フィリピンの平均寿命が短い!〜なんとなく、オリエンタリズム〜その1

フィリピンの人たちの平均寿命が短いことについて、さすがにフィリピンでは歳をとってから長生きできる人が少ないというような勘違いは見かけなくなったように思う。
人口に占める若年層の割合が多いフィリピンでは乳幼児死亡率の高さが日本よりもはるかに「平均値」に大きく影響を与えるからというのは割と普通に知られるようになったけど、ディティールに関してはやっぱりまだまだ雑な思い込みが元気いっぱい残ってる。

ある日本人運営のフィリピン専門のボランティア団体のHPでは、フィリピンの乳幼児死亡率が高い要因として、

1. 病院で出産せず自宅や路上で出産してしまう女性もいる
2. 母親に出産や子育ての知識がなく正しい育児ができない
3. 病気になりがちな子どもに薬を買い与える経済的な余裕がない。

を挙げていた。

このうち1と3は十分納得できる要因だけど、2に関しては「子供は母親(女)が育てるもの」という日本の固定観念がそのままフィリピンにも当てはまるに違いないという前提(思い込み)に立った考えと思われる。

情報が十分行き渡らない3、40年前ならまだしも、21世紀のネット時代、それでなくとも男女平等が叫ばれ、多くの「情報」がもたらされている昨今、日本以外のスタイルの子育てをしつつうまく回っている社会は世界中にいっぱいあるということに気づいていない。
ずっと日本国内で調子良くやってる人なら宜なるかな・・・だけど、フィリピン専門のボランティア組織ですらこれだ。

フィリピンではお年寄りの知恵は「お年寄りもの」ではなくそこに暮らすもの全員の知恵で、世代間の断絶も、「肝心なところ」ではそれほど見受けられず、家族・ご近所総出で子育てをしている。
こういうことは「見ようとすれば」簡単に見出せると思うが...

やっぱりフィリピンを「他者」として眺める視線のなすところだろう。意外とアカデミックな場面やエスタブリッシュメントな立場にいる日本人に多いように思う。

これを即典型的なオリエンタリズムと言う気はないけど、
『我々は持つべき知識を持ってるけど彼らは(我々が持っているのと同じ)知識を持っていない(だからダメなんだ)』
とするのはやっぱりオリエンタリズムの少なくとも残滓のような気がする。それよりも、
彼らは我々と同じ結論に達する方法を、違った形ではあるが決して偶発的ではなく体系的に持っている、と考えるほうがより合理的なような気がするが...

ちょっと凹みながらさらに探していくと、あった!なかなかいいこと言ってるHPが。
西宮の(タイガースの大ファンらしい(笑))、婦人科系のドクターのHP。
「フィリピンは医療環境を整えることにより平均寿命を長くする伸びしろは十分」
こういうポジティブな表現でこの手の文章を書く人、意外と少ない。「日本の技術を使って!」とか真っ先に出てこないのも好印象だった。


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