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三日月町の境界線シリーズ

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シリーズ小説です。基本1話完結型。 1話以外は、今のところ以前の小説を書き直したものです。
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#短編集

一:『鏡池』

「すみません。お水をいただけますか?」  手を挙げると、すぐ近くにいた背の高い男性店員が…

二:『隙間から』

 隣に座る浮浪者が語り始めるのを、聞くか、聞かないか。  話を聞くくらい、本来なら些細な…

三:『やる気を食う怪物』

 教室に入ってきたのが誰なのか、顔を上げなくても分かる。教室にいた女子生徒達の囁き声には…

四:『人魚すくい』

 金魚すくいは『ゲーム』だ。  取れるか、取れないか、何匹取れるのか。そういう『ゲーム』…

五:『海洋学者の疑問』

「私は、海洋学者だ」  声をかけるとこの人はいつもそう答える。聞いてもいないのに毎回そう…

六:『ねがいごと』

 カウンター席に腰掛ける男に抱いた印象は、少しばかり挙動がおかしい、というものだった。 …

九:『忠告する者』

 時刻は16:30過ぎ。高校時代にはいくつかの文化部を掛け持ちしていた。演劇部とか、美術部だとか。ほとんど顔を出してはいなかったけれど。だからといってすぐに帰宅はせず、空き教室で創作の時間に費やしたり、図書室で資料集めなどをしていたものだから、帰る時間は18時過ぎくらいだった気がする。いや、もうだいぶ昔のことだから、記憶違いかもしれない。  いわゆる『帰宅部』だったとしたら、このくらいの時間に帰れたのだなあと、店に入ってきた女子高生二人を見て考える。彼女達は制服を着ているし、

十一:『天文学者の悩み』

 三日月町の東にある星見ヶ丘。そこに知らない建物が立っていた。昨日見たときにはなかったは…