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全部、自分

「じゃあ結局、"私は"何がしたいんだ?」

そんな自分に対する疑問がモヤモヤと現れて、企画メシの回を追うごとに少しずつ大きくなってきているような気がしている。



コピーライターの阿部広太郎さん主催の企画メシ第5回、今回はライツ社の社長・大塚啓志郎さんの「本の企画」。

ライツ社は兵庫県明石市にある出版社で創業5年、6人の社員で数々のベストセラーを生んでいる。
"海とタコと本のまちにあります"
という会社の紹介文がなんだか可愛くてあったかいなと思った。

そんなライツ社の社長・大塚啓志郎さんからの課題は

「自分の中で絶対いける!」という確信の持てる本の企画をLINEグループに送ってください。

というものだった。

●"『write』『right』『light』─書く力で、まっすぐに、照らす─"


これライツ社の社名に込められた意味だという。また、大塚さんは
"わたしたちにとって本とは、凍りついたこころを解(と)かす光だと思っています"とおっしゃっていた。
その想いに初めて触れた時に、純粋にとても感動した。こんなに真っ直ぐで心強い想いで本を作り、実際に沢山の人にその想いが届いていることはそれだけでも勇気がもらえると思った。
そして、じゃあ"自分にとって本とは"なんだろうかと考えてみようと思った。

●本とは


私は父親の影響で小学生の頃から本を読むのが好きだった。
いつも父は私を本屋さんに連れて行って1人で本を探す時間をくれた。しばらく時間が経つと私の所に来て「何か面白そうな本はあった?」と聞くのだった。初めの頃は本屋さんに無数にある本の中から何が「面白そう」なのか全く分からず、正直この父と本屋さんに行く時間はあまりわくわくするものではなかった。
しかし、小さく困惑した顔の私に父は「これ面白そうやん」と一緒に何冊も本を探してくれた。そして必ず、自分の本と一緒に私の本も買ってくれたのだった。

本とは、小さい頃は父親とのコミュニケーションやイベントのひとつのようなものだった。

そんな父のおかげで今となっては趣味を聞かれたら本を読むことだと答えるようになった。父と何度も本屋さんへ行き、何冊も本を読むことで本が大好きになった。

本の中には自分には無いことばとの出会いがある。
世界だって終わるし、恋も終わるし、大切な人も失う。
過去に戻るし未来にも行ける。
人の傷つけ方や愛し方、人の痛みや悲しみを知る。

本の中で沢山のことばや人と出会い、様々な人生を生きる。
自分という人間が、自分ではない人間の人生の道筋を辿ることで沢山の「始まり」や「終わり」を知ることができる。
だから、目の前にある自分の人生や世界、大切な人を大切にする覚悟と勇気をもらえる。

本とは、そうやって自分の人生をより濃く鮮やかにしてくれるものだと思った。

●夜の東京タワーみたいな本が作りたい


そう思ったのは、今回の課題について考えながら1人で夜の東京タワーを見上げた時だった。

夜、夕日のようなオレンジ色に光る東京タワー。
年齢も性別も様々。
サラリーマン、学生、親子連れや夫婦や恋人、ひとりの人。
今日という日をどう生きてきたかもみんな違うのに、たくさんの人が同じように見上げる光。

"こんな本、作りたいな"

直感的にそう思った。

「絶対にいける!」という根拠も、今思えば私の企画はあまりに個人的な直感過ぎた。しかしその時はこの直感を信じて課題を進めていくことにしたのだった。

●誰に届けたいか

"お疲れ様"
私が考えた「夜の東京タワーの本」にはこんな想いを込めていた。

自分の家族や友人。大切な人たち。
このご時世ということもあってなかなか会えないことが多い。
でもみんな見えないし会えないけれどそれぞれの場所で頑張って、踏ん張って、生きている。
誰かのために何かしようとする気持ちすらままならない今の時代。
1日の終わりに大切な人たちに"お疲れ様"と声をかけて一息つけるような時間を届けたいと思った。

●これが私の本の企画

皆さんおはようございます☀️
01秋田真梨子です。

【夜の東京タワーを本にする】
夜、あたたかいオレンジ色に光る東京タワー。
仕事帰りの人、散歩に来た人、友人同士、恋人、夫婦など様々人がその姿を見上げています。見上げるその顔はみんなどこか明るく前向きに見える。
このあたたかな光は、多くの人の心を温めてそっと背中を押す力があると思います。

