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藤田嗣治の家へ行こう!

 軽井沢安東美術館(長野県北佐久郡軽井沢町軽井沢東43-10)では2023年9月15日(金)より2024年2月20日(火)まで開館1周年記念特別企画「ようこそ藤田嗣治のお家へ」を開催する。
 同館の創設者である安東泰志・恵夫妻が自宅の壁一面に藤田をかけて家族の歴史とともに慈しんできたように、200点を超すコレクションから、数々の初公開作品を含む、圧倒的な規模感で届けられる。
 また、全館を通じて初期から晩年までの藤田の人生を辿るほか、時代ごと、アトリエや自宅などで過ごすプライベートな藤田の姿も紹介する。これら初公開される10数枚のプライベート写真は、君代夫人関係者から寄贈していただいた貴重な手紙など藤田夫妻の遺品のなかから展示される。

軽井沢安東美術館 展示室5 藤田嗣治の絵の数々とともに自宅のようにくつろげる空間

 主な初公開作品は次の通り:
〇《猫のいる自画像》(1926年 コロタイプ・紙)ー1920年代後半に描かれた自画像の多くには、上向きに顎を突き出し、牙をわずかに1本だけ見せるキジトラの猫の姿が寄り添っている。「サインがわりに猫を描くこともある」と本人が語っているように、藤田にとって猫はもっとも身近で親密な存在だった。
〇《婦人像》(1932年 水彩、墨・紙)ー藤田のモデルとして多くの作品に登場するマドレーヌ・ルクー。1931年10月、藤田は出会ってまもないマドレーヌを連れて中南米へと旅立つ。この作品はそんな道中に描かれたもので、当時25歳だったマドレーヌの愛らしさと美しさが絶妙に表現されている。
〇《徐悪魔 精進行》(1952年 油彩・ガラス)ー戦後、戦争責任をめぐる問題に翻弄された藤田は日本を去ることを決意。1950年、再びフランスに戻って来た。この作品はそれから2年後の1952年に制作されたもの。「ゴシップ」「からかい」「嫉妬」に苦悩した藤田がパリへと渡り、「財もない」「アトリエもない」「名誉もない」自身に「私に力を与えよ」と跪き、天を仰ぐ姿が描かれている。当時の藤田の心情が伺えよう。
〇《猫のキリスト》(1958年 陶製<マドゥーラ工房>)ー本作品は、藤田が人生最後の8年間を過ごしたヴィリエ=ル=バクルの家に飾られていた陶製の飾り絵皿。壁掛け用の針金細工も、当時、藤田自身が施したものと思われる。作品の裏側には、ピカソの陶器作品を一手に製作していたことで名高いマドゥーラ工房の刻印が入っている。

軽井沢安東美術館 展示室4 撮影:Takahiro Maruo

 同時に特別展示「藤田嗣治と巡るパリー『魅せられたる河』よりー」も2023年12月12日(火)まで行われる。藤田65歳の誕生日を記念して、1951年に刊行された挿画本『魅せられたる河』。
 このなかに収められた作品は藤田が愛したパリの風景で溢れているーオペラ座、パレ・ロワイヤル、エリゼ宮、サン・フィリップ教会、ヴァンドーム広場、テルヌ広場・・・この作品で藤田はパリ市から勲章を贈られた。

軽井沢安東美術館 エントランス 撮影:Ryota Atarashi

 軽井沢安東美術館の開館時間は午前10時から午後5時まで(入館は午後4時半まで)。休館日は水曜日(祝日の場合は開館。翌平日が休館となる)。年末年始・1月中旬・2月下旬も休館(公式サイトで要確認)。観覧料は一般2300円、高校生以下1100円、未就学児無料。
 問い合わせは0267-42-1230.公式サイトはhttps://www.musee-ando.com□

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