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上瀬谷を追うだがや2(樹木をきると人間が困る編)

上瀬谷の未来を考えよう会さんの7つの要求を掘ってみる①

上瀬谷の未来を考えよう会さんの『2027横浜国際園芸博覧会(花博)のために桜並木を切らないで!市民の意見を尊重し上瀬谷の開発見直しをの7つの要求にそって、質問書市長回答をベースに深掘りをしていきたいと思います。
この深掘りシリーズ2は、まず『1桜並木の伐採について』堀っていきます。
市長回答の深掘り(上瀬谷を追うだがや1)も併せてご確認ください。

🔶街路樹について考えていく

海軍道路の桜並木問題の詳細については
亜梨子さんの『わたしだって 上瀬谷を追うよ!(Q&A)が詳しいので、こちらをご覧になってください💖

海軍道路の桜並木に関する懇談会資料より 南北直線に走る瀬谷区海軍道路

■街路樹に向く樹木って本当にあるの?

いま全国的に街路樹の伐採が問題になり、その度に「この木の品種は街路樹に向かない」という言説を良く耳にします。ソメイヨシノはその代表格ですね。「ソメイヨシノの寿命40・50年説」も世界にはその樹齢を超えたソメイヨシノにあふれているのに広く知られています。樹木の専門家を名乗る人がそう言ったらしいという伝聞の伝聞が流布されます。
「代わりにこの品種が向いてる」というような意見もちらほら。この論争は植え替えによる利益誘導が絡んでいそうで、簡単には頷けないとは思います。
人間の都合で植えられて数十年、大きく育った後で「街路樹に向いてない!」と言われる樹木も「いい迷惑だ」と言ってそうですね。
そもそも手入れの要らずで落枝や倒木の恐れもなく、メンテナンス費用を抑えられる街路樹に最適な品種は本当に存在するのでしょうか?

■ヨウコウ(桜の品種)は街路樹にピッタリ?

ヨウコウ海軍道路の桜並木に関する懇談会の資料より)

海軍道路の桜並木に関する懇談会では管理がしやすいとの理由でヨウコウという桜の品種が植え替え候補として横浜市側から提案され、「花が赤くソメイヨシノと落差がある」「枝ぶりが日よけにならない」「水枯れに弱く、5年以内なのに枯れてる街路樹もある」などと、品種選定が紛糾しました。
その後、横浜市から既存のソメイヨシノに見た目が近いコシノヒガンが提案され、その流れになりました。
比較検討品種はジンダイアケボノとカンザンもありましたが、行政が最初にヨウコウ一択のように進めたのは何故なのか非常に気になります。
C地区で一部ヨウコウへの植え替えが既に進んでいたからと言い訳するでしょうが、なぜC地区の植え替えでヨウコウが選ばれたのかどこで買っているのか、など税金の使われ方としても疑問がわいてきます。
行政が思い付きであるはずがないので、必ずヨウコウ推進のキッカケがあるはずです。

地植えなのに水枯れに弱い品種は街路樹に向かないようにも私は思いますが、既存木に年数回ほど防虫剤や肥料を施すよりも、高頻度に海軍道路の3kmの両側を水やり等の世話をする方が管理コストはかさみます。そもそも管理コストを抑えたいと市は考えてはいないのではないかと思えてきます。

■植え替えよりも大切にする方がコストは安い

海軍道路の桜並木(ソメイヨシノ) usiさん(@moumousi3 )撮影

”見出し”は当たり前のことなのですが、行政コストについて確認しておきたいです。
海軍道路に限らず、全国で樹木伐採の計画がされており、その度に「植え替える」「代替の樹林地を創る」という話になります。その際、よく見かける援護コメントが「既存樹木のメンテナスはコストがかかるので、行政の言ってることもわかる」という謎の知ったかです。

