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「ひとを描く」展

 古代ローマの大プリニウスの「博物誌」には、コリントの陶器商の娘が旅立つ恋人の姿を残しておくために壁に影をかたどったという。この物語は18世紀後半から19世紀初めには絵画の起源として引き合いに出された。
 実際、ヨーロッパの美術の歴史を見てみると、「ひとを描く」ことは作品制作の重要な要素のひとつだった。
 古代ギリシア陶器と近代ヨーロッパ絵画など計85点で人物表現の豊かさを紹介する「ひとを描く」展が2024年11月2日(土)から翌年2月9日(日)までアーティゾン美術館(東京都中央区京橋1-7-2)で開催される。
 エドゥアール・マネやポール・セザンヌの自画像は自らの技量を示すことの出来る題材であると同時にさまざまな新しい表現の実験の場だった。

ポール・セザンヌ《帽子をかぶった自画像》1890-94年頃、石橋財団アーティゾン美術館


 ピエール=オーギュスト・ルノワールの手がけた肖像画は画家にとって重要な生活の糧になっていた。

ピエール=オーギュスト・ルノワール《すわるジョルジェット・シャルパンティエ嬢》1876年、石橋財団アーティゾン美術館


 アンドレ・ドラン《ヴァイオリンを弾くヴラマンクの肖像》はドランがヴラマンクをモデルに描いた作品だ。

アンドレ・ドラン《ヴァイオリンを弾くヴラマンクの肖像》 1905年、石橋財団アーティゾン美術館


 また、物語に登場する人物を描いた作品もあった。
 本展では19世紀から20世紀にかけて活躍したヨーロッパの画家たちによる人物画を一望することが出来る。
 古代ギリシア陶器30点も一堂に展示される。
 「ヘラクレスとケルベロス図」「男女図」「婦人図」などの様々な人物と、ヨーロッパ近代画家らによって描かれた人物を見比べてみることで、人物表現の豊かさが感じ取れるだろう。

「ブーローニュ441の画家」《アッティカ黒像式頸部アンフォラ「ヘラクレスとケルベロス図」》紀元前520-510年頃、石橋財団ア ーティゾン美術館 
「メイプルウッドの画家」《アプリア赤像式鐘形クラテル「男女図」》紀元前4世紀第2四半期、石橋財団アーティゾン美術館


 初公開となるのは藤島武二と長谷川路可による古代ローマの模写作品。

長谷川路可《「アルドブランディーニ家の婚礼図」の模写》1955-56年、石橋財団アーティゾン美術館


 イタリアを旅行した日本人画家たちにとって古代ローマの作品は魅力的なものだった。この二人の模写作品はアーティゾン美術館開館以来、初めて公開されるものとなる。

アーティゾン美術館外観一部


 開館時間は午前10時から午後6時(毎週金曜日は午後8時まで)。入館は閉館の30分前まで。休館日は月曜日(11月4日、1月13日は開館)、11月5日、12月28日~1月3日、1月14日。
 日時指定予約制。(9月3日(火)よりウェブ予約開始)。ウェブ予約チケット1200円、窓口販売チケット1500円、学生無料(要ウェブ予約)。中学生以下はウェブ予約不要。
 ☆予約枠に空きがあれば、美術館窓口でもチケットを購入出来る。
 ☆この料金で同時開催の展覧会を全て観覧出来る。
 同時開催ージャム・セッション 石橋財団コレクション 毛利悠子―ピュシスについて(6階 展示室)、石橋財団コレクション選 特集コーナー展示マティスのアトリエ(4階 展示室)

 アーティゾン美術館公式サイトは https://www.artizon.museum/  展覧会詳細ページは https://www.artizon.museum/exhibition/detail/576


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