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ワイナリー@あきる野

 現役の歯医者だ。だが今はワイナリー経営者との二足の草鞋を履く。
 東京都心から40-50キロ圏内に位置するあきる野市の自社畑でブドウを育て、同じ敷地内の醸造所でワインを造っている(株)ヴィンヤード多摩の森谷尊文(もりやたかふみ)社長である。
 「お酒はもともと好きでした。ワイン造りのきっかけは、1999年にイタリアに行った帰りのJAL機内でワインスクールのことを知ったことです。その銀座のスクールにほぼ毎週通って勉強しました」。
 そうこうするうちに、「西多摩三師会」という医師、歯科医師、薬剤師の組織から会合でワインを出すのでセレクトしてほしいと森谷さんは頼まれた。さらに地元の医師会のリーダーから地域の医者で集まってワイン会をやろうといわれ、その流れからワインを造ってみないかとなったという。
 だが、ワイン造りを始めるまで難航した。
 最初、青梅でのワイン造りを目指した。しかし、「地形の問題でブドウを植えるスペースが限られてしまった。また、青梅は梅の歴史が長いので地域として梅に固執しているところがありました」と森谷社長。
 次に選んだのがあきる野だった。「50年くらい前まではこのあたりはブドウ畑ばかりでした。それが跡継ぎがいなくてみんな辞めてしまっていた。跡継ぎはブドウでなく梅など違うものを手がけていました。今は、それを継ぐ人さえいなくなって、このへんはレンタル農家ばかり」。
 「最初から苦労ばかりだったといってもいい」と森谷社長は振り返る。「畑を借りるのに会社を作らなければならなかった。役所に話を通し、農業委員会に話を通し、税務署の許可をもらわなければならなかった」。
 「すべてクリアするのに3,4年かかりました」。

「ヴィンヤード多摩」の入り口


 最初の畑を作り始めたのが2013年だったという。初めてブドウを植えたのが2015年。初収穫が2018年だった。2019年春、初の地元産ワイン(赤)を売り出すことが出来た。
 2018年は他の人にワイン造りを任せたが、翌年から森谷社長自らが手がけるようになった。
 その森谷社長が初めて作ったご当地ワインが何と「「女性の選ぶサクラアワード」の金・銀賞を受賞した」と森谷社長は嬉しそうに話す。(見出しの上にある冒頭の写真の後ろの棚に表彰状がみえる)
 森谷社長は歯科医、耳鼻科医などから成る「摂食嚥下リハビリテーション学会」のメンバーだ。目的は高齢者に食べる楽しみを与えるということ。「食も、施設に入ったりすると、あまり美味しくない。今度、ここ(ヴィンヤード多摩)で家族の会を開く予定です」と話す。
 ワイナリーの今後の目標については「畑を増やして、ブドウの種類も増やす」ことだという。森谷社長は、ワインの産地として歴史がある「長野県や山梨県ではワイン用ブドウを作るのを減らしている。ペイしないからだ。みんな食用ブドウに変えている。そちらの方が高いからです」と説明する。
 その中で、森谷社長は自分のところのワイン畑は今まで60アールだったところを今年30アール増やした。「いま、ほぼ1ヘクタールとなったが、これを2、3ヘクタールにしていきたい」。

あきる野産ワインが並ぶ


 ブドウの種類についても「現在、試験栽培も含めると計10種類ほど育てている。最終的には5,6種類に絞っていきたい」。
 森谷社長によると、現在のヴィンヤード多摩の主力赤ワインはヤマソーヴィニヨン。これは山梨大学が開発したもので山ぶどうとカベルネスーディオンを掛け合わせたもの。
 白のメインはモントブリエだ。「今度、甲州をやってどこまで育つのかを見てみたい」と抱負を述べた。
 ヴィンヤード多摩の住所は:〒190-0143東京都あきる野市上ノ台55,℡&fax042-533-2866。URLは:https://vineyardtama.com


 
 

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