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三日月町の境界線シリーズ

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シリーズ小説です。基本1話完結型。 1話以外は、今のところ以前の小説を書き直したものです。
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#シリーズ小説

一:『鏡池』

「すみません。お水をいただけますか?」  手を挙げると、すぐ近くにいた背の高い男性店員が…

二:『隙間から』

 隣に座る浮浪者が語り始めるのを、聞くか、聞かないか。  話を聞くくらい、本来なら些細な…

八:『奇数の月』

 幸せとは恐ろしいものなのか。そう感じたのはその日が初めてだった。  その日は夜に、幼馴…

九:『忠告する者』

 時刻は16:30過ぎ。高校時代にはいくつかの文化部を掛け持ちしていた。演劇部とか、美術部だ…

十:『月見酒』

 満月は夜は、あの日のことを思い出す。どんなに美しくても、あのときの月には及ばない。次に…

十一:『天文学者の悩み』

 三日月町の東にある星見ヶ丘。そこに知らない建物が立っていた。昨日見たときにはなかったは…

十二:『欠けているモノ』

「教頭先生、最近の若者にはろくな奴がいない。そうは思いませんか?」 「まあまあ。どのようなところが、そう感じるのですか?」 「やる気がないとか、変に悟っているとか、ネットの影響か分かりませんが、相手を思いやる気持ちがなかったり……」 「ふーむ……そうですね。確かに少し『欠けている』という感じはしますね」 「欠けている、ですか」 「ですが、『若者』で一括りにしてはいけませんよ。それに、そういった生徒にこそ、我々教師が手を差し伸べなくてはね」 「いやはや。さすが教頭先生。教師の鑑