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#1_4 アイドルとレス(レスという双方向性)

#1系統では「アイドルとは何か」をもとに、アイドルの歴史や存在意義みたいなものを深掘りしつつ、その価値提供、顧客体験の本質を探索していきたい。前回の記事ではアイドルの体験価値を再分化した。

前回は「アイドルと顔」と称し、顔がいいことが「好きになる」理由であっても「好きであり続ける」理由にはならないとして論を展開した。

今回はアイドルのライブ中には欠かせないものでもある「レス」を分析していく。

レスとは何か

レスとは"レスポンス"の略であり、「ライブ中にアイドルがオタクを個別に認識し、反応する」ことである。
主なものとして「目が合う」「ハートを送る」「指差し」などが挙げられる。
レスをするアイドルもしないアイドルもいるが、本気で歌いたい/踊りたい子は結構レスをしない子もいるので、一概にアイドル全員がレスを送るとは言えない。ただ、レスを送られればオタクが釣れるし、そのあと特典会にも来てもらえるから、ファンが増えやすいといえる。

ライブが双方向になる

坂道や48のオタクが地下アイドルに来ると驚くことのひとつがレスである。
私個人の意見として、地上と地下のアイドルライブは(ステージの大きさが原因といえるが)レスの有無に非常に大きな差があると考える。

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このレスは「ライブを双方向にしている」と言える。
つまり、一般的にはパフォーマーが踊り/歌を提供し、観客がそれを鑑賞するのみだが、地下アイドルではそれだけではなく鑑賞が推しジャンや指差しなど多岐に渡り、さらにアイドルからそれに対してレスとして反応があるのである。
これにより、一般的なライブはパフォーマーと観客の隔たりがあり、そのライブ環境をパフォーマーが構築していくことになる一方、地下アイドルのライブはパフォーマーだけではなくオタクもライブ環境の構築を助け、独特な環境になっていると言える。

マーケティングにおける双方向の重要性

21世紀のマーケティングにおいて「双方向」は非常に重要なキーワードとなっている。

まず「プロダクトアウト」と「マーケットイン」を押さえたい。

プロダクトアウト
作り手の視点からものを作る。20世紀の大量生産大量消費の時代においては作れば売れる世の中である。そのため、企業それぞれが「良いもの」を自社の論理から展開する。

マーケットイン
顧客となるユーザーのニーズからものを作る。21世紀のものを作っても売れない時代において、顧客が必要なものをきちんと届けようとする。そこからニーズの把握のために顧客とのコミュニケーションが求められた。

ここで重要なことは、プロダクトアウトは古く間違った考えではないと言うことである。
例えばiPhoneというものはジョブズのニーズを叶えたとは言えるが、別に誰かが望んだとは言えない、というよりそんなことを思いつきもしていなかった。
このような需要の破壊/アップグレードの際にはプロダクトアウトの形で企業側が新しい方を提示することが必要となる。

ただ、そういうものでない時は、やはりマーケットインで顧客のニーズを日々追いかけること、そして顧客とのコミュニケーションを持つことが求められる

今やSNS全盛期に置いて、企業がコミュニケーションを取ることは全く難しいことではない。
例えば良品計画(無印良品)では「ご意見パーク」として、お客様の声をHP上に公開し、顧客との交流をさらに可視化することで、公明正大な対応を見せている。
また、各種企業Twitterアカウントでは、UGC(顧客が作った投稿など)をリツイートしたり、引用リツイートでコメントを添えたりしている。

双方向性と地下アイドルとファンマーケティング

まず大前提として地下アイドルとは双方向の交流である、というのは押さえておきたい。これはライブだけではなく、SNS全盛期において多様な交流がなされているが、この件はまたのちに述べていきたい。

ともかく、双方向の交流が主軸の中で、地下アイドルは双方向の交流ができ、またそれがファンマーケティングにつながっていると考えられる。
例えば「認知」と呼ばれる現象もその中の一種と考えられる。
認知とは「アイドルがファンの名前を覚えている状態」のことであり、ファンとアイドルの最初の接点は認知があるかどうかといってもいいと考えられる。認知があることでそのアイドルへの特別な感情(必ずしも恋愛感情ではなく、有象無象の中の特別感)があり、そのアイドルを応援し始める。
このように、双方向とは「特別感」の醸成であり、特別感こそ地下アイドルがファンをファンであり続けさせる大きな要因ではないか、それこそファンマーケティングではないかと考えられる。

要は「大好きなブランド・人には大事にされたいよね」ということである。
その中の一種がライブであればレスである、ということだ。

続編はこちら

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