ごく当たり前のことなんですが、大切に保全活動するよりも、伐採して植え替える方が市民が負担するコストは高くなります
伐採(伐採に伴う諸手続き)・新しい苗木の手配・古い根の除去・新しい苗の植栽の全てに行政コストがかかり、若木のうちは当然弱いため旧木よりもメンテナンス費用はかかり、新しい木が大きくなっても旧木と同じように必ず定期的に毎木健診は必要です。もしメンテナンス費用をケチれば倒木する街路樹が多くなり危険です。
植えた品種が仮に、病気に強くても、水枯れに強くても、根が張り出しにくくても、枝が落ちにくくても、強風に強くても(そんな品種が本当にあるのかどうかは全く知りませんが)、メンテナンス費用をゼロにしては通行の安全を担保できませんし、大切に手入れした方が植え替えを遅らせることができるので、コストを考えると「既存木を大切にしよう」一択の結論かと思います。

■横浜市内でも桜保全活動が既に行われている

上記で指摘した通り、結果的にコストも抑えられるメンテナンスの実践例として、横浜市内にも桜を大切にする保全活動があります。市長回答深掘り(上瀬谷を追うだがや1)でお名前だけ紹介しましたが、こちらでもう少しだけ書かせていただきます。

🔷大岡川プロムナード さくらボランティア

横浜市南区HP 令和4年の大岡川プロムナードレポートより(井土ケ谷橋付近)

大岡川プロムナード明治期から桜の植樹が始まり、戦後に植え直された桜をそのまま活用し、昭和55年~平成3年に今の形に整備されたそうです。
市長からの回答(1-2,3)を読むと、大岡川プロムナードの桜も「老木化」による伐採が行われているように思われるかもしれません。
しかし、南区の花「さくら」ほぜん・かつよう中には、『老木化が原因で伐採』と読める記載がないどころか、『古い歴史のある桜並木を大切にしよう』というメッセージと読めたのですが、違ったのでしょうか。

南区の花「さくら」ほぜん・かつよう(平成22年3月横浜市南区役所)より

平成20-23年のプロムナード再整備の時も「倒れる危険のある桜は切ります」とあり、『邪魔だから切る』と読める文言は記載されていませんでした。
海軍道路よりも歴史が長い桜並木なので老化はあると思いますが、平成15-16年の樹木健診で約半分が「治療などが必要」であるとされた時にも、『即』伐採されたわけではありません

また、さくらボランティアさんの活動も、落ち葉で肥料を手作りし桜に施肥し、そうやって大切にした桜が残念ながら伐採されることに備え、苗木育成活動までされています。桜のある大岡川プロムナードを未来に残していこうという気持ちで活動されているはずです。

🔷柏尾川プロムナード 戸塚桜セーバー

戸塚桜セーバーHP 開花情報2022 より

柏尾川プロムナードには約700本の桜があり、樹齢70年を迎える桜のエリアもあり、戸塚桜セーバーさんは戸塚駅から豊田堰橋までの両岸の桜、約350本の桜を守るために活動をされています。(ソメイヨシノ寿命50年説の流言元はわかりませんが、柏尾川岸にも長寿でも花を咲かせているソメイヨシノがあり、全国各地に長寿のソメイヨシノは存在します。)

戸塚桜セーバーHP 活動概要(2014-05-01) より

落ち葉で堆肥を手作りされたりと土壌改良などを行い、植替えではなく既存の桜を守るために活動を始められたようです。桜の根が踏まれることで傷まなように、周りを花壇にし踏圧から守る工夫もされており、HPを読むだけで大切にする気持ちが伝わり、胸が熱くなります。

柏尾川プロムナードの桜は昭和27年植樹で、大岡川プロムナードも戦後に再植樹されたそうですので、同じくらいの時期かもしれません。植えた方々の気持ちを受け継ぎ、大切にしていかなければならないと感じます。

🔷海軍道路の桜並木も大切にされてきたはず…

道路拡幅の邪魔だから元気な桜も全部伐採するけど、”老木化”と言っとけば体裁は整うよね?』と横浜市に判断されたかわいそうな海軍道路の桜並木と、大岡川と柏尾川プロムナードの桜並木を同じように『老木化』と同列に語ることはできません。
人間の都合でこんな切り捨て方をされる海軍道路の桜並木を『拡幅後に桜を再植樹するから問題なし』と後世に引き継ぐのは悲しい過ぎます。伐採を止められなかったとしてもこうして記録しておかなければならないと思います。海軍道路の桜並木も大切にされてきたはずです。

🔶樹木についても考えていく

旧上瀬谷通信施設地区 土地区画整理事業 環境影響評価書 P5-11(※配慮書の資料)

