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藤田の戦争画を見た!

 今年も戦争について考える時期がやって来た。
 軽井沢安東美術館(長野県北佐久郡軽井沢町軽井沢東43-10)では2023年8月3日(木)より「戦争の時代の藤田嗣治 1936-1945年」を開催している。9月12日(火)まで。
 同企画では、所蔵する100号のポスター原画《勇敢なる神風特攻隊》(1944年頃 油彩・キャンバス)を初公開している。
 また同時期に描いた《佛印・河内 安南人町》(1943年 油彩・キャンバス)なども展示されている。

軽井沢安東美術館展示風景 (左)藤田嗣治《勇敢なる神風特攻隊》1944年頃

 日本刀を傍らに据えた航空兵の図像だが、これは当時のスローガン「撃ちてし止まむ」の広告図録にもしばしばみられる(美術史家・佐藤幸宏氏)。
 藤田の父親・嗣章は小説家で医師の森鴎外の後任として陸軍軍医総監の地位に就いた人物だ。そして兄の嗣雄の妻モトも陸軍大将児玉源太郎の娘だった。藤田が軍部に協力したのは、そのような家柄の影響もあった。
 1938年、軍部の依頼で中国戦線を取材。第二次大戦勃発やナチスドイツのフランス侵攻を受けて、1940年5月にフランスから帰国。同7月、東京に戻り、戦線取材と戦争記録画制作にのめりこんでいくのである。
 藤田はおかっぱ頭を丸刈りにして非常時への覚悟を示した。南方の戦線への旅が続いた。1943年初夏、藤田の戦争画としてはおそらく一番有名な《アッツ島玉砕》(東京国立近代美術館蔵)を描く。
 また、軽井沢安東美術館の所蔵ではないが、日中戦争時の銃後の活動を描いた《千人針》(1937)や戦勝祈願で伊勢神宮に赴く昭和天皇を主題にとった《天皇陛下伊勢の神官に御親拝》(1943)などの作品もある。
 今回、藤田以外の画家による戦争画も特別展示室にて紹介されている。

 (一番左)石井拍亭《ト晩とする攻撃機》、(中央)古嶋松之助《船渠の引揚作業》(『大東亜戦争 海軍美術』大日本海洋美術協会(1943年刊行))など
(中央)高橋亮《敵中降下 陸軍落下傘部隊》(『大東亜戦争 海軍美術』(大日本海洋美術協会1943年刊行))など

 同時に9月12日(火)まで「藤田嗣治 猫と少女の部屋」も引き続き開催中。1949年のニューヨーク滞在中に描かれた貴重な作品《猫の教室》(1949年 油彩・キャンバス)が初公開されている。およそ120点の作品を一堂に楽しめる。

(左)藤田嗣治《猫の教室》1949年 油彩・キャンバスなど
軽井沢安東美術館の展示風景
軽井沢安東美術館の展示風景
屋根裏展示室

 開館時間は午前10時から午後5時まで(入館は午後4時30分まで)。休館日は水曜日、ただし休日の場合は開館で翌日が休館。8月は9、16,23日の水曜日も閉館。
 観覧料は一般2300円、高校生以下1100円、未就学児無料となっている。オンライン予約の場合、100円引き。
 連絡先は0267-42-1230。詳しくは公式サイトwww.musee-ando.comへ。フェイスブックは@KaruizawaAndoMuseum、インスタグラムは@karuizawa_andomuseum。
 代表理事の安東泰志と妻・恵夫妻が長年収集し、自邸に大切に飾ってきた藤田嗣治の作品のみを常設展示する美術館として2022年秋にオープンしたのが軽井沢安東美術館である。

軽井沢安東美術館の中庭


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