#3_3 真っ白なキャンバスのチェキ金額変更から価格戦略を語る
地下アイドル界隈では中堅どころであり、先日はコロナの状況ながら全国ツアーを成功させた真っ白なキャンバスから、面白いニュースが届いてきた。
もともと特典券1枚2000円の販売だったグループがこのご時世で対策をするために2500円に値上がりした中で、なぜか対バンのみで2000円に戻すという、他のアイドルグループではなかなか見られない施策をとっている。
今回は、この施策のマーケティング的観点と食前舌語の意見をまとめられればと思う。
※ただしすごい考察したのに、結果ただの思い付きだったらしいことを、メンバーの発言で発覚。私は何のためにこれを書くのか(笑)
特典券という制度
(ここは今後別章にて詳細に記載していくつもりでしたので、いったん軽い程度にまとめておく。)
まず、地下アイドルと地上アイドルの大きな差に、『収益源の違い』があると考えられる。この大きなものが、特典券、通称”チェキ券”と言われるものである。
地上アイドルの主な収益源は①CDの販売②ライブの入場料③グッズ展開が基本となる。
一方で、地下アイドルとなると地上アイドルと比べてファン数が多くないので、自動的に売上=客単価×客数で①-③では通用しなくなる。
そのために用意されているのが「特典会」という制度である。
言ってみれば「特典券1枚でチェキを撮ってそこにサインやコメントを書いてもらう間は1対1でお話ができる」という仕組み。
1対1で話せる機会は地上アイドルの握手会に通じるものがあるが、時間の長さもあって、もともと48や坂道のヲタクだった人はこれを理由に流れてくることが多い。
一方で、こういった時間で交流を深めファンを獲得していくことが重要であり、いわば「自分たちのファンを獲得する方法」として非常に重要である。
対バンとワンマンの違い
(ここも今後別章にて詳細に記載していくつもりでした、、、)
しれっと「対バンのみ」と記載したが、そもそも対バンの意味が分からない人が多数だろう。そのためここでは少し記載を追記する。
「ワンマン」とはワンマンライブのことであり、出演者が1組のみで主催公演のものである。
「対バン」は複数のグループがかわるがわる出演する形式であり、多くのものが企画会社が主催している。(もともとはロックバンドのバンド同士の対決が語源)
ここで重要なのは、地下アイドルはメディア露出が少ないため、ファン獲得の多くは「SNS」と「対バン」の2つに限られるということである。
例えばTaskHaveFanが「TIFで見つけられたアイドル」と言われたように、対バンやフェスで活躍した地下アイドルが他のアイドルオタクをごっそりと奪い、一気に人気を得た例も多く存在する。
その中で対バンで重要なことは「特典会で交流すること」であるため、そこに力を入れているグループは「(対バンのみ)特典会新規1枚無料」などの施策をとっている。
まぁもちろん、そんな簡単にワンマンに顧客を連れてこれるわけでもないので、多くのグループは「知名度は高いわりに顧客が増えない」という現象が起きる。
ここまでの結論として、以下のことが言える。
対バンで魅力を出し、特典会でファンを獲得することが、人気になていく・ワンマンに人を呼ぶことにつながる。
ただし、対バン出演⇒特典会に客を呼ぶことも難しいが、特典会参加⇒ワンマンに客を呼ぶことの方がハードルが高い。
価格戦略について
(ここからが本題です。前置きが長いのだめですね本当に。)
まずマーケティング的に価格というのは4P(Price:価格、Product:製品、Promotion:広告、Place:流通経路)にも数えられるほど重要なファクターであり、多くの研究がなされている。
※近年では5Pとして、Package:包装・見た目という見解もある。
この価格には3つの意味があるといわれる。
①支出の痛み:価格が低いほど効用が高くなること。価格弾力性が負。
②品質のパロメーター:製品の知識が低い場合に価格をもとに品質を判断する。
③プレステージ性:価格の高さがステータスになる高級ブランド品など。
ここで①と②をもとに消費者への質問をもとに製品の価格設定のヒントを得る方法をPSM分析というが、今回は脱線してしまうので省略する。
ただし、その中でやはり分かることは「人それぞれ支払ってもいい金額(=留保価格)が異なる」ということだ。
そこで考えられるが同一商品を別価格で販売することになるが、これが主に3つに分けられる。
【3つの価格差別】
①個別プライシング:価格を個別に変えること。自家用車、B2Bなど高級商品で、交渉を要するもの。
②商品のバリエーション化:異なるプランを用意して顧客に自由選択させる。鰻(松竹梅)や携帯料金(定額制と従量課金)やネスカフェのアンバサダー制度(本体は赤字でも消耗品で補填)
③セグメント別プライシング:消費者の属性や時間帯で料金を変える。学割やランチセット割など。
この③セグメント別プライシングは、主に「ダイナミックプライシング」という方法を用いられることが多い。
その手法は主に「スキムプライシング(最初は割高にして徐々に下げる)」と「浸透プライシング(最初は割安にして徐々に上げる)」の二つが存在する。
今回の真っ白なキャンバスの施策について
ここまでくればマーケティング的に今回の施策は以下と考えられる。
真っ白なキャンバスは対バンとワンマンでセグメント別プライシングを適用し、顧客体験的に時系列的に先に来る対バンで浸透プライシングを設定することで顧客をワンマンに誘い込もうとしている。
もしくはスキムプライシングで今まで高くて特典会にこれなかった人を誘い込もうとしている。
ただし、食前舌語はこの施策、あまり効果がないと考えている。
コロナ禍での地下アイドル市場は一言でいえば離脱客はいても流入客が少ない、完全に縮小傾向にある市場だった。
つまり、この1年間程度で「真っ白なキャンバスに行ってみたいけど高くて行けない」という人は、元が2000円だったこともあり、「この一年間で地下アイドルを趣味としたが、2500円だと通えなくて2000円なら通える人」となる。あまりに少ないのではないかという推論である。
また、本来であれば一番重要なのは「特典会に客を呼ぶこと」ではなく「ワンマンに客を呼ぶこと」になる。
その中で、ワンマンへの参加のハードルを下げる方向ではなく逆に上げることになるのはどういうことだろう…と考えてしまう。
食前舌語の提言
今回の真っ白なキャンバスの施策は、そもそも非常に面白い。
収益源の話をしたが、2500円が2000円になれば、売上が20%減になり、単純に利益率の悪化にもつながる。
これに対する決断は非常に賞賛に値する。
ただし、非常に残念なのは、このコロナ禍でアイドル同様に頑張ってきたのは既存客である。
なぜか多くのアイドル運営が新規獲得に血眼になっているが、このファンマーケの権化である地下アイドルという市場において最も重要なことは「既存客への還元」であると考える。
どうしたら今の既存客が喜んでくれるか。これを追求することで既存客の離脱は防がれ、また評判から新規のファンもおのずと増えていくことになるだろう。
特に真っ白なキャンバスのようにポテンシャルの高いアイドルであれば。
ということで、食前舌語の結論は以下の通りです。
「非常に面白いが、やるなら既存客への還元を込めてワンマンですべき。」
※どうせ安くなれば枚数積むから原価のほぼないチェキならほぼ利益は戻る
閑話休題
改めて、新規が…ではなくヲタクたちが…を考えてくれる、ヲタク思いの運営はいないものだろうか。
昔のuijinとかすごい評判良かったね…
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