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第三章 住宅・保険・食事

◀第二章 英語でのトラブル    第四章 交通・安全▶

アメリカの住宅事情

留学など一時的な滞在をするときに滞在場所としてアパートを借りなければならないことが出てきます。アメリカでは、アパートの賃貸は基本的に1年契約です。この契約に私は常に悩まされてきました。1年ごとに借りなければいけないということは、年単位での引っ越ししかできないということになります。そのため、短期留学をする人が住むアパートを見つけるのは基本的に無理です。そこで登場するのが Sublet(サブレット:又貸し)です。よくあるパターンを紹介します。アメリカの大学は9月から学年が開始されます。9月から半年ぐらい留学生が大学で勉強を行って、その後、母国に帰っていきます。例えば留学期間が9月から2月までの半年間の場合でも、一年契約でアパートを借りないといけません。そして、自分が母国へ帰る前に、残りの契約期間中のアパートを又貸しする人を探さないといけないのです。

著者が一番好きなCornell大学の風景

アメリカでは、craigslistという口コミサイトがあり、個々にアパートのサブレットを探していますという広告があります。現在は別のサイトの方が活発かもしれませんが、私がアメリカにいた2005-2010年にはアパート探しや、サブレット探し、中古の家具や中古の自動車を探したり、買ったりする目的で結構利用していました。サブレットの形態はいろいろあります。完全に部屋を空けて貸してくれる人や、半年間家を留守にするので、すべてのものを置いたままで部屋を貸してくれる人など色々います。学生の場合、一軒家を数人で借りてシェアしている場合があるので、その中の1名としてサブレットを募集している所もありますので、数名と集団生活することになります。日本の学生のようにアパートでユニットバス付の1部屋で自分だけで生活するというのはあまり見かけません。イメージとしては、居間、キッチン、バス、トイレは共用で、自分だけのスペースは自分の部屋だけになります。集団生活が好きな人は良いのですが、日本人でなかなかそのような人は少ないと思いますので、できれば留学生なら、留学生同士で生活する、訪問研究者なら、少なくとも大学院生たちと生活するなどの生活習慣が同じような人と生活する方が良いと思います。例えば、学部生たち(undergrads)と生活すると、アメリカ映画でおなじみの毎晩パーティーのような状態になり、気が休まる時間が取れない状態になるので気を付けてください。私の経験としては、6人で一緒に住んでいて、バスとトイレが一緒についている形のものが1つしかなかったので、朝みんなで使うことが非常に不便でありました。私は、朝起きる時間を他の人とはずらして生活するようにして、不便さをどうにか回避しました。

次にアパートを自身で借りた場合やサブレットで部屋を借りた場合の具体的な生活について話していきましょう。私は最初の1年を共同生活の家に住みました。その後、3つのアパートに自分で契約して住みました。このすべてにおいて、ベッドとマットレスがついていました。冷蔵庫もついていました。洗濯機は、共用のコインランドリーであったり、部屋に個別に付いていたりしました。皆さんが始めにアメリカの家に住むときには、大きなシーツとタオルケットを持て行けば、数日はマットレスの上にシーツを敷いて、タオルケットをかぶって寝れば良いと思います。そのうち、布団(英語でもfutonで通じます)をホームセンターで購入すれば良いと思います。ソファーが付いているところがあったり、オーナーに頼むとソファーを部屋においてくれる場合もあります。部屋の中の明かりは、自分で準備するしかありません。基本的なものしかありません。また、基本的に家の中は暗い照明になっています。日本の住宅のように家の中が明るいというのはあまりなく、明るくしたいのであれば自分で照明を買って、部屋の中に配置しなければなりません。


アメリカでの生活で苦労したことBest1

私は、アメリカで5年間生活をしましたが、生活の中で一番違うと感じたのが、生活の場所と食べ物を買う場所との距離です。日本では私は都会での生活が長いので、家を出ればすぐそこにコンビニがある、これもある、あれもあるというように生活圏内に食事を取ったり、食べ物を買ったりする場所が存在しています。しかし、アメリカでは生活する場所にはお店はありません。住宅地は完全に住宅地です。自動販売機もありません。ところどころにコンビニがあったり、食べ物屋さんがあったりすることは全くありません。なぜそうなるのかというと、アメリカは完全に車社会です。住宅街はきれいな景観を作り出し、食べ物や日用雑貨類は車でショッピングモールに買いに行くというスタイルです。このスタイルの中でを車を持たない人が生活するとかなりきついです。ショッピングモールの近くに住まないと食べ物を得ることに相当の時間を取られます。アメリカには食の砂漠、あるいはフードデザート(food desert)という言葉がありますが、本当に日常生活が大変です。私は最初の3年間は大学の町に住んでいたので、学生すべてが車を持つことはできないことから、バス路線のルートが張り巡らされた地域になっていました。そのバスを使って、週末にはバスに乗って買い物に行って、大きな荷物をバスに載せて帰ってくるというスタイルを取っていました。当然、バスに多くの荷物を持って乗ってくる人が多いので、バスに乗っているみんなが許容してくれました。ときどきすごい荷物だなという人もいましたが、お互いさまですので、バスから荷物を降ろすのをみんなで手伝ったりしました。また、車を持っている友人が買い物に連れて行ってくれるというときには、チャンス到来ということで、日ごろ買えないようなものまで買って、自分の部屋に保存しておくことも行っていました。

