精魂尽きて
1週間の組み立てというのがなんとなくある。出張が続いた次の日は、1日オフィスでデスクワークをしたり、金曜はラストスパートのがむしゃらな動きが出来たり。
最近はこの組み立てが難しくなってきた。部下の同行、部下の書類確認、部下との会議。部下に合わせたスケジュールになる。
少し前に変わった部長は21時からの会議が好きだ。そうなると22時に寝る息子と話すことが出来ない。部長は子供が家を出てから、どうやら出来るだけ家に帰りたくないようだ。
とにかく自由に自分のやりたいことだけをやる1日を過ごすことにした。家族に内緒で有給休暇を取得した。
「いってきまーす」
家族に気づかれないようにいつものように家を出る。電車に乗り、会社のビルの前まで行きただただ突っ立つ。
続々とビルに忙しなく入っていく人々をただただ見る。
俺は今日、自由なのだ。
部下が俺に向かって歩いてくる。急いで隣のビルに身を隠す。今まで味わったことのないスリルを味わうことが出来た。
タクシーに飛び乗り、取引先に向かう。
「すいません、出来るだけ急いでください」
本当は急ぐ必要はない。そもそも用がない。
「急いでるから領収書いらないです」
本当にいらない。今日の領収書は落ちないから。
取引先のビルの前でただただ突っ立つ。
焼肉食ってソープ行って漫喫で夜まで寝た。
もうちょっと人生頑張ろうと思う。