●夜の東京タワーフォトエッセイ
夜の東京タワーを見上げる人にカメラを渡し、その人の視点で写真を撮ってもらう。
そしてその人に来た理由や見た感想をインタビューしてその内容を写真と共に載せたエッセイにする。

夜の東京タワーまで散歩をするのが好きなのですが、何度見ても励まされるような感覚になります。
またその東京タワーを見上げる沢山の人の姿を見て、こんな本が作れたら良いなと思いました。

変化の激しい東京を昔から見守ってきた東京タワーの姿は今の時代を生きる多くの人を励ます力があると思いました。
優しく口角を上げて、上を見上げたくなる一冊になると思います。

https://www.e-aidem.com/ch/jimocoro/entry/tatsui11

https://urbanlife.tokyo/post/35701/


これが私の本の企画だった。
企画と共に参考となるURLも付ける、という決まりだったので東京タワーに関するURLも添付した。

企画生6人に大塚さんと阿部さんと平賀さんに分けられたLINEのグループにそれぞれの企画を送る。

みんなの企画を見てまず
「あー…これはミスったな」と思ってしまった。私の企画は、あまりに根拠が弱い。
自分の思考や行動の性質上、私はとても感覚的で感情ベースになってしまう。
しかしみんなはしっかりとした根拠のもとに本の企画を作っていた。
自分では自分の企画に納得していたはずだったが、提出してみると自分は"そもそも"の時点で何かが違ったように感じた。

●好きなものは、好きな人にしか届かない


そして迎えた大塚さんの講義当日。
大塚さんの幼い頃から遡ってここまでどのように歩んできたかをお話ししてくれた。

高校生の頃に大好きになった彼女が新興宗教の信者だったため自分も学んでみたが挫折し、自分の小ささを痛感する。
世界を広げて自分を大きくするために旅に出る。
でもそれだけでは自己満足に過ぎないから写真展を開催するも、たった1日だけ楽しませても意味が無いとまた挫折する。

そんな数々の挫折を経験しながらも、大塚さんは「自分は伝えることが得意だ」と気が付いた。
そしてある時いろは出版の「1歳から100の夢」という本と出会い、それがきっかけでいろは出版社に入社し、その後ライツ社を始めるのだった。

大塚さんが本を作る上で大切にしていることの中に"見たことの無いものを作る。その本の棚で1番を目指す"ということがあった。
そしてこの視点は、やるからには何をするにおいても大切なことだと思った。

「好きという想い」だけではあまりに独りよがりで、夢を実現し大切な人の心に届けて照らすためには直感的な魅力と現実的な根拠が大切なのだとわかった。
その2つがあって初めて、その企画はたくさんの人に届く。
私の企画は、その現実的な根拠が弱すぎた。
課題や話題に目を向けることの大切さを知った。
好きなものは、好きな人にしか届かない。
現実を見ないと、現実を生きる人達には届かない。

大塚さんは
"自分にとって企画とは本を作ること。本は1400円。だから僕にとって企画は1400円なんです。"と言った。
お金に換算することが、お客さんや著書に誠実であるということなのだと。

これは大塚さんの考えを象徴していることばだと思った。

●じゃあ結局、"私は"何がしたいのか


講義を終えてから、そんな疑問がモヤモヤと現れている。
確かに今回の課題で言えば足りなかったことがたくさんあった。反省もたくさんあった。
でも「夜の東京タワーを本にしたい」と思った自分も、紛れもなく本気の自分だった。

自分の強い想いがあったのも、反省と学びがあったのも事実。
じゃあ、ここから私はどうしたいのか。
正直その答えはまだ見つかっていない。
でも、だからこそ今はたくさんの学びや反省を踏まえながら自分がやりたいことをとりあえずやってみようと思っている。
またノートに「無敵だったら!」という前提でやりたいことを羅列し始めた。

自分の人生だから、自分の感覚や衝動を大切に。
でも大切な人に届けたいと思った時には、独りよがりにならないようにちゃんと現実を見ること。

企画メシも気が付けばうっすらとゴールが見えてきてしまった。
考えて考えて、自分らしく。駆け抜けていきたいと思う。

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