友人の車でのお買い物は大量買い

2年間サンディエゴに住んだ時には、完全な都会でしたが東京のような都会でなく、車で都会に通勤する形の生活スタイルでした。日本人は、それだと高速道路がすごい混むのではないかと考え心配してしまいますが、確かに混みますが日本のようにはなりません。ほとんどの高速道路は無料です。一時的に混雑するだけです。アメリカの都会は、車社会です。車が駐車できない場所は、都会の中の本当に中心部分で、会社はその周りに点在しています。当然駐車場もありますので、車通勤ができる形ができています。私もこの状態では車に乗らないと仕事ができないと考え、車の生活を始めました。車の生活を始めた途端、お金は掛かりますが、快適な生活を送ることができました。毎週末にスーパーに行って、大量の食べ物を買い込み、車に載せてアパートの大きな冷蔵庫にどさっと入れるという、まさにアメリカンな生活を過ごしました。
 
今になって考えても、アメリカの食の砂漠は生活する上で本当にきつかったと感じます。超都会のニューヨークシティー(皆さんが考えるニューヨークのことです。アメリカ人は、ニューヨーク州のことをニューヨークあるいはニューヨーク州といい、マンハッタン島周辺をニューヨークシティーと言います。日本でいうと東京都と東京23区の違いです。)でしたら、日本の東京23区内の生活と同等になりますが、アメリカの都市はビジネス街とショッピング街があり、それ以外のところでは、食事をしたり、食べ物を買ったりすることができなくなってしまいます。アメリカでは、モールというショッピングセンターがあり、そこでなんでも買うことになります。日本のように個人事業主が自分の土地で店を開いてものを売っているというのがほとんど見られません。気を付けてもらいたいのが都会の近くにあるダウンタウンです。日本の皆さんはダウンタウンにある種、良いイメージを持つと思いますが、この地域は低所得者の方々が住んでいる地域で、危険性が高いです。そのようなところには、個人経営の店が点在しています。明らかに、車がないので郊外の大きなモールに買い物に行けないので、個人経営の店が繁盛しているといった感じです。昔の日本に近い形の生活スタイルですね。昔の日本の生活に近いスタイル、飲食店が近い、アパートが安いからと言って、このような地域に住むにもリスクが伴うことを十分に考えた方が良いと思います。


アメリカの保険事情

アメリカには日本のような国民皆保険制度がありません。そのため自分で民間の保険に入らないと保険制度の恩恵を受けることはできません。民間の保険は、想像するようにかなり高額なものになります。私が初めて大学の研究員として働くためにアメリカに行ったときには保険制度がよくわからなかったので、6か月の海外在住の保険に日本で加入して渡米しました。運良く、職場の保険に入れたのでダブルで保険に入っている期間がありましたが、日本の保険が切れた後は、大学の保険で何とか過ごしました。といっても、幸運にも一度も保険を使うことがありませんでしたが。アメリカの保険が高いことはある程度知っていたので、渡米前に歯の検査は十分に行って、心配な個所は十分に治療を行いました。私がアメリカ滞在中に会った日本人の中には、歯の治療のためにわざわざ日本に帰国したという人がいました。往復の航空券は高いが、それ以上にアメリカでの歯の治療は高額であるということです。日本では国民健康保険に加入すればすぐに保険の対象になることができるので、帰国することができるのであれば、帰国して治療した方が金銭的にも治療の完璧度合い的にもお勧めするとアドバイスされました。
 
