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喋る仕事

ずいぶん長きにわたって喋る仕事をさせてもらっています。

このこと自体がとても恵まれたことですが、時々忘れられない出来事があります。

今夜(2020/09/04)の大垣ケーブルテレビ「生放送です!メールください」での出来事は、忘れることはないでしょう。

この番組は、視聴者さんからのメールを45分間ノンストップで紹介するだけ。CMもVTRもありません。

今夜のテーマは「ハマったこと」

スタジオには僕ひとり、カメラが2台とパソコンがあるだけなので、届いたメールを初見で読み続けます。もちろん下読みもありません。

番組も終盤に差し掛かった頃でしょうか。

「88ばぁこ」さんからのメールが届きました。

この方は、88歳のおばあさんで、去年は「87ばぁこ」、その前の年は「86ばぁこ」という名前で投稿してくれていました。

「86ばぁこ」さんの頃は、漢字変換や句読点にも四苦八苦する様子で一生懸命メールを送ってくださっていました。

最近は「若い人たちの交流の場を邪魔しちゃいけない」と、少し投稿が少なくなっていました。

今夜は久しぶりにメールが届いて、「ばぁこさんお久しぶりー!」なんて笑って手を振りながら、そのメールを読み始めました。

でも、読み始めてすぐに手が震えました。

『こんばんは 88ばぁこの娘です。母は3年間楽しみに見させて頂いていましたが、先月30日に天国へと旅立ちました。メールも上手く打てなくなり、自分は老いたから、もう若い人の邪魔したらあかんって言いながらも、久世さんがテレビに向かって「88ばぁこさーん!」って手を振ってくれるのが、本当に嬉しかったそうです。私に「テレビ見ててよ。久世さんが手を振ってくれるから!」って、いつも電話してきました。天国からも見ていると思いますので、これからも時々手を振ってやって下さいませ。長い間ありがとうございました。…以下略』

生放送中にもかかわらず、泣いてしまいました。

今、この文章を書きながらも声をあげて泣きました。

本当に悲しかった。

それと同時に本当に嬉しかった。

88歳のおばあさんが、一生懸命にメールで参加してくれたこと。

そのメールが読まれるのを楽しみにしていてくれたこと。

人生の最期に番組に参加するということを楽しんでくれたこと。

ばぁこさん、ありがとう。そしてお疲れさまでした。

テレビやラジオの向こう側に、「人」がいるんだということを、絶対に忘れません。

僕も人間だし、生きてりゃ楽しい事もツラいこともあるし、誰かの言葉に喜んだり、傷ついたりもします。

「人」と「人」であるという事を胸に、

今日も誰かが笑ってくれたらいいな

少しでも悲しみが癒えたらいいな

そんな風に、愚直に喋る仕事を続けます。

いつか終わりは来るのだから、せめて毎回愚直でいます。


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