無形資産の比率
昨日は、ソフトウェア残高の一覧から総資産にしめるソフトウェア比率の高い企業をリストアップして紹介してみました。
そして、今日の日経の記事でこのような記事を見つけました。
この記事における「無形固定資産倍率」は以下の条件で抽出しているとのことです。
これを元にしてランキングを作ってリスト化しています。
有料記事中では25位までのリストが出ていますが、ここでは10位までを抜き出してみます。
それで、ランキング1位の「キャリアインデックス」についてです。
ランキングの倍率では、実に294倍という大きな倍率になっています。
2020年3月末の数値で見ると、有形固定資産6百万円ほどに対して、無形固定資産が「のれん」を除いても、18億円近くあります。確かに、無形固定資産が大きいです。
しかし、ここでよく見ると、無形固定資産のうち「顧客関連資産」がそのほとんどのを占めていることがわかります。ではその内容とは?
2020年3月期の決算説明資料を見てみます。(10ぺーじより)
17.5億円の支出額のうち、17.2億円を顧客関連資産に計上
これが何かというと、日経の記事中にもありますが、リブセンスから「DOOR 賃貸事業」を購入した事によるものです。
ちょっと会計的な話になりますが、PPAという買収時の資産について無形資産を評価して区分していく処理があります。
これによって、購入した純資産と購入価格の差が「のれん」とその他の無形資産へと区分される訳です。
今回のキャリアインデックス社で発生した「顧客関連資産」も「のれん」とは別物として、この科目で資産計上されることとなった訳です。
この日経の記事での倍率の出し方は「のれん」は除外されていますが、「顧客関連資産」は含めて計算しているために大きな倍率となっている訳です。
ただ、個人的には、買収によって発生するものは、顧客関連資産のように他の科目で区分されるものであろうと広義の「のれん」と考えているので、この記事中にあるような「のれん」を除くけど、買収によって発生するのれん以外の科目は含めて考えるのはなんかちょっと統一感がないなという気もします。
(この辺り、何かこういった考え方、理論があるとかあれば、教えていただければと)
ちなみに、前回のソフトウェア比率のデータでも出したような同社のソフトウェア比率を計算するとこのように1.27%と、小さい数値となります。
ところで、記事冒頭(無料で閲覧可能)にあるこの説明箇所ですが。
上位にはアプリ開発やオンライン学習などのIT(情報技術)企業が並んだ。デジタル投資を進めて成長を目指す攻めの姿勢が目立つ
というか、この数式で表される無形固定資産倍率で並べれば業種的にそうなるのは当然な気はします。
要は、有形固定資産が少なくて、無形固定資産が多いと、この倍率が大きくなるので、有形の設備投資がほとんど不要なネット系企業が上位に来るのは当然といえば当然なのですよね。
そして付け加えると、ソフトウェアを資産計上するかしないかは会社の方針によっても変わってくるので、同じような開発してたとしても、必ずしも資産計上されるとは限らない点も注意が必要です。
これは過去にも述べてきたことの繰り返しではありますが、上記の理由により、ソフトウェア資産があるから、投資を多くしていて、資産が少ないから投資をしていない、という訳ではないという点です。
(とはいえ、わかりやすく伝えるためには、数値をならベてランキング形式で表した方が良いのは確かです)
それらを諸々踏まえた上で、こういった数値データを理解して分析してことが重要かな、というところですね。
いろいろな角度から、指標を用いて分析するというのは大事なことなので、今回日経が取り上げた無形固定資産倍率という概念も、どこかでちょっと触れていきたいと思います。
ちなみに、昨日の情報通信業におけるソフトウェア比率が1位だった「いい生活」は日経の無形固定資産倍率ランキングでは25位、2位の「ビープラッツ」は7位、3位の「ガーラ」は2位となっています。
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