私が大学で働いていた時に唯一、保険に関係したのは所属する研究室の学生がテニスをしていて、頭をぶつけて救急車で病院に救急搬送された時です。ケガや後遺症などはなかったのですが、1週間入院をしました。退院した後で、入院金額などについて聞いてみたところ、総額150万円ぐらい実際には掛かっており、それらはすべて大学の保険で賄われたということでした。この中には、救急車の利用料金、親が病院に駆けつける、滞在する料金なども含まれるということで、学生の保険なのでこの辺は完璧であることが分かりました。この学生は、大学の正規の学生なので、このくらい手厚くしてくれる保険に加入していましたが、語学留学などで一時的に滞在する学生の保険は、どのようになっているのか、例えば、派遣元(自分の大学)と派遣先(留学している大学)のそれぞれの保険について確認しておく必要があると思います。個人で夏休みに語学留学をする時などは、派遣元はありませんので、自分で語学留学先の保険について検討し、不十分であれば、自分で保険契約をする必要があります。
 
今度はアメリカの一般企業に勤めた時の話です。この場合には、会社が契約する保険に入ることができました。すごい量の契約書が渡され、いろいろなところにサインしましたが、正直ほとんど読んでいない状況でした。実は日本人がよくやる、わかったふりをしてサインしてしまう行動ですが、今でしたらすべてGoogle翻訳して、おおよその内容把握をしておいた方が良かったなと思っています。私は一度だけ健康診断書が必要だったので、ショッピングモールの中にあるクリニックに行ったことがあります。この時は結局、保険の対象にはならなかったと記憶していますが、契約した保険会社が認めるクリニックなどへ行かなければならないということを聞いて、契約した保険会社の資料の中から住んでいるところに近いクリニックに一つ一つ電話して健康診断書を作ってくれるクリニックを探しました。私の場合には無かったのですが(保険対象外の健康診断なので)、病気で診察を受ける場合には、保険会社の契約者番号のようなものを聞かれて、その情報が正しければ予約が受け入れられるようです。
 
保険に関しては、私はほとんど海外で病気になった経験がないので、あまりためになる話はないのですが、もし仮に病院に行くことがあれば、その病院から診断証明書と支払いをした時の証明書ももらっておくことによって、日本に帰国した時に海外での医療費を日本の国民皆保険制度の枠内で一部の費用を払い戻しできることがあります。私はこの制度を知っていたので海外に行くときには、日本の制度で費用を払い戻しするための書類のコピーを持っておき、医療費が発生した場合には、その書類に基づいて証明書を作ってもらうようにしています。私の場合は、海外で子供が歯が痛くなって歯科クリニックに行ったときにこの制度を使いました。海外では医療制度が日本と大きく違っているので、渡航前の準備が必要です。


パーティーに参加

海外ではパーティーがよく開かれるというのは日本人にも知られています。招待されると気を使ってしまって大変だなと思いますが、招待されないことも寂しい感じがして適度に参加することができればというように考えていました。ナイトライフのパーティーは、それなりに正装して参加するので非常に気を使います。私が参加したナイトライフのパーティーは、当時所属していた教授の家で開催されるパーティーと、会社の社長が主催するパーティーが最も形式ばったパーティーでした。当時私は単身で海外生活をしていたので、パーティーには一人で参加することになり、他の人は夫人を連れてたり、ボーイフレンド・ガールフレンドを連れて参加しているので、ちょっとさびしい感じも受けましたし、その辺の話題が無くて困ってしまいました。日本にいてもこのようなパーティーが苦手で、さらに英語が得意でない、単身でパーティー参加の三重苦でかなり苦戦しました。これをどうすべきかは未だに答えが見つかりません。同行者と一緒に参加すれば、同行者を知り合いに紹介したり、どこに出かけたとかのたわいもない会話をして過ごすことが無難に乗り切ることができるのではないでしょうか。

研究室での誕生パーティーと卒業試験合格の打ち上げバーベキュー

また、昼間のパーティーもあります。大学の研究室に所属していた時は、誕生日、進級試験などに合格すると昼間の時間にパーティーを開きました。ちょっと大きな成果が出ると、公園に行ってバーベキューパーティーをします。バーベキューの場合には、一通り食べ終わるとサッカーやバトミントンなどちょっとしたスポーツイベントが始まるので、私の得意分野でやっと来たかと参加して、時間を潰します。スポーツは会話の必要がなく、プレーでコミュニケーションを取ることでどうにか、私なりのコミュニケーションがようやく通用できました。

卒業試験合格の打ち上げバーベキュー

パーティーの時の会話で驚いたのが、チーズとワインのおいしさ自慢話です。大学院生と大学院を卒業した20代後半から30代前半の若者が、このチーズはうまい、このワインとの組み合わせが良いということを熱心に話していました。さすがに欧米の人々だなと感心しました。日本人の若者で、みそと日本酒の話をできるのはどれほどいるのかなと考え、食に対する奥深さを考えさせられました。

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松本 太
工学部・電気自動車専用リチウムイオン電池、燃料電池