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落語日記 短い噺の難しさに気付かせてくれた律歌師匠とはな平師匠

寄席噺研究会
2月13日 落語協会二階
三遊亭律歌師匠と林家はな平師匠が、二ツ目時代より続けている勉強会。会場は黒門亭が行われている落語協会の二階の広間。コロナ禍以前は、貸会場としてここを使い、落語協会の落語家さんたちが様々な勉強会を開催していた。それが、感染症対策のために、黒門亭も含めこの会場での落語会の開催は自粛されていたようだ。なので、この会場での勉強会の訪問は久し振り。黒門亭も、予約なしの通常開催に戻っている。こんなことからも、コロナ禍から少しずつ日常が戻ってきていることを感じる。
コロナ前はこの会場で、観客が少人数の勉強会が日常的に開催されていた。若手の奮闘ぶりが身近で拝見できる貴重な機会、落語ファンにとっては、なかなか楽しい空間なのだ。
この会は初参加、お二人を拝見するのも久し振り。ここは職場の近所、仕事の進捗具合でふらっと行ける場所。偶然の出会いが楽しい場所なのだ。

林家はな平「道灌」
ご挨拶とともに、この会の趣旨説明。二ツ目時代はトリネタを増やすことを目指して、トリネタを集中的に掛ける勉強会を二人で続けてきた。真打に昇進して寄席に出演する機会も増えてきたので、寄席噺研究会と題して、寄席の前方で掛けられる演目を寄席の出演時間を意識して掛ける勉強会へ趣旨を変えて、これからも続けていきます、とのこと。事前告知では、寄席で掛けられる10分~15分ネタをそれぞれ二席ずつ。その告知どおり、仲入りなしでそれぞれ二席を連続して掛ける構成。
真打昇進された昨年に、芸術祭新人賞を受賞。そして、鈴本演芸場の2月下席昼の部で初主任興行と、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いの活躍。そんな活躍が後押しされたように、自信に満ちた高座だ。
まず一席目は、お馴染みの前座噺。前座から真打まで人気があり、寄席ではよく掛かる演目。
はな平師匠の一席は、寄席で充分に披露できる完成度。余計なクスグリもなく、噺自体が本来持つ可笑しさで勝負されている。まさに本寸法。同じ正蔵一門の兄弟子のたけ平師匠が、ご自身のキャラで笑わせるのと対称的。正蔵一門のバラエティーさも感じる。

林家はな平「棒鱈」
そのまま居続けて二席目。マクラは、コロナ禍が収まりマスクも解除されつつある状況の話。本編は、寄席の前方で掛けられる演目としては意外な棒鱈。トリネタとしても掛けられている噺。寄席の出演時間を意識して掛ける趣旨からすると、短縮バージョンに挑戦するということだ。
酔っ払い男の酒癖の悪さや田舎侍の間抜けぶりからは、時間の短さを感じさせない。ほぼほぼ本来の噺の本筋は省略せず、マクラも入れて15分という寄席サイズに上手く収めた。噺の雰囲気を変えず、笑いどころのエッセンスを残して短くできるのは、まさに技量がある証し。なるほどの挑戦だった。

三遊亭律歌「ざるや」
仲入りなしで後半戦は、律歌師匠の受持ち。木戸銭集めの受付を担当されていて、出囃子の音出しなどお二人が交替で担当されている。この手作り感が楽しいのだ。
マクラもそこそこに、本編は馬生一門ファンにはお馴染みの噺。なかでも得意とされている馬玉師匠で聴くこの噺は絶品だと思っている。
この噺は、ざる屋と商家の主人との掛け合いのテンポの良さが肝だろう。律歌師匠も、リズムを意識されているように感じた。
もったいなかったのは、大旦那の「上野はどの辺り?」との問いの答えで、詰まってしまったこと。正直に謝られて、巻き戻って再スタート。こんなハプニングも珍しい。この噺の掛け合いにおけるリズムの大切さを痛感。そして、こんな場面の遭遇も、勉強会たる所以。

三遊亭律歌「猫の皿」
二席目は、これも意外な演目。トリネタにしてもおかしくない噺。
律歌版は、茶屋の主は爺さんではなく、婆さんが登場。婆さんが登場する型は、おそらく初めて聴く。この婆さんの表情やセリフの奇妙さが可笑しい。セリフの後に、不思議な間を開ける婆さん。旅のハタ師との遣り取りも、婆さんの奇妙さで笑いをとっていた。短縮版として、上手くまとまっていた。律歌スペシャルとして、これからも磨いていって欲しい噺だ。

お二人の奮闘ぶりを拝見して感じたことは、何気に見ている寄席の前方の出番における高座の難しさ。自己紹介や時流を取り込んだ短いマクラを振って瞬時に観客を掴み、残りの時間で本編を下げまで語って完結させる。特に、トリネタにもなる演目を、圧縮凝縮して完結させることの難しさ。冗談言っちゃあいけねぇと言って、高座を降りたくなる気持ちも分かる。
普段の寄席では意識しないことを、お二人の奮闘ぶりで気付かせてくれた。失敗を恐れない奮闘の高座を見せてくれたお二人のチャレンジに、拍手を送りたい。

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