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目を閉じて見えたもの

企画メシ第4回。
今回は"対話の企画"
今回の課題は

目を閉じてパラリンピックを「音」で観戦してきてください。
そこで発見したことを「40秒」で話してください。


講師はダイアログ・イン・ザ・ダークでアテンドをされている檜山晃さん。

●調べる

今回の課題に取り組むにあたってまずは檜山さんについて調べた。
そこで最初に私が驚いたのは檜山さんの趣味に"スポーツ観戦・映画鑑賞"とあったことだった。
生まれつき盲目の檜山さんがどのように"見る"のか、その時はイメージが出来なかった。

しかしこの時私が感じた驚きは、私の勝手な決めつけや先入観によるものだったと後にとても反省した。


"色は分かりますか?"
"音は見えますか?"

これはある番組でこどもたちが檜山さんにしていた質問だ。

「なんて真っ直ぐな質問なんだろう」と思った。
もし自分が檜山さんと対面したら、こんなにも真っ直ぐに自分の質問を投げ掛けられるだろうかと考えてしまった。

"色は目では分からないから、頭の中で物と色の辞書のようになっています"

"音は見えないけれど、人の声や電話の声で楽しそうとか元気が無いと感じることがあります"

ひとつひとつに丁寧に答える檜山さんの姿とその回答を受けて、自分の中で何かが変わっていく感覚を覚えた。

「対話って、こういうことなのかもしれない」

"分からない"と相手に自分の中の考えや感覚を伝えるのが怖くなる。
伝えた結果、相手がどう思い感じるのか想像
が出来ないからだ。

檜山さんのように身体的に自分と異なる性質を持っている方だけでなく、相手の思考や性格を理解出来ていないと自分の言葉を相手に向かって出すことに時間がかかってしまう。
浮かんだことばや感覚をその場では飲み込んで、後からやっぱり伝えたかったと少し後悔することもある。

でも分からないからとそこで相手に向かう歩みを進めることを躊躇ってしまったら、やっぱり分からないままで。
相手にも自分を分かってもらえないままになってしまう。

"お互いの輪郭が溶ける。境界線が曖昧になる。"

対話とは、境界線を限りなく細くすること。

そんな檜山さんのことばが静かに強く心に響いた。

●目を閉じる

私は目を閉じてパラリンピック競技のゴールボールを観戦した。
ゴールボールは目隠しをしながら鈴の入ったボールを転がしてゴールに入れることで得点とする競技だ。

目を閉じて試合を観戦する。
それは初めての経験だった。

目を閉じると何も見えなくて、始めは見たことのある景色を必死に頭の中で描こうとしていた。
気が付くと眉間に皺が寄っていた。

でもそこで九龍さんのことばを思い出した。

「自分の演算機を通すんだ」

目頭の力を抜き、また目を閉じる。
段々と曖昧になっていくのを感じた。

選手同士の掛け声、叫び声。
ボールが転がり、バウンドする鈴の音。
解説の方の落ち着いた声。

曖昧にぼやけていく周りの景色の中に、色濃くはっきりと残るボールや選手の姿があった。
普段は均一に目で見えている景色から「濃淡」が生まれるのを感じた。

それが、私が目を閉じてパラリンピックを観戦して発見したことだった。

●対話する

そして迎えた檜山さんの講義当日。
最初の印象は
「なんてゆっくりと丁寧にことばを返す方なんだろう」
ということだった。ひとつひとつのことばをしっかり受け取って相手に丁寧にことばを紡ぐ姿がとても印象的だった。

檜山さんの子ども時代のお話を聞いて、檜山さんがどのように世界の捉え方や人との向き合い方を学んできたのかを垣間見ることが出来た。

"知らないことが増えていくことが楽しい"

そんな、とても前向きな考え方に心を動かされた。

"暗闇の中では世界の法則性が変わる。人は変わらないけれど関係性が変わる"

"対話をするとは同じ土俵を用意すること"

ダイアログ・イン・ザ・ダークの暗闇の中でアテンドを行う檜山さんはこんなことばも残してくれた。

また阿部さんも
"対話するとは、それぞれが伝え合うこと。聞き合うこと。"
とお話しされていた。



世界の法則性も人と人との関係性もたったひとつ、光というものが無くなるだけで簡単に変わってしまう。
絶対に不変のように見えるものは実は、とても曖昧でままならないものなのだ、と思った。

そして、だからこそ対話がある。

曖昧でままならない世界の中で、私たちは一人で生きていくことは出来ない。
だから互いの見ている世界を同じ土俵に立って見てみる。互いの声を聞き合う。

色んな視点に触れて、知ることで自分自身の見ている世界に彩りが増えていくのだと思う。

人と関わり、人と生きていく上でとても大切な"対話"。
その対話への姿勢を学ぶことが出来たと思った。

●キャッチボールをする

"もしも目が見えたらキャッチボールがしてみたい。相手の胸元にちゃんと返したい。"

講義の終盤檜山さんが言ったことばが鮮明に残っている。

私は相手の胸元に返すことが出来ているだろうか。

胸元には心がある。
相手の一番温かいものがあるその心に向けて、しっかりとボールを投げられるようになりたいと思う。

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