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7・10原子力規制委会見

 東京電力が福島第一原発2号炉において8月中にもテレスコ式装置で燃料デブリの取り出しを開始する予定について、原子力規制委員会の山中伸介委員長は2024年7月10日(水)の定例会見で「一つのサンプルよりペデスタルの内外部の状況をカメラ等で確認する」重要性について語った。
 福島第一原発については1号機の炉内の状況はかなり分かってきているものの他の号機についてはまだなので、「炉内の状況を確認しながら、大規模な取り出しに向けて基盤を作っていく」と山中委員長は語った。
 「テレスコ式ということで数グラムのサンプルを取り出してエンクロージャーといわれる施設の中で容器に移し替えて移動させ、輸送装置の中に移し替える・・・次のステップのロボットアームについても同じようなことをトライすると聞いている」。
 エンクロージャーとは「試験的取り出しルートの入り口となる原子炉格納容器貫通部に接続され、燃料デブリが確認された原子炉格納容器の底までアームを伸ばす仕組み」のこと。
 山中委員長はいう、「テレスコ式は比較的軽量だが、ロボットアームになると重量化されたものでそれを遠隔で動かす難しさがあると思うので、トラブルを経験することもあるかと思っている」。
 作業員の被ばくなどの安全面について、山中委員長は「最悪の被ばく線量を考えてサンプル量を今、産出しているところだと理解している。今後の大量取り出しに向けて、取り出し方法・作業方法を、今回の経験をもとに蓄積していってほしい」と述べた。

大飯原発入門証の紛失
 また、関西電力大飯原発(福井県)の入門証を原子力規制庁の元非常勤職員が紛失していた件について、「あってはならないことで、大変遺憾で申し訳なく思っている」と述べ、再発防止策を講じるよう指示したという。
 この件が公表されたのが「原子力規制委員会アーカイブ検索システム(e-address)」上だったことに関して記者から不適切だったのではないかとの声が上がったが、山中委員長は「問題はなかった」とした。
 また、これまで金属などに適用してきた「クリアランス」を、福島第一原発からの影響を受けている土壌に対しての適用について、山中委員長は「フォールアウト(放射性降下物)があるような場所のクリアランスの考え方を検討していかねばならないという実情だと理解している」という。
 クリアランスとは「放射性廃棄物規制除外」のこと。つまり「放射性物質として扱わないこと」で「クリアランスレベル」とはその基準のこと。
 ドイツ、スウェーデン、フィンランドなどでは、クリアランスレベルが制度化されて、実際に埋立処分および再利用に適用されている。

既成事実化している「クリアランス」?
 「溶融を伴うクリアランス」についてスウェーデンに視察に行ったが、「金属のクリアランスについてIAEA(国際原子力機関)での基準に定められている。基準に沿ったクリアランスをどうしているか調査して、意図的な希釈を行わないという条件で、クリアランスが行われていることを確認したところです。今後、事業者からの提案に基づいて審査していきます」。
 これについて日本では議論が不十分なままであるのにすでに「前提化」しているのではないか、「既成事実化」しているのではないかとの記者からの問いに対して「事業提案があればきちんと審査してゆくという考え方に変わりありません」と山中委員長は語った。

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