生じかねない等の理由から設けられたという。』
『この要件については、平成31年の最高裁判決で「憲法違反ではない」とされるも、2人の裁判官により「憲法13条に違反する疑いが生じていることは否定できない」という補足意見が出されている。』

戸籍上は男性に変更し、男性として子を出産した場合。どうなるのか。

『見直しに際しては、法務省の担当者によると「生殖機能を持つトランスジェンダー男性が子どもを出産した場合に、民法上『男性である母』等の表記となるのか、民法その他の法令との整合性の検討が必要」と示された。』
『見直しの論点としては、「外観要件を撤廃しても良いという社会的な認識の変化があるかどうか」ではないかと話す。』

 こちらの記事、良く読んで考えてみてください。これらを全て是とすることが出来ますか?特に最後の、「外観要件を撤廃しても良いという社会的な認識の変化があるかどうか」というところ。この部分で今起きているツイッターでの問題は槍玉に上がっているのだと感じます。

 もちろん、トランスジェンダーの生き方を否定したいわけではありません。手術に保険が適用されず、高額すぎてとても手術に踏み切る事が出来ないのならば、保険適用に変えたら良いと考えます。職場での対応も本人の希望が通るべきでしょう。できる限りのサポートをして、生きやすい社会へ変わってゆくことは大切です。

 但し、安全を確保できていない今の状態のまま、男性器があっても女性です、とする事はどうしても不可能です。犯罪が多すぎます。これ以上被害者を増やしたくないのです。だから私たちは公衆浴場で男性器をつけた方と一緒に施設を使うことに、心配と懸念の声をあげている次第です。ここを勘違いして「差別だ」と断じてくる人がいます。けれども、それはミスリードです。我々は「男性器をつけた人」と言っているのですから。

トランスジェンダーを犯罪者だとは言っていません。犯罪者を警戒しています

 「トランスジェンダーを犯罪者というのか!」という非難も沢山されました。今もまだ引き続きされているようで、とても戸惑っています。トランスジェンダーが犯罪をするのだと言っている人は周囲には見当たりません。トランスジェンダーを騙る犯罪者が心配だと繰り返し伝えています。これは差別ですか?現実にある事を心配したら差別になるのですか。実際に事件があり、再犯率はとても高く被害の増大を止められていません。

 また男性器付きのまま女性だと認められるセルフIDの実用化がされた国では、長年女性たちが戦って勝ち取ってきた政党の女性の党首席にトランスジェンダー女性(手術していない)が女性枠として就任しました。スポーツの世界でも、体格のまるで違うトランスジェンダー女性と非トランスジェンダー女性が試合をして大怪我を負う事態になり、それが問題視されトランスジェンダー女性との試合を禁じる法律ができたアメリカの州があります。

 法律を変える事。現状に即していない法律などを変えるのは良いでしょう。しかしこれだけ女性たちが懸念を示して受け入れ難いと心配をしているのは何故なのか。出来るだけ具体例をあげて説明をさせて頂きました。

 今回仲岡氏が「男性器付きのまま女湯に入ることは違法である」と説明してくださって良かったです。

「今後も日本では男性器付きの人が女湯に入るようにこの法律が変わることは無いだろう」と明言してくれたらもっと安心です。男性器付きの人が女湯に入る未来を、我々多くの女性は望んでいません。

 WANは開かれた議論の場所、プラットホームであると信頼しています。市井の勇気を振り絞って声をあげている女性たちの訴えを、どうかフォビアとか差別であると切り捨てないで下さい。議論をする場として開かれている。それならば何が差別にあたるのか、何をどうしたら解決に向かうのかを話し合いが持てると希望を捨てず、この投稿をします。どうぞ、よろしくお願いします。

9月16日追記 *****

問合せをしてみました。8月31日、東京都公衆浴場業生活衛生同業組合さまへ。

「戸籍に基づくと条例では決まっています、基本的には浴場主さんの判断にお任せしています。」

という回答でした。

男性器がある人が女湯にいたら、叫んだりスタッフへ知らせた方が良いかという質問にも、「そうしてください」と回答頂きました。

本当にほっとしました。ありがとうございました。

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この内容は、WANへ8月28日に投稿をしたものです。

待ちましたが投稿がされませんので、問合せ部分を加筆し投稿いたしました。

生きててよかったな!って思う食べ物と飲み物の購入に充てさせて頂きます。 おいしい紫蘇入り唐揚げときんぴらごぼうが得意技です。ありがとうございます