種差海岸からの花便り
北限植物と南限植物がとなり合い、波打ち際に高原植物が咲く。街からそう遠くない所に、多様な草花が共生する場所が青森県八戸市の種差海岸。
種差海岸は同市最東部に位置し、太平洋に面している。
1937(昭和12)年12月に国の名勝に、蕪島から大久喜にかけてのおよそ12キロが指定された。1953(昭和28)年には種差海岸階上岳県立自然公園に指定されて、2013(平成25)年に陸中海岸国立公園に編入され、名称は三陸復興国立公園(種差海岸階上岳地域)となった。
地名はアイヌ語の「タンネエサシ」(長い岬)からきているという。
種差海岸では、春から秋まで、かわるがわる、競うように花が咲く。まさに異次元の世界。訪れる人々を、潮風とともに癒してくれる。
「種差海岸からの花便り」として、今回は花期5月~7月をお届けする。
まずはエゾノシシウド。厚く照りのある葉で、初夏の草原や岩の間に咲く。北方の海岸性植物で、種差を南限とする代表的な植物だ。
そして、エゾノレンリソウ。つる性のマメ科の中で珍しく湿った草地を好み、ほかの草にからみつく。海霧で花の鮮やかさが増す。
これはご存じだろう。ハマナスだ。自生し、砂浜の後方で藪をつくる。果実を「海の梨」と見立てた。県南地方では盆の供え物とする。白い花もまれにある。
次はフナバラソウ。山地や海岸の草原に、ややまれ。ボート型の果実からこの名前がついた。地域では「チドメ」とよばれるガガイモの仲間だ。
オオハナウドは大型のセリ科の植物。直径50センチほどになる大きな花弁をつけるが、一つ一つの花は大の字型で美しい。
アサツキも知られている植物だ。草原から岩の上まで生育。花の形からネギの仲間だと分かる。ネギよりも薄い「あさぎ色」の葉が名の由来だ。
キリンソウは草地や岩上に生育し、厚い葉で厳しい環境に耐える。根が想像上の動物「麒麟」の足に似ているという。
マイヅルソウは秋に赤い実をつける。葉は手のひらサイズが普通。海抜0メートルの高山植物。
(青森県八戸市の「種差海岸散策ハンドブック花の渚。」の高橋晃氏による文章をベースとした。郷土史家の江刺家均氏の協力を得た。)
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