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片思いの行方。

小学6年生の中では大きい体格。

どちらかというと無口。


一見すると怖そうだけれど、

笑うとくしゃっとくずれる顔が好きだった。


男の子と話すのが苦手だった私は

彼とは、最低限のことしか話せなかった。


それでも、そんなやりとりのなかで

彼の優しさに触れて、


私は彼に恋をした。



皆が彼をあだ名で呼ぶのが羨ましくて

頭の中で、

あだ名を呼ぶ練習をしてみたけれど、


結局、口にすることはできず。



卒業式の日。

誰からともなく、
各々の卒業アルバムに寄せ書きをはじめた。


周りの皆が
彼にお願いしているところに便乗して

私も勇気を出して、
自分の卒業アルバムを差し出した。


彼が書いてくれたのは

『よっしゃー。』の一言。


たったそれだけ。


それだけだったけれど


彼が書いてくれた。


それが嬉しくて、

そのページは私の宝物になった。



その後、

私と彼は同じ中学に進学したけれど


距離は縮まることはなく、


吹奏楽部だった私は

音楽室のベランダから


野球部で一生懸命ボールを追いかける

彼の姿を探して眺めるような

そんな日々だった。



そんなある日、


彼に彼女ができたという噂を耳にする。


そっか。


不思議と、
悲しい気持ちはなかった。


でも、
最後に気持ちだけは伝えたくて


手紙を書いて、

下駄箱に入れた。


「大好きでした。」




・・・


さて、話はここで終わらない。


手紙を入れただけでは満足しなかった私。



自分の気持ちは伝えたけれど、

ちゃんと彼から返事を聞いてけじめをつけたい!!と息まき、


彼に電話をすることにしたのだ。


当時はまだ携帯電話もポケベルもない時代。


自宅には自分の親がいるからと

硬貨を握りしめて、公衆電話へ。


100円をいれて

彼の自宅の電話番号を押す。


電話がつながると

彼のお母さんが出て、


ドキドキしながら、

彼の下の名前を呼んで、


・・・


『もしもし?』

耳もとで彼の声が聞こえる。

それがくすぐったくて、

でも、ちゃんと話さなきゃと気合を入れて
話始める。


「あのっ。手紙を入れたんだけど・・」


『・・・うん』


「好きです」


『・・・ごめん』


「あっ。うん!ありがとう。私っ!!!」


ガチャっ。ツーツーツー・・・・。


突然、電話が切れて
受話器から無常に流れるのは、話し中の音。



あ・・・。私、

硬貨追加するの、忘れてた。



しばらく、呆気にとられるも、

自分のやらかしに気づいて、


そっと、受話器を置く。



・・・まぁ、返事は聞いたし、


いっか


振られたけれど、

自分の口から気持ちを伝えられたこと、

そして、

ちゃんと彼の気持ちも聞けたことに満足して、


私の気持ちは晴れやかだった。


公衆電話ボックスを後にして

心配してくれていた親友の元に向かう。


その、ヘンテコな幕切れを報告して

突っ込みをいれてもらって、

笑いあって、


私の3年の片思いは、
ちゃんと(?)幕を閉じたのだった。



Yくん、びっくりさせてごめんね。
好きだった時間、今も素敵な想い出です。
ありがとう。

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