■上瀬谷通信施設跡地の樹林伐採について

先ほどの海軍道路の桜並木の全伐採以外にも、東京ドーム約52個分の上瀬谷通信施設跡地では、ほぼ全ての樹木が伐採される予定です。そして、多くの動物の棲み処が無くなります
動物の重要な種への影響の予測結果」(上図)によれば、「樹林は1割未満、草地は約4割が消失」とのことでした。
樹木だけでなく草地に棲む動物も生存の危機です。動物たちは草地と樹木が再創出するまではどこに棲めば良いのか。再創出されるまでの間に代替地を用意してもらえません。通知なしの強制退去です。

生息環境「消失」の記載について問い合わせると下記のような回答でした。

基本的に跡地内の草木は全て伐採し整地する予定だが、その代替に植栽もするので樹木の消失は1割未満だろうと配慮書段階で推定したものです。(草地も全て消失後、6割は回復させると推定したもの)
現在、樹木数・伐採数はまだ調査中です。国有地ならいずれわかるかもしれないが、民有地は把握できないと思います。

環境影響評価書の樹林伐採の記載について横浜市に問い合わせた結果(2022年6月下旬)
※例外として市民の森からはみ出す森林部は伐採されない計画です

これは『湧水の保護の計画はない』と言い切られたのに並ぶ、驚きの回答でした。これは配慮書段階の予測であり、根拠となる総本数や伐採数や植栽数は全くなく、現存植生図(下の左図)を見てそれくらいと判断したそうです。GoogleMapの上空写真では、私には左図よりも樹木が多く見えます。
(樹木数・伐採数が何本になるのか何度も問い合わせていますが、「現時点ではわからない」と言われ続けています。)

左:旧上瀬谷通信施設地区 土地区画整理事業 環境影響評価書 「現存植生図」
右:上瀬谷通信施設跡地のGoogleMap

■環境アセスでの樹木に関する審議

🔷外苑の杜の環境アセス

Change.org神宮外苑1000本の樹木を切らないで~再開発計画は見直しを!ネット署名

上記の神宮外苑1000本の樹木を切らないで~再開発計画は見直しを!署名が多くの賛同を得て報道もされた後だったためか、神宮外苑再開発事業の東京都の環境アセスは、事業者の三井不動産様に厳しい意見が相次ぎました。地区内の毎木(健康)調査の実施結果を提出するように審議会に要求され、三井不動産様がしぶしぶ了承したとの報道(異例の結論持ち越し 都の環境アセス審議会)までありました。

残念ながら、その持ち越し審議では「良い計画にですね。○○は良くないですが、直して進めてください」「はい!」と台本でもあるかのような委員たちと三井不動産様のやりとりが続き、環境アセスは終了しました。
その実態(下図)は「事業期間中に枯れる」と三井不動産様に勝手に決めつけられた311本を伐採から外し在置でカウントし、定着するとは限らない移植を104本増やし、伐採本数は971本から556本に減ったという数字の付け替えマジックでした。現位置保存される樹木本数304本(615-311)になり、最初の計画340本より減っています
この計画を褒めるかのような環境アセスも、伐採が減ったと報道するメディア各社もどうかしています。

令和4年度「東京都環境影響評価審議会」第一部会(第5回)補足資料① より
1)当初の971本伐採案     2)持ち越し審議での再検討案

🔷花博・上瀬谷関連事業の環境アセス

跡地内の樹林(ケヤキ?)マロツクさん撮影

上瀬谷の土地区画整理事業は横浜市が事業者でありますが、毎木健診が行われていないどころか、総本数すら把握していませんでした。また環境アセスもこの広大さを考えれば十分ではなく、樹木伐採について丁寧な審議が行われたとは言えないと思います。

東京ドーム約3.8個分の神宮外苑地区で約千本の伐採なのですが、東京ドーム約52個分の上瀬谷では「原則 全伐採」ですので、一体何本の伐採になるのでしょうか・・・
外苑の森と比べると樹木の群生地は少なく見えますが、GoogleMapを拡大していくと上瀬谷にも樹木が多いことがわかります。私の目算では伐採は、数千本になるかと思います。人間の都合で樹木を伐り「新しく植えるから良い」だとか、もういい加減にして欲しいというのが本音です。

上瀬谷通信施設跡地の関連事業は、跡地が広大であるため事業総額や自然破壊度合いも大きくなり、問題が多く・大きすぎるため論点も定まりにくく、そのため追及もされにくい状態です。樹木伐採も見逃されつつある大問題の一つで、横浜市すら全数を把握してしていないので、追及も出来ない。
約14兆8000億円のコロナ予備費の9割以上が使途不明金なのに、4730万円の誤送金の報道が過熱したのもその追及のしやすさ、想像のしやすさからでしょう。似ているなと感じます。
私自身が上瀬谷の問題をどこから追及すべきか迷いますし、わからないことばかりで頭を抱えます。通常の環境アセスの進め方では手に負えるような事業規模ではないように思います。

■老木は成長しないので、温暖化防止に貢献しない?

跡地内の高齢の大きな桜(大島桜と思われる)usiさん(@moumousi3 )撮影
この桜の植樹の経緯を調べています

よく聞く言説ですね。これ自体は間違いということもなく、成長を”完全に”止めた老木は二酸化炭素の吸収量が落ちるのは事実だろうと思います。
しかし、年かさの大木は若木よりもどこが成長したか分かりにくいだけで成長を続けており年かさの大木の二酸化炭素吸収量はより多いという論文もあります。
仮に老木が呼吸との相殺で二酸化炭素吸収量が落ちていたとしても、樹木は多くの炭素を内部に蓄積しています。だから伐ったとしても、木材としての形態を保つことが大切で、燃焼させるのは避けたいわけです。

その他、根が地盤を支え・保水する効果や、太陽光を遮り大地を冷やしてくれ、直接的に環境を守る存在でもあります。
樹木があるとないとでは、環境が大きく違うことを感じたことがある人は多いのではないでしょうか。

実感できることとは違い、炭素の吸収量の多少はまだ研究途中にあるようですが、樹木が増えると炭素が増えるという論はないようです。
いずれにせよ、その時点での科学でわかることだけを基準に人間が判断してきた結果が現在の地球環境である以上、今わかっている炭素の吸収量という基準だけで樹木の存在価値を判断するのは危険だと思います。
「上瀬谷の大自然を破壊するけど、一部分は公園として自然を再創造するからいいよね」では済まされないですし、再創造しても動物たちが同じように暮らせるわけでもない。それに既に地球は限界が来ていると思いませんか。
いま残ってるものくらい未来のために残しませんか。いえ、増やすことも考えませんか。
みどり税花のタネの配布事業に多額がつぎ込まれていますが、本来は森林を守り・増やすために徴収されています。元気な木を伐っての植替えに異を唱えているだけで、植木・造園業のお仕事を減らす意味ではなく、むしろ増やして欲しいと思います。山下ふ頭もセントラルパークのような森林公園にして欲しいと思っています。
このままでは日本は極端な雨の被害が出る地域と渇水する地域に分かれていき、横浜市もいつか深刻な水害にあうと思います。二酸化炭素の削減策の一つとして、樹木を増やしませんか

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ここまで読んでいただき誠にありがとうございます。
長いのですが、上瀬谷を追うだがや1(市長回答の深掘り)も併せてお読み願います。

💖Special Thanks💖
改めて、上瀬谷の未来を考えよう会さんありがとうございます。
✨Change.org2027横浜国際園芸博覧会(花博)のために桜並木を切らないで!市民の意見を尊重し上瀬谷の開発見直しを
✨上瀬谷の未来を考えよう会有志さん『市長への質問書』
✨上瀬谷の未来を考えよう会有志さん質問書への市(長)からの回答

亜梨子さん『わたしだって 上瀬谷を追うよ!(Q&A)』
横浜市南区さくらプロジェクト(大岡川プロムナード)
柏尾川プロムナード 戸塚桜セーバー
横浜市・上瀬谷整備・国際園芸博覧会推進室の皆様
✨Change.org神宮外苑1000本の樹木を切らないで~再開発計画は見直しを!

💖上瀬谷通信施設跡地の写真提供💖

✨トップ写真:海軍道路の桜並木 マロツクさん撮影(他1枚)
usiさん(2枚)

本当に本当にありがとうございます。これからもどうぞ宜しくお願いいたします💖


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