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民藝-美は暮らしの中に

 約100年前に思想家・柳宗悦が説いた民衆的工藝「民藝」。
 日々の生活の中にある美を慈しみ、素材や作り手に思いを寄せるーーこの「民藝」のコンセプトはいま改めて必要とされており、私たちの暮らしに身近なものになりつつある。
 そこで、民藝について「衣・食・住」をテーマにひも解き、暮らしで用いられてきた美しい民藝の品々約150件を展示する。
 また、いまに続く民藝の産地を訪ね、そこで働く作り手と、受け継がれている手仕事も紹介する。
 さらには、2022年夏までセレクトショップBEAMSのディレクターとして活躍し、現在の民藝ブームに大きな役割を果たしてきたテリー・エリス/北村恵子(MOGI Folk Art ディレクター)による、現代のライフスタイルと民藝を融合したインスタレーション(場所や空間全体を作品として体験させる手法)も見どころのひとつ。
 民藝とは何かーそのひろがりと今、そしてこれからを展望する「民藝MINGEIー美は暮らしのなかにある」が2024年4月24日(水)から6月30日(日)まで世田谷美術館(世田谷区砧公園1-2)で開かれる。
 この展覧会は以降、富山、愛知、福岡に巡回する予定。

〇第1章「1941生活展-柳宗悦によるライフスタイル提案」ー1941(昭和16)年、柳宗悦は自身が設立した日本民藝館(東京・目黒)で「生活展」を展開。民藝の品々で室内を装飾し、いまでいうテーブルコーディネートを展示し、暮らしのなかで民藝を活かす手法を提示した。当時としては珍しいモデルルームのような展示で画期的だった。実際に出品された作品を中心に「生活展」の再現を試みて、柳が説いた暮らしの美を紹介する。

柳宗悦 1936年撮影 ©朝日新聞社
 日本民藝館「生活展」会場写真 1941年
 チャイルズ・スクロールバック・アームチェア イギリス 19世紀 日本民藝館蔵

〇第2章「暮らしのなかの民藝ー美しいデザイン」ー柳は陶磁、染織、木工などあらゆる工芸品のほか、絵画や家具調度など多岐にわたる品々を、日本のみならず朝鮮半島の各所、中国や欧米などへ旅し、収集を重ねた。時代も古くは縄文時代から、柳らが民藝運動を活発化させた昭和に至るまでと幅広い。とりわけ同時代の、国内各地で作られた手仕事の日常品に着目し、それらを積極的に紹介した。この章では、民藝の品々を「衣・食・住」に分類し、それぞれに民藝美を見出した柳の視点をひも解く。

  屋号入革羽織 江戸時代 19世紀 静岡市立芹沢銈介美術館蔵
 (上から)流描指輪(2点) 河井寬次郎(細工:増田三男) 京都 1930-40年代/赤漆彫卍文帯留(右) 黒田辰秋 京都 1930年頃/銀象嵌赤漆花字帯留(左) 青田七良 京都 1930年頃/色絵五弁花模様帯留 富本憲吉(細工:増田三男) 東京 1931年/染付更紗模様帯留 富本憲吉(細工:増田三男) 東京 1931 年 いずれも個人蔵 Photo: Yuki Ogawa
 スリップウェア角皿 イギリス 18世紀後半-19世紀後半 日本民藝館蔵 Photo: Yuki Ogawa
網袋(鶏卵入れ) 朝鮮半島 20世紀初頭 日本民藝館蔵

〇第3章「ひろがる民藝ーこれまでとこれから」ー柳の没後も民藝運動は広がりを見せた。濱田庄司、芹沢銈介、外村吉之介が1972(昭和47)年に刊行した書籍『世界の民芸』では、欧州各国、南米、アフリカなど世界各国の品々を紹介。各地の気候風土、生活に育まれたプリミティブなデザインは民藝の新たな扉を開いた。一方、民藝運動により注目を集めた日本各地の工芸の産地でも、伝統を受け継いだ新たな製品、職人たちが誕生していった。国内5つの産地から、これまでと現在作られている民藝の品々や、そこで働く人々の”いま”を紹介する。そして本章の最後では、現在の民藝ブームの先駆者ともいえるテリー・エリス/北村恵子(MOGI Folk Artディレクター)の愛蔵品や、世界各地で見つけたフォークアートが”いま”の暮らしの融合した「これからの民藝スタイル」をインスタレーション展示で提案する。

 小鹿田焼(大分、現代作:坂本工窯、坂本浩二窯) Photo: Yuki Ogawa
 八尾和紙(富山、製作風景:桂樹舎) Photo: Yuki Ogawa
MOGI Folk Art ディレクターのテリー・エリスと北村恵子 Photo: Yuki Ogawa

 開場時間は午前10時から午後6時(入場は午後5時半まで)。休館日は月曜日(ただし、4月29日(月・祝)、5月6日(月・祝)は開館、5月7日(火)は休館)。料金は一般1700円ほか(未定)。
 公式ホームページは https://mingei-kurashi.exhibit.jp/ 案内は050-5541-8600(ハローダイヤル)まで